ヘッジファンド(英語表記)hedge fund

翻訳|hedge fund

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヘッジファンド
hedge fund

株式債券,商品,金融派生商品などに分散投資し,高い運用収益を追求する投資信託。1949年にアメリカ合衆国の社会学者,アルフレッド・W.ジョーンズが始めたファンドが起源といわれる。割安の投資商品を買い,割高の投資商品を同時に売るという投資手法によって,市場変動リスクを極小化(ヘッジ)することからヘッジファンドと呼ばれる。不特定多数ではなく特定少数に販売する私募形態をとる。投資スタイルの特徴は,小額の元本に比べて,はるかに大きい投資を行なうことにある。また一般に,短期資金を調達し長期運用する長短ミスマッチとなっている。このため,金融市場が混乱した場合,資金調達難に直面し経営危機に陥る可能性がある。1998年のロシア金融危機の直後,アメリカのロングターム・キャピタル・マネジメント LTCMが経営破綻したのはその典型的な例。2007年に日本で施行された金融商品取引法は,ヘッジファンドを集団投資スキーム持分の販売,および,有価証券デリバティブ取引の投資運用につき,第二種商品取引業者としての登録義務を課している。

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知恵蔵の解説

ヘッジファンド

富裕層や機関投資家から資金を集め、ハイリスク・ハイリターンの運用をする投資組織のこと。通常の相場観に反して「逆張り」をすることで、高い収益を狙う傾向があることから、相場が思わぬ方向に動いたときのリスクヘッジ(危険回避)になるといわれている。 その一方、さまざまな金融技術を使って、元手の数倍規模で運用するため、相場の少しの変動で大きな損失が生じる可能性もあり、国際的な金融不安につながる要因にもなると指摘されている。 ヘッジファンドは、各国の法律や規制をできるだけ避けるために、ケイマン諸島などの租税回避地に設立されることが多く、各国の金融当局もその実態をつかむのが難しくなっている。このため、G7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)などでは、欧州諸国を中心に、ヘッジファンドの規制や監督の強化を求める声が出ているが、米国はこれに反対している。

(高成田享 朝日新聞記者 / 2008年)

ヘッジファンド

株価指標の動きとは無関係に、相場の下落局面などでもいろいろな手法を駆使して絶対的にプラスとなる運用成績を目指す運用法人を指す。ハイリスク・ハイリターンの手法を取るため、運用に失敗する例も多い。かつては一部の富裕層が大口の資金を運用する手段であったが、最近では、年金基金が運用成績を上げるために組み込んだり、個人が小口運用に用いたりするようにもなった。全世界で1万を超えるヘッジファンドが総額1兆ドル以上を運用していると見られているが、ほとんどのファンドは内容を非公開にしているため、実態は不明な点が多い。日本の市場においても、積極的な運用で大きな影響力を発揮することがある。

(熊井泰明 証券アナリスト / 2007年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ヘッジファンド

富裕層や大口投資家からお金を集め、投機的な売買を繰り返して高収益を狙う私的な投資組合。株式、為替、債券などさまざまな金融商品に、複雑な方法を駆使して投資する。

(2013-06-15 朝日新聞 朝刊 1総合)

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百科事典マイペディアの解説

ヘッジファンド

世界中の大口投資家から資金を集め,デリバティブ(金融派生商品)の運用などを柱に世界中に投資する投資顧問業者の私的な投資信託。本来はプライベート・バンキング(金融機関が個人資産家の財産を総合的に管理すること)向けで,資産価値を損なわないようにすることを目的に保守的な運用をしている投資信託(ファンド)を指したが,近年では投機的な運用を行うファンドを指すようになった。原資の数十倍を運用することになるレバレッジ(てこ)を利用して,巨額の資金を動かし,年利30〜40%の投資収益をあげることで知られる。また,短期的に大量の資金を移動させる〈ホットマネー〉の代表格で為替相場や株式相場などの攪乱(かくらん)要因にもなっている。有名なものにはJ・ソロスのクオンタムやスタインハート,タイガーなど。 1992年のヨーロッパ通貨危機,1994年のメキシコ通貨危機,1997年のアジア通貨危機の一因がヘッジファンドにあるとの指摘もある。その実態はよくわからないが,世界中に1000社,1200億ドル余の資金があり,実際にはそのうち20ほどのヘッジファンドだけで大半が運用されているといわれる。しかし,1998年10月,ロシア通貨の切下げと国際金融市場での先物取引失敗などで大手ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が巨額の損失を出し破綻した。
→関連項目サブプライムローン問題通貨危機

