アメリカにおける汽船開発の先駆者。ペンシルベニア州リトル・ブリテン(現、フルトン)の農家に生まれる。3歳のとき父を失い、独学で絵画・機械学や数学を修得し、17歳のときフィラデルフィアでデザイナーとして働いた。1786年ロンドンに渡り、1793年ごろまでB・ウェストの弟子として絵を描いていたが、ブリッジウォーター公3rd Duke of Bridgewater(1736―1803)、スタンホープ伯と知り合いになり、運河や船舶の改良に関して相談に応じるなどした。1796年『運河航行の改良論』を著し、その計画をデー川で採用、実施させた。のちにこの計画をパリからディエップまでの運河に実施するために、1797年から1806年までフランスに滞在し、その間に潜水艇および水雷艇の実験を行った。ナポレオンの援助を得て1801年に実験に成功した潜水艇ノーチラス号がそれである。また汽船航行に関心をもつフランス駐在アメリカ大使リビングストンRobert R. Livingston(1746―1813)の援助で1803年セーヌ川で汽船の実験を試みた。1806年アメリカに戻り翌1807年8月、外車汽船クラーモント号を進水させ、ハドソン川のニューヨーク―オルバニー間に定期航行させた。この船の機関はバーミンガムのボールトン・ワット商会製で、船の長さは40.5メートル、幅5.48メートル、煙突の高さ9.14メートルというものであった。フルトンは汽船の最初の発明者ではないが、汽船河航を初めて商業的に実現させた先駆者である。
[山崎俊雄]
イギリスの現代美術作家。ロンドン生まれ。1964年から69年にかけてハマースミス美術学校、セント・マーチン美術学校、王立美術学校に学ぶ。68年以来、ヨーロッパ、南・北アメリカ、メキシコ、インドなど世界各地を旅して、歩行を通じて自然と融合した心境を表現する作品を制作している。リチャード・ロングRichard Long(1945― )と同様に自己と大地とのかかわりを作品化しているが、フルトンの表現手段は、写真とテキストと素描に限られている。彼は「私の芸術は、自然界から人間を疎外する都市社会への穏やかな抗議である」と述べている。96年(平成8)和歌山県立近代美術館にて「紀伊半島を歩いて――ロジャー・アックリング&ハミッシュ・フルトン――」展が開催された。また2002年東京国立近代美術館にて開催の「未完の世紀:20世紀美術がのこすもの」展に、国立国際美術館所蔵の『サンライズ・シャドウ』(1979)が出品された。
[斉藤泰嘉]
蒸気船を実用化したアメリカの技術者。ペンシルベニア州に生まれ,時計工,画家を経て技術者になった。1797年パリに渡り,潜水艇ノーチラス号(海上は帆走,水中は手回しのプロペラ走)をつくり,その試運転に成功した。当地で,のちに彼の有力な後援者となったアメリカ公使R.リビングストンと出会い,1803年,セーヌ川で蒸気船の実験に成功した彼は,アメリカに帰国後リビングストンの後援で本格的な蒸気船の建造に着手した。07年,ワットの蒸気機関を搭載した外輪船クラモント号を建造,同船はニューヨーク~オルバニー間約240kmを32時間で航走,商業的に成功した。これが最初の旅客汽船となった。フルトンは,汽船の発明者ではないが,蒸気船が実用的な乗物であることを初めて立証した人物である。
執筆者:在田 正義
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1765~1815
蒸気船の発明者。1807年,初めて20馬力の蒸気機関を搭載した外輪式蒸気船クレアモント号(150総トン)を建造,ハドソン川240kmを時速4ノットで遡航することに成功した。
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…推進用に外車paddle wheel(以前は外輪と呼ばれたが,現在,専門用語としては外車が広く用いられる)と呼ばれる水車のような装置を備えた船。19世紀の初頭にアメリカで実用化された蒸気船は,蒸気機関で動かされる外車船であり,R.フルトンがハドソン川で営業運航に成功したクラモント号も,ワットの蒸気機関を積んだ外車船であった。外車は水車に似た構造をしており,船内の蒸気機関の回転運動によって回し,これで水をかきながら船を前進させる。…
…しかし,その後動力源としてディーゼルエンジン,電動機やガスタービン,さらには原子力が利用されるようになったことに伴って,現在ではこれらのディーゼル船,電気推進船,ガスタービン船,原子力船も汽船のうちに含め,動力船と汽船とが同義に使われるようになっている。 蒸気船の発明者はR.フルトンとされる場合が多いが,実際にはフランスのD.パパンの実験船(1707),アメリカのJ.フィッチの船(1787)などの先駆がある。蒸気船による営業運航に成功した最初がフルトンのクラモント号であり,その後,蒸気船がだんだんと帆船に代わるようになったことから,フルトンが蒸気船の父とされているのである。…
…最近は,とくに潜水艦の行動を阻止するための兵器として重要視されている。
[歴史]
現在の機雷の原型は,アメリカのR.フルトンによって発明された。フルトンの機雷は,浮力をもった爆薬缶を索で海中に係留する方式のもので,艦船が接触すると爆発するようになっていた。…
…潜水艦の発展史上で記念すべき艦につけられてきた艦名で,次のものがある。(1)1800年R.フルトンの設計建造になる水上帆走,水中は手動スクリュー推進の潜水艇。(2)85年イギリスのA.キャンベル,J.アッシュの設計建造になる電池電動機推進の潜水艇。…
※「フルトン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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