ベッケル(読み)べっける(英語表記)Jacque Becker

デジタル大辞泉 「ベッケル」の意味・読み・例文・類語

ベッケル(Gustavo Adolfo Bécquer)

[1836~1870]スペインの詩人。窮乏のうちに夭折ようせつしたが、死後に刊行された「叙情詩集」や、スペイン内外の説話に材をとった短編集「スペイン伝奇集」を残した。

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精選版 日本国語大辞典 「ベッケル」の意味・読み・例文・類語

ベッケル

  1. ( Gustavo Adolfo Bécquer グスターボ=アドルフォ━ ) スペインの詩人。民衆の心に訴える哀感に満ちた抒情詩を残す。生前は不遇であった。著に、詩集「しらべ」、短編集「スペイン伝説」がある。(一八三六‐七〇

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベッケル」の意味・わかりやすい解説

ベッケル(フランスの映画監督)
べっける
Jacque Becker
(1906―1960)

フランスの映画監督。1940年代から1950年代にかけて活躍した。職人肌の緻密(ちみつ)な映画づくりはヌーベル・バーグの先駆け的存在となった。セザンヌ家と親交のあった家庭に生まれ、その縁でジャン・ルノワールと知り合い、『素晴らしき放浪者』(1932)から『ラ・マルセイエーズ』(1938)まで助監督を務めた。最初の監督長編作品『最後の切り札』(1942)がヒットしたため、ナチス・ドイツの占領下で『赤い手のグッピー』(1943)、『偽れる装い』(1945)を撮った。第二次世界大戦後は『幸福の設計』(1947)がカンヌ国際映画祭で恋愛心理映画賞グランプリを受賞し、その後はシモーヌ・シニョレSimone Signoret(1921―1985)が娼婦を演じる『肉体の冠』(1952)、ジャン・ギャバン主演のフィルムノワール(犯罪映画)『現金(げんなま)に手を出すな』(1954)などの傑作が続く。ジェラール・フィリップ主演でモジリアーニを描いた『モンパルナスの灯(ひ)』(1958)の後、脱獄映画『穴』(1960)の編集を終えたところで病死した。息子のジャン・ベッケルJean Becker(1933― )も映画監督。

[古賀 太]

資料 監督作品一覧(日本公開作)

最後の切り札 Dernier atout(1942)
赤い手のグッピー Goupi mains rouges(1943)
偽れる装い Falbalas(1945)
幸福の設計 Antoine et Antoinette(1947)
エドワールとキャロリーヌ Édouard et Caroline(1951)
肉体の冠 Casque d'or(1952)
エストラパード街 Rue de l'Estrapade(1953)
現金に手を出すな Touchez pas au grisbi(1954)
アラブの盗賊 Ali-Baba et les 40 volurs(1954)
怪盗ルパン Les adventures d'Arsène Lupin(1957)
モンパルナスの灯 Montparnasse 19(1958)
穴 Le Trou(1960)


ベッケル(スペインの詩人)
べっける
Gustavo Adolfo Bécquer
(1836―1870)

スペイン後期ロマン主義の詩人。セビーリャ生まれ。幼くして孤児となり、長じてマドリードに出て詩作に励む。彼の詩の源泉と思われる恋に破れ、また結婚にも挫折(ざせつ)し貧窮のうちに夭折(ようせつ)。死後、友人の手によってまとめられた作品がベッケル唯一の詩集『叙情詩集(リーマス)』(1871)である。詩人のひそかな告白ともいうべき詩句で綴(つづ)られ、愛の歓喜と苦悩、孤独、精神の空白、死の予感などが吐露されている。「天使の弾くアコーディオン」と称される繊細な感受性、伝統的な民衆詩に根ざした簡素な詩型と深い主観主義は、たとえばハイネの「ドイツ的ため息」とも異なる独自の世界を現出している。後世の詩人に与えた影響は大きく、スペイン近代詩はベッケルに始まるといっても過言ではない。ほかに伝説に題材を求めた幻想的短編集『伝説集』(1864)がある。これも第一級の詩的散文と評価され、詩と同様に広く親しまれている。

[有本紀明]

『荒井正道訳『抒情小曲集』(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1962・平凡社)』『神代修編『ベッケル・スペイン伝奇作品集』(1977・創土社)』

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百科事典マイペディア 「ベッケル」の意味・わかりやすい解説