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FX用語集の解説

ヘッジファンド

本来の意味は、リスクをヘッジ(回避)しながら運用を行なうファンドのことです。しかし、一般には、株式や債券価格が下落する場合は、むしろ積極的に売りを行なって収益を上げることを目指す私募形式のファンドを総称してこのように呼んでいます。私募形式のファンドは、監督官庁に届け出る義務・規制がなく、投資対象や投資手法に規制・制限がないので、非常に多額の金額を運用しているファンドもあります。外国為替市場においても、1990年代以降、メインプレーヤーの一つとなっています。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヘッジファンド
へっじふぁんど
hedge fund

投資家(個人、金融機関、年金基金など)から預かった資金を運用し、相場の上下変動にかかわらず収益を追求する投資ファンド。反対売買などを組み合わせることでリスクを回避(ヘッジ)しながら運用するのでこうよばれる。巨額資金を投機的に運用するヘッジファンドが多く、1997年のアジア通貨危機や2008年の世界金融危機などの元凶となったとされるが、世界的なカネあまりを背景にヘッジファンドへの資金流入が続いている。
 独自の相場見通しによって株式、債券、外国通貨、商品などに投資し、空売りやデリバティブ(金融派生商品)取引など金融工学を駆使して相場の下落局面でも高収益をねらう。投資信託などと比べ運用者の報酬が高いという特徴がある。世界的なトレンドを分析して運用するグローバル・マクロ、相場の影響を極力避けて安定運用をねらうマーケット・ニュートラル、割安な銘柄を買い(ロング)、同時に割高な銘柄を空売り(ショート)するロング・ショートなどの手法がある。
 1949年にアメリカ人投資家、ジョーンズAlfred Winslow Jonesがリスク回避型投資手法を開発したのが起源とされる。1980年代以降、100億ドルを超える巨額ファンドが登場。ジョージ・ソロスGeorge Soros(1930― )のクオンタム・ファンドQuantum Fundやノーベル経済学賞受賞者が設立にかかわったロングターム・キャピタル・マネジメントLong-Term Capital Management(LTCM)などが有名である。ユーリカヘッジEurekahedge(シンガポール)などヘッジファンドの運用成績を示す指標も数多くある。
 ただクオンタムが1992年にイギリスのポンド防衛意図を打ち破り、2000年以降は欧米ファンドの円キャリー取引が円相場の攪乱(かくらん)要因となっている。1998年にLTCMが破綻(はたん)、クオンタムも整理に追い込まれるなど、必ずしも運用はうまくいっていない。金融危機を防ぐため市場に供給された過剰マネーがヘッジファンドに流入し、これがサブプライムローン問題などの金融危機を招くという悪循環が続いている。主要国首脳会議(サミット)や主要国財務相・中央銀行総裁会議などでヘッジファンドの情報公開、監督・規制強化が議論されているが、目に見える成果はあがっていない。[矢野 武]

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世界大百科事典内のヘッジファンドの言及

【国際金融市場】より

…それは巨額の投機的デリバティブの開発やリスク計算を可能にし,24時間の政治・経済のニュースを判断材料に秒刻みで巨額の資金を動かすことを可能にしたといわれている。とりわけ,アメリカを中心に成長している投資顧問業者のファンドの一つ〈ヘッジファンド〉のように,少数の大口投資家から資金を集め,デリバティブのレバレッジ効果(少額の証拠金で高額の投機を可能にする)を利用して巨額の売買を行う投資行動が,今日,連動性を強めている株式市場を大きく動かしたともいわれている。金融市場【木村 滋】。…

※「ヘッジファンド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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