アメリカ改革派(オランダ系)の宣教師。オランダ生まれ。モラビア派の信仰の影響を受けて育ち、ユトレヒトの工業学校で土木技術を学んでアメリカに移住。コレラにかかった体験が契機となりオーバン神学校を卒業して宣教師となる。シモンズDuane B. Simmons(1834―1889)、S・R・ブラウンと来日(1859)した。佐賀藩の学校致遠館(ちえんかん)で教えた青年たち(大隈重信(おおくましげのぶ)、副島種臣(そえじまたねおみ)ら)が明治政府の枢要な地位についたため、東京の大学南校(現、東京大学)の教頭に招かれ(1869)、破格の待遇を得る。明治政府のために開港、開国、開教(信教の自由)、教育の各領域にわたって宣教師の役割を超えて力を尽くす(1875まで)。その後は全国各地を旅行してキリスト教の伝道に専念し、りっぱな日本語で説教と講演を行い、明治学院で教え、聖書の翻訳では『旧約聖書』の「詩篇(しへん)」を植村正久と担当した。68歳で東京で死去。
[川又志朗 2018年8月21日]
『高谷道男編訳『フルベッキ書簡集』(1978/オンデマンド版・2007・新教出版社)』
アメリカのオランダ改革派教会宣教師。英語読みではバーベック。オランダに生まれ,移住先のアメリカでオーバン神学校に学ぶが,病に倒れたのを契機に献身を決意。新婚早々の1859年(安政6)来日して長崎で日本語を習得,禁教下秘かに布教して村田若狭に最初の洗礼を授けた。また,長崎の洋学所,その後身の済美館,さらに佐賀藩の致遠館で英語・フランス語・オランダ語・ドイツ語の語学,政治,科学,兵事などを教え,門下から大隈重信,伊藤博文,横井小楠らの人材が輩出した。
69年(明治2)招かれて上京,新政府の顧問として重んじられ,開成学校(のち大学南校)教頭を務めた。また欧米への使節団派遣を建言し,教育,法律,行政などの諸制度に関して献策し,日本の近代化に大いに貢献した。のち伝道に専念,東京一致神学校の講師となり,86年ヘボンらと明治学院を設立してその教授を務めた。旧約聖書の邦訳にも協力。東京で没した。
執筆者:森井 真
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(加納孝代)
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1830.1.23~98.3.10
アメリカのオランダ改革派教会宣教師。英語読みはバーベック。オランダに生まれ,アメリカの神学校を卒業。1859年(安政6)長崎に来航,幕府の済美(せいび)館,佐賀藩の致遠(ちえん)館で大隈重信らを教え,新政府の開成学校教頭に就任。75年(明治8)以降は伝道に従事し,聖書翻訳にもあたり,明治学院教授を務めた。東京で没。
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…それはこの使節団の弾力性を示している。 岩倉使節団の派遣をめぐっては,伊藤博文提案説と大隈重信提案説とがあるが,後者は,かつてフルベッキの提示した〈ブリーフ・スケッチ〉(Brief Sketch,1869年6月11日付)をもとに廃藩置県後,大隈がみずからの使節団構想を提案し,それが結果的に岩倉使節団にきりかえられた,というものである。そこには新政権をめぐる薩長と非薩長との主導権争いがからみ,使節団出発直前の1871年11月9日に政府と使節団首脳との間で調印された12ヵ条の〈約定〉が,留守中〈新規ノ改正〉を避け,官制や人事の現状維持のもとで廃藩置県後の実効をあげることを規定していることともかかわりがある,とみられている。…
…明治維新から大正期にかけて,財政・外交にすぐれた手腕を発揮した政治家。佐賀藩の上級士族の家に生まれ,幼少から藩校弘道館で漢学を学び,のち蘭学に移り,ついで長崎に遊学してアメリカ人フルベッキについて英学を学び世界的な視野を開いた。幕末の政局で,彼は尊攘派として長州藩の外国船砲撃事件(1863)を支持し,1867年(慶応3)には脱藩上京して徳川慶喜に政権返還を説こうとしたが捕らえられ,王政復古のときも藩主に討幕出陣を勧めたが入れられなかった。…
※「フルベッキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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