フクロネコ(読み)ふくろねこ(英語表記)common dasyure

改訂新版 世界大百科事典 「フクロネコ」の意味・わかりやすい解説

フクロネコ (袋猫)
Eastern Australian native cat
Dasyurus quoll(=D. viverrinus

一見ネコに似た肉食性の有袋目フクロネコ科の哺乳類。ネコに比べ四肢が短く,胴が長い。顔は丸いが吻(ふん)はややとがる。腹部にはふつう6個,ときに8個の乳頭を備えた育児囊がある。体色は黄茶色の地に多数の白斑があるのがふつうだが,地色の変化に富み,黄色に近いものから黒褐色のものまである。体長36~44cm,尾長21~31cm,体重850~1550g。

 オーストラリアとタスマニア分布。きわめて適応力に富み,人家付近を含めさまざまな環境にすむが,水場近くの森林にもっとも多い。木の洞や岩の割れ目などの自然の空所に巣をつくり,おもに地上で夜間活動して,ネズミその他の小哺乳類,鳥,トカゲ類昆虫などを捕食する。川に入って魚をとらえ,農家のニワトリや卵を食べることもある。繁殖期は年1回,6~8月。妊娠期間は8~14日。産子数ははっきりしないが,しばしば乳頭数の6~8を超え,子が乳頭に吸いついたまま育てられることから,乳頭に吸いつけなかった子は死亡する。7~8週間で育児囊を出,約20週間で独立する。人になれることからよく飼育される。
有袋類
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロネコ」の意味・わかりやすい解説

フクロネコ
ふくろねこ / 袋猫
common dasyure
viverrine native cat
[学] Dasyurus quoll

哺乳(ほにゅう)綱有袋目フクロネコ科の動物。オーストラリアとタスマニア島に分布する。頭胴長36~44センチメートル、尾長21~31センチメートル、体重0.7~1.1キログラム。外形テンに似て四肢は短く、毛は長くて柔らかい。体上面は薄いオリーブ色を帯びたベージュ色に多くの白斑(はくはん)があり、下面は薄い灰色または白色である。尾には白斑はなく、先端は白色。後足の第1指を欠き、前後足ともつめは大きく鋭い。育児嚢(のう)は子を育てるときにのみ発達するが、比較的浅い。乳頭は普通6個で、ときに8個ある。主として地上生であるが、木登りもうまい。森林をおもな生息地とするが、環境に対する適応力が強く、人家の近くにも生息できる。夜行性で、昼間は木の洞や岩の割れ目に枯れ草や樹皮でつくった巣で休息する。ネズミなどの小哺乳類、鳥類トカゲ、大きな昆虫類などを食べる。妊娠期間8~14日で、4~7頭の子を出産し、子は育児嚢で育てられる。以前は都市近郊でもよくみられたが現在ではまれで、オーストラリアでは絶滅に瀕(ひん)しているのではないかと思われる。飼育すると人によくなれる。寿命は4~5年である。

 オーストラリア北部には、頭胴長27~30センチメートルと小形の近縁種であるヒメフクロネコが分布する。

[中里竜二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクロネコ」の意味・わかりやすい解説

フクロネコ
Dasyurus quoll; eastern native cat

有袋目フクロネコ科。フクロイタチともいわれる。体長 40cm,尾長 25cm内外。耳介は先端が丸くて大きい。毛色には明,暗の2型があり,前者はオリーブ色がかった灰褐色,後者は黒色で,いずれも乳白色あるいは白色の斑点をもつ。尾は総状で,その先端の毛は白い。夜行性で昼間は岩穴,樹洞などの巣にひそむ。繁殖期は5~8月で,1回に4~7子を産む。育児嚢は育児期のみ大きくなる。オーストラリア南東部とタスマニア島に分布し,小型哺乳類,鳥類,爬虫類,昆虫類などを捕食する。

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