プレベール(その他表記)Jacques Prévert

改訂新版 世界大百科事典 「プレベール」の意味・わかりやすい解説

プレベール
Jacques Prévert
生没年:1900-77

フランス詩人,シナリオ作家。シュルレアリスム運動に参加した後に脱退,1930年頃から詩や散文を発表しはじめると同時に,映画のシナリオを手がけた。代表作《ことば》(1946)は今日までに発行部数約100万部を数え,詩集としては空前の売行きを示した。卑近題材から意想外の効果を生みだす言葉とイメージの飛躍面白味がもっとも遺憾なく発揮されたのもこの処女詩集においてであった。天性ユーモリストであり反逆児である彼の作品は,シュルレアリスムの破壊的言語を継承し,ブルジョア的な言葉づかいを逆手にとった痛烈な風刺によって世の抑圧者,偽善者を嘲笑するとともに,庶民的な正義感と抒情を漂わせたものであって,万人の心にひそむ自由への渇望に訴えかけて広く愛誦された。ほかに《おはなし》(1946),《光景》(1951),《雨とお天気》(1955)などの詩集がある。またコスマ作曲の《枯葉》をはじめ,シャンソンの歌詞として知られた作品も多い。シナリオ作家としてはマルセル・カルネ監督の作品で一世を風靡したが,中でも《おかしなドラマ》(1937),《霧の波止場》(1938),《悪魔夜来る》(1942),《天井桟敷の人々》(1945),《夜の門》(1946)などは日本でも広く知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレベール」の意味・わかりやすい解説

プレベール
ぷれべーる
Jacques Prévert
(1900―1977)

フランスの詩人、シナリオ作家。シュルレアリスム運動に参加したが数年後脱退。1930年ころから雑誌に詩文を発表するかたわら、映画のシナリオを手がけた。旧作を含む処女詩集『ことば』(1946)は、平易な日常的言語に込められた痛烈な風刺と素朴な叙情性によって広く愛唱され、詩集としては空前の売れ行きを示した。支配階級の偽善を破壊的なことば遊びやパロディーによって暴き出し、いかなる政治主張にもとらわれない民衆的な愛と自由と正義への希望を生気あふれることばで歌った作品である。ほかに『おはなし』(1946)、『光景』(1951)、『雨とお天気』(1955)、『寄せ集め』(1965)などの詩集がある。シナリオ作家としては、とくにマルセル・カルネ監督の傑作『おかしなドラマ』(1937)、『霧の波止場』(1938)、『悪魔が夜来る』(1942)、『天井桟敷(さじき)の人々』(1945)などを手がけた。またコスマの作曲による『枯葉』その他の流行歌の作詞者としても広く知られている。

[田中淳一]

『平田文也訳『プレヴェール詩集』(1982・ほるぷ出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プレベール」の意味・わかりやすい解説

プレベール
Prévert, Jacques

[生]1900.2.4. ヌイイシュルセーヌ
[没]1977.4.11. ノルマンディー,オモンビルラプチット
フランスの詩人,シナリオライター。 1926~30年シュルレアリスム運動に参加,のち映画に興味をもち脚本を書く。詩では,シュルレアリスムから反抗的,無政府主義的な精神,ブラック・ユーモア,大胆で意外な言語表現などを受継いだが,一方では民衆的な単純さをもあわせもつ。映画作家としては M.カルネと協力,『霧の波止場』 Quai des brûmes (1938) ,『天井桟敷の人々』 Les Enfants du paradis (44) などを手がけた。詩集に『言葉』 Paroles (46) ,『見世物』 Spectacle (51) ,『雨と晴天』 La Pluie et le beau temps (55) 。『枯葉』 Les Feuille mortesなどのシャンソンの作詞者としても名高い。

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百科事典マイペディア 「プレベール」の意味・わかりやすい解説

プレベール

フランスの詩人。シュルレアリスム運動に参加後,脱退。詩集《パロール》(1946年)で一躍大衆詩人として人気を得た。以後《雨と晴天》《物語》など,平易な言葉で新鮮な詩を書く。J.コスマによりシャンソンに作曲された《枯葉》が有名。《天井桟敷の人々》など映画シナリオもある。
→関連項目暗黒小説天井桟敷の人々

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世界大百科事典(旧版)内のプレベールの言及

【天井桟敷の人々】より

…撮影は非占領区の南フランスのニースの撮影所に,19世紀半ばのパリの街並みを復元したオープンセットを建てて行われた(セット・デザインはアンドレ・バルサックとユダヤ人であったために名を隠したアレクサンドル・トローネル)。《おかしなドラマ》(1937),《霧の波止場》(1938),《日は昇る》(1939),《悪魔が夜来る》(1942)に次ぐジャック・プレベール脚本,マルセル・カルネ監督のコンビの代表作かつ最高傑作であり(このコンビの作品によって代表される当時のフランス映画が〈詩的リアリズム〉の名で呼ばれた),おそらく世界中でもっともよく知られたフランス映画の名作である。 第1部〈犯罪大通り〉,第2部〈白い男〉という2部構成で,1840年代のパリのブールバール・デュ・タンプル(〈犯罪大通り〉の名で呼ばれた)を主要な舞台に,パントマイムを舞台芸術にまで高めた偉大な創始者として知られるJ.G.ドビュロー,ロマン派演劇の名優F.ルメートル,悪名高き犯罪詩人ピエール・フランソア・ラスネールといった実在の人物が,娼婦ガランスやドビュローが活躍したフュナンビュール座の座長の娘ナタリーといった虚構の人物と入りまじって,まさに虚々実々の恋愛絵巻をくりひろげる波乱万丈の物語である。…

※「プレベール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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