ベッケル

フランスの映画監督。パリ生れ。《大いなる幻影》(1937年)などJ.ルノアールの助監督を経て監督となる。処女作《最後の切札》(1942年),《現金に手を出すな》(1954年),遺作《穴》(1960年)などの〈フィルム・ノワール〉をはじめ,ベル・エポックのパリを舞台にした最高傑作《肉体の冠》(1952年)などにより,フランス映画の戦後第1世代として活躍。ほかにカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した《幸福の設計》(1947年),ラブ・コメディ《エドワールとキャロリーヌ》(1951年),画家モディリアニの半生を描いた《モンパルナスの灯》(1958年)などがある。柔軟かつ的確な演出により,ヌーベル・バーグの先駆ともなった。
→関連項目ギャバンフィリップリベット

ベッケル

スペインの詩人。34歳で不遇の生涯を終えた。彼の100編足らずの詩作品はすべて《抒情詩集》(1871年)に収められている。そこでは,はかない愛,挫折,孤独などロマン派から引き継がれたテーマが,神秘的ともいえる奥行きのある詩語によって表現されており,その深遠な詩的世界は現代の詩人に対して圧倒的な影響力をもっている。他には伝説を題材とする幻想的な散文詩風の短編を集めた《伝説集》(1860年―1863年)があり,《オルガン弾きペレス》《緑色の瞳》などが知られている。

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改訂新版 世界大百科事典 「ベッケル」の意味・わかりやすい解説

ベッケル
Gustavo Adolfo Bécquer
生没年:1836-70

スペインの詩人。セビリャに生まれ,マドリードで没する。幼くして孤児となり,健康に恵まれず,結婚に失敗するなど生涯不遇であった。1850年代,ハイネに代表されるドイツ抒情詩の要素とアンダルシア民謡の要素とをスペイン詩に導入しようとする動きがみられたが,ベッケルはその中から現れた。生前に発表された作品の数は少なく,また68年の革命の混乱の中で,完成していた詩集の草稿が失われたが,後に作者の手で書き直され,彼の死後,友人たちによって《抒情詩集》(1871)として出版された。そこでは愛,幻滅,詩と詩人,孤独と絶望など,おもにロマン派から引き継がれたテーマが,飾りけのないスタイルでうたわれている。散文の作品には,書簡形式による《僧房便り》(1864),スペイン内外の説話を素材とする《伝説集》(1860-63発表)がある。ホフマンの影響のみられる後者は,愛,かなたの世界の存在などをテーマとし,感覚の強調,色彩に満ちた絵画的描写,暗喩の大胆な使用によって,彼の詩と同様,モデルニスモの前ぶれとなった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベッケル」の意味・わかりやすい解説

ベッケル
Becker, Jacques Louis

[生]1906.9.15. パリ
[没]1960.2.21. パリ
フランスの映画監督。 J.ルノアールの助監督を経て 1935年監督としてデビュー。『最後の切札』 Dernier atout (1942) ,『偽れる装い』 Falbalas (45) ,『肉体の冠』 Casque d'or (52) など雰囲気描写にすぐれていた。ほかに『現金に手を出すな』 Touchez pas au grisbi (54) 。

ベッケル
Bécquer, Gustavo Adolfo

[生]1836.2.17. セビリア
[没]1870.12.22. マドリード
スペインの詩人。本名 Gustavo Adolfo Dominguez Bastida。 10歳で両親と死別,叔父の手で育てられ,兄とマドリードに出たが (1854) ,下級官吏,編集者などの職を転々とし,結核におかされた。結婚後も兄が同居していたため妻と不和となり別居し,兄の死 (70) によって妻と和解したが病のためまもなく没した。詩集『調べ』 Rimasは死後出版。

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世界大百科事典(旧版)内のベッケルの言及

【スペイン文学】より


【19世紀――ロマン主義からリアリズムへ】
 19世紀前半はヨーロッパ全体にロマン主義が流行したが,スペインにもやや遅れて移入され,詩と演劇の分野に成果が見られた。革命運動と激しい恋の末に夭逝したJ.deエスプロンセーダの,ドン・フアン伝説を扱った物語詩《サラマンカの学生》と,神秘的ともいえる深遠な詩語を操った孤独な夢想詩人G.A.ベッケルの《抒情詩集》は文学史に残る傑作である。演劇では1835年に上演されたリーバス公爵の《ドン・アルバロ》が,ビクトル・ユゴーの《エルナニ》のスペイン版ともいうべき,ロマン主義の勝利を決定づける作品であった。…

※「ベッケル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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