ブラッドベリ(読み)ぶらっどべり(その他表記)Ray Bradbury

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラッドベリ」の意味・わかりやすい解説

ブラッドベリ
ぶらっどべり
Ray Bradbury
(1920―2012)

アメリカSF作家。SF専門の作家というよりは、SF的趣向創作媒体として利用し自己の幻想を奔放に展開するファンタジストで、SFの叙情詩人、ポーの衣鉢を継ぐ幻想文学第一人者という評価を受けている。少年時代からの熱烈なSFファンで、1941年から専門誌に短編を発表し、1945年以降声価が高まるにつれて『コリアーズ』などの一般誌が彼の作品を掲載するようになった。1945年から1955年に至る10年間が彼の創作のもっとも充実した時期であり、この間、1947年と1948年には優れた短編に与えられるO・ヘンリー賞を2回受賞している。処女短編集『闇(やみ)のカーニバル』の増補版『十月はたそがれの国』(1955)、叙情と幻想、郷愁と喪失感など作風基調を確立した、代表作火星年代記』(1950)、『刺青(いれずみ)の男』(1953)などの短編集のほかに、長編としては未来世界における焚書(ふんしょ)を主題にした『華氏451度』(1953)、過去と現在と未来が交錯するゴシック風の幻想小説『何かが道をやってくる』(1962)などがある。1970年代後半から1980年代にかけてはしだいに創作が少なくなり、戯曲集『火の柱』(1975)、短編集『二人がここにいる不思議』(1988)、同『瞬きよりも速く』(1996)、同『バビロン行の夜行列車』(1997)などを数えるだけであり、その間には自作火星年代記』の舞台劇化やテレビ番組化のプロデューサーを務めた。作品にはほかに戯曲集、詩集、長編ミステリーなどもあり、著作の総数は30冊近い。

[厚木 淳]

『伊藤典夫訳『火の柱』(1980・大和書房)』『小川高義訳『ブラッドベリがやってくる 小説の愉快』『ブラッドベリはどこへゆく 未来の回廊』(1996・晶文社)』『金原瑞人訳『バビロン行きの夜行列車』(1998・角川春樹事務所)』『伊藤典夫訳『瞬きよりも速く』(1999・早川書房)』『伊藤典夫訳『黒いカーニバル』『火星年代記』『刺青の男』『華氏451度』(ハヤカワ文庫)』『宇野利泰訳『10月はたそがれの国』(創元SF文庫)』『大久保康雄訳『何かが道をやってくる』(創元SF文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ブラッドベリ」の意味・わかりやすい解説

ブラッドベリ
Ray Bradbury
生没年:1920-2012

アメリカのSF作家。良識的な未来観と,抒情的なイマジネーションによって世界的な人気を得ている。代表作《火星年代記》(1951)は火星に植民した地球人と火星人の戦いののち,伝染病で火星人が全滅し,地球もまた核戦争で全滅するという悲劇を追った連作集。ほかに《太陽の黄金の林檎》(1953),《何かが道をやってくる》(1962)などがある。
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百科事典マイペディア 「ブラッドベリ」の意味・わかりやすい解説

ブラッドベリ

米国のSF・ファンタジー作家。1940年代後半から活動をはじめる。初期の長編《火星年代記》(1950年),《華氏451度》(1951年)によって抒情的SFの代表的作家となり,E.A.ポーら米国幻想小説の後継者ともみなされた。ファンタジー色の濃いSF短編により広い読者層に長く読み継がれている。《何かが道をやってくる》(1963年),短編集《刺青の男》(1951年),《太陽の黄金の林檎》(1953年),《10月はたそがれの国》(1955年)など。代表作は各国で翻訳され,日本にも多くの読者が存在する。近年は幻想怪奇・ファンタジー物が中心となる。映画化された作品も多数。

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