翻訳|Hoover Dam
アメリカ南西部アリゾナ州とネバダ州の境のコロラド川ブラック・キャニオンに,1935年に完成した重力式アーチダム。47年に大統領のH.フーバーを記念してフーバー・ダムと改称されるまではボールダー・ダムBoulder Damと呼ばれた。高さ221m,堤頂長379m,堤体積336万m3。貯水池のミード湖Lake Meadの総貯水量367億m3で,ダム直下の発電所で最大出力135万kWの発電をし,ユマ平原の灌漑,ロサンゼルス市の都市用水補給など多目的に利用されている。当時世界最高のシャボン・ダム(フランス,高さ136m,重力ダム)を一挙に85mも超した巨大なダムで,ダム用に発熱量の少ない中庸熱セメントを開発し,コンクリートの製造,運搬,打込み,締固めに近代化した機械をつくり,さらに15m×15m×高さ1.5mのブロック状にダムを分割施工するなどの画期的な技術の研究開発が行われ,現在でもダム技術の基本となる模範的工法を確立した。またこのような巨大な建設工事を一建設会社では請負できないので6社が共同して新会社を設立して工事を請け負った。これがジョイントベンチャー(共同企業)の発端で,建設業界に大きな影響を与え,日本でも多く採用されている。このダムによってインペリアル・バレーの砂漠が豊かな緑に覆われたが,河口への土砂の供給が減って海岸浸食が進み問題となっている。
執筆者:柴田 功
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アメリカ合衆国西部のコロラド川にある重力式アーチダム。1936年の完成当時、世界最大の規模を誇った。ダムの高さ221メートル、有効貯水量367億立方メートル。西部開発の中核をなした。最大出力135万キロワットの発電、インペリアル谷の灌漑(かんがい)、洪水調節、航行の維持のほか、ミード湖とよばれる貯水池を中心として6万5000ヘクタールのレクリエーションに適した地帯を形成している。
[石﨑正和]
…コンクリートダムの技術的基礎はこれらを背景に確立され,次々と大ダムの建設が始まった。コロラド川に36年に完成したコンクリート量340万m3のフーバー・ダムは,設計,施工技術の飛躍的な向上をみせ注目を集めていたが,この従来の規模をはるかにこえたダムも,わずか6年後にはワシントン州コロンビア川に完成されたコンクリート量810万m3のグランド・クーリー・ダムなどに追い越された。 一方,1922‐37年に土のパイピング(土中の流水によって内部が洗掘されること)や締固まりに関係する最適含水比など,土に関する基礎的研究が著しく進み,これに施工機械の改良,大型化とがあいまって,このころから土や砂れきやロック(岩塊)を堤体材料とするロックフィルダムが急速に発展した。…
…ダム建設は当初,水力発電を目的とするものであったが,アメリカで1928年〈ボールダー峡谷事業法Boulder Canyon Project Act〉以来,多目的ダムの建設が水資源開発の手段として一般化するようになった。この事業はコロラド川にフーバー・ダムを建設し,延長349kmものコロラド川水路を開削し,ロサンゼルスをはじめとする南カリフォルニア諸都市に最大毎秒42.48m3の水を供給する巨大なものであった。またアメリカ南部のテネシー川流域でのTVAによる河川総合開発事業はあまりにも有名である。…
…地震が起こるのは貯水の初期から最高水位になるまでの間が多いが,満水後何年も続く例もある。この現象が最初に注目され,組織的な観測が行われたのは,アメリカのネバダ,アリゾナ州境に近いフーバー・ダムで,1936年から数年間にわたり年間数十ないし100回近くの地震が記録された。大きな被害を伴った例としては,インドのコイナ・ダムで67年12月10日のマグニチュード6.3の地震で180人の死者がでている。…
※「フーバーダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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