ブラインドサッカー(読み)ぶらいんどさっかー(英語表記)blind soccer

デジタル大辞泉 「ブラインドサッカー」の意味・読み・例文・類語

ブラインド‐サッカー(blind soccer)

視覚障害者のために開発されたサッカー。B1(全盲)とB2/B3(弱視)の二つのクラスのうち、B1の選手が行う競技呼称フットサルルールを基本とするが、視力差による不公平が生じないように4人のフィールドプレーヤー全員がアイマスクを着用し、転がると音の出る専用のボールを使う。ゴールキーパー・監督・ガイド(コーラー)は晴眼者または弱視者が務め、フィールドプレーヤーに対して声で指示を出す。パラリンピックでは2004年アテネ大会から正式種目となり、5人制サッカーともよばれる。ブラサカ。→ロービジョンフットサル
[補説]B1~3は、国際視覚障害者スポーツ協会(IBSA)が定めた視覚障害の程度によるクラス分け。
B1:全盲から光覚まで
B2:矯正後の診断で、視力0.03まで、ないし、視野5度まで
B3:矯正後の診断で、視力0.1まで、ないし、視野20度まで

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラインドサッカー」の意味・わかりやすい解説

ブラインドサッカー
ぶらいんどさっかー
blind soccer
blind football

視覚障害者のために考案されたサッカー。正式名称は視覚障害者5人制サッカーで、略称ブラサカ。競技はFIFA国際サッカー連盟)が定めたフットサルを一部修正したルールで行われる。障害の程度に応じたB1クラス(全盲)とB2/B3クラス(弱視)の二つのカテゴリーがある。B1~B3とは国際視覚障害者スポーツ協会(IBSA:International Blind Sports Federation)が定めた障害の程度によるクラス分けで、B1は視力ゼロから光を感じる程度(ただしどの距離・方向からも手の形を見分けることができない)、B2は手の形を認識できる程度から視力0.03以下か、視野が5度未満あるいはその両方、B3は視力が0.1以下か視野が20度未満あるいはその両方となっている。

 B1クラスの1チームは7人編成で、4人のフィールドプレーヤーとゴールキーパーに加え、プレーヤーに声で指示を送るコーチとコーラーで構成される。このクラスのフィールドプレーヤーは、視力の差をなくすために全員アイマスクを着用する。ゴールキーパー、コーラー、コーチはB2/B3クラスの者か晴眼者が務め、ゴールキーパーはおもに味方ディフェンダーに、コーラーは攻撃する側のゴールの裏に立ってオフェンスに、コーチはフェンス(サイドライン)の脇に立っておもにミドルエリアにいる選手に対して声のガイドを行う。また、コーチは全体の監督の役割も担う。ボールは中に鈴が入っていて音が鳴る特殊なものを使用する。サイドライン上にはクッション素材のフェンスがあり、このフェンスを利用した戦術も可能である。また、危険な接触を防ぐため、ボールを保持した相手に対し「ボイ!Voy!(スペイン語で「行く」の意味)」というかけ声をかけなければならず、これを怠ると「ノースピーキング」という反則となる。B2/B3クラスの競技は1チーム5人で、コーチやコーラーは参加しない。チームは弱視者と晴眼者の混合編成で、アイマスクは着用せず、ルールはフットサルとほぼ同様、ボールもフットサル用のものを使用する。ただしB2の選手がつねに2人以上フィールドに出ていなければならない。B2/B3クラスは視覚障害者と健常者が同じフィールドにたつユニバーサル競技としても行われている。どのクラスも試合時間は前半後半各25分の計50分間で行われ、10分間のハーフタイムがある。

 ブラインドサッカーは1980年代に考案され、ヨーロッパ南米などで盛んになった。日本でIBSAによる国際ルールが導入されたのは2001年(平成13)であるが、それ以前から盲学校などで独自ルールを設けて競技されていた。2001年に現在の日本ブラインドサッカー協会(JBFA:Japan Blind Football Association、2010年に「日本視覚障害者サッカー協会」から改称)の前身、「音で蹴るもうひとつのワールドカップ実行委員会」が発足。2003年に初めての全国大会である日本視覚障害者サッカー選手権大会が開かれた。2010年時点の国内競技人口はおよそ400人で、小中学校の教育プログラムや総合学習の授業では、仲間との交流や信頼関係を自然に学べるとし、ブラインドサッカーを授業に取り入れる動きもある。2004年よりパラリンピック正式種目。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラインドサッカー」の意味・わかりやすい解説

ブラインドサッカー
blind football

視覚障害をもつフィールドプレーヤー 4人と,晴眼(視覚障害がない)もしくは弱視のゴールキーパーによるサッカー。視覚の程度によるクラス分けはなく,フィールドプレーヤーは全員アイマスクをして完全に視覚を遮断した状態でプレーする。転がすと音の出るボールを使い,相手ゴール裏にいるガイド(コーラー),ベンチのコーチ,ゴールキーパーによる声の指示を聞きながらピッチを自由に動き回ってゴールをねらう。ピッチの大きさは 40m×20mでフットサルとほぼ同じ。サイドライン沿いに高さ約 1mのフェンスが並べられる。フェンスにあたって跳ね返ったボールを使ってプレーを続行できるほか,選手はフェンスをさわって自分の位置などを確認できる。基本的なルールはフットサルと同様だが,守備側の選手がボールを保持する選手に向かっていく際,「ボイ」voy(スペイン語で「行く」という意味)のかけ声を発するルールがあり,違反すると反則になる。アイマスクをした選手がポジションを入れ替えたり,ループパスで敵を翻弄したりするプレーがこの競技の魅力。パラリンピック競技大会では男子のみが 2004年アテネ大会から正式競技となった。

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知恵蔵mini 「ブラインドサッカー」の解説

ブラインドサッカー

視覚障害者や視覚を閉ざした視覚健常者が競技を行うためのサッカー。略称「ブラサカ」。視覚障害者がサッカーを楽しむためのものとして1980年代初頭に開発された。国際ルールはIBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)によって作られ、日本には2001年に紹介された。5人制の室内サッカー「フットサル」を元にしており、4人のフィールドプレーヤーとゴールキーパー、さらにコーチらを加えた7名がピッチに立つことができる。B1クラスとB2/3クラスの2カテゴリーがあり、B1クラスは全盲・ほぼ全盲の人が、視力の差を公平にするためアイマスクを着装し、音の鳴るボールや「ボイ!」というかけ声などを用いてプレイする。このクラスは2004年アテネ大会からパラリンピックの正式競技となっている。B2/3クラスはアイマスクを装着せず、通常のフットサルボールを用い、弱視者も視覚健常者も同じルールの下でプレイする。14年11月には、国立代々木競技場フットサルコートで「IBSA ブラインドサッカー世界選手権 2014」が開催され、日本チームは過去最高の6位となった。

(2014-11-25)

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