プラントル(読み)ぷらんとる(その他表記)Ludwig Prandtl

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラントル」の意味・わかりやすい解説

プラントル
ぷらんとる
Ludwig Prandtl
(1875―1953)

ドイツ空気力学者。バイエルンに生まれる。ミュンヘン工科大学を卒業して、ハノーバー工科大学、ゲッティンゲン大学の教授を歴任、1925年カイザー・ウィルヘルム流体研究所(現、マックス・プランク研究所)を創立して所長を務め、1946年退任した。ゲッティンゲン大学在任中に風胴を建設して実験を行い、有限翼幅主翼の補正理論や、球の空気抵抗変化の研究を完成した。1904年の境界層理論は、空気(一般の流体も)が物質と接する境界に薄い空気の層ができて、これが物体の空気抵抗を発生させることを提唱したもので、理想流体では抵抗がゼロになるというこれまでのダランベール原理を打破した。また、第一次世界大戦のドイツ軍用機用翼型を研究し厚翼の実用性を発見した。これらのきわめて実用性のある研究により、空気力学の父といわれている。

佐貫亦男

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改訂新版 世界大百科事典 「プラントル」の意味・わかりやすい解説

プラントル
Ludwig Prandtl
生没年:1875-1953

ドイツの応用力学者。ミュンヘン工科大学に学び,ハノーファー大学教授を経て1904年ゲッティンゲン大学の教授となり,25年からはカイザー・ウィルヘルム流体研究所長を務めた。彼は早くから本格的な風胴をもつ実験室を設置して,飛行船のモデル実験を行ったり,球や円筒牽引けんいん)を研究し,臨界レーノルズ数と関連する乱流の重要性をいちはやく認めたほか,限定された長さをもつ翼のふるまいや,複葉機の2枚の翼の干渉,翼と尾翼との干渉などの翼理論の研究を行い,航空力学基礎を築いた。また,境界層概念を提出(1904)して,物体に働く抵抗の数学的な解析を可能とした功績も大きい。弾性,塑性の研究もある。
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百科事典マイペディア 「プラントル」の意味・わかりやすい解説

プラントル

ドイツの応用力学者。ミュンヘン大学卒,ハノーファー工科大学,ゲッティンゲン大学各教授を経て,1925年カイザー・ウィルヘルム流体研究所創設以来その所長。境界層の理論を創始(1904年)して現代流体力学の基礎を,翼理論を展開して航空力学の基礎を築いた。弾性体,塑性体にも多くの貢献がある。
→関連項目カルマン流体力学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラントル」の意味・わかりやすい解説

プラントル
Prandtl, Ludwig

[生]1875.2.4. フライシンク
[没]1953.8.15. ゲッティンゲン
ドイツの応用物理学者。ミュンヘン大学に学び,ハノーバー大学教授 (1901) ,ゲッティンゲン大学教授 (04~53) 。 1907年ゲッティンゲン大学に主として飛行船の空気力学的研究のための風洞を備えたモデル研究所 (現マックス・プランク流体研究所) が設置され,以後その所長として空気力学,航空工学の研究・教育に専念した。 04年境界層理論を発表,第1次世界大戦の際には飛行機の翼の理論を発展させ,後方渦・誘導抗力などの概念を提出し,現代流体力学の基礎を築いた。

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世界大百科事典(旧版)内のプラントルの言及

【境界層】より

…また完全流体では,その中を一定速度で進行する物体に働く抵抗が0になるというダランベールのパラドックスを生ずる。境界層という考え方は,これらの矛盾を救済するためにL.プラントルによって1904年に導入されたもので,近代流体力学の基礎を作った。
[境界層理論]
 いま無限に広い静止平板の外側の流体が,一定速度Uで壁に平行に動き始めたとしよう。…

【高速気流】より

…これは現在,ランキン=ユゴニオの関係式として知られている。1907年にはドイツのL.プラントルらが物体の角をまわる超音速流の膨張に関して理論を展開した。その後,高速気流の研究は主として航空機の高速化と密接な関係のもとに発展し,35年には翼の臨界マッハ数を高める方法として後退角をつけることが提案されたのをはじめ,52年,遷音速における断面積の法則の発見など,多くの成果が得られている。…

※「プラントル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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