改訂新版 世界大百科事典 「ベンボ」の意味・わかりやすい解説
ベンボ
Pietro Bembo
生没年:1470-1547
イタリアの文学者,詩人。古典文学やイタリア語の文学に精通していた父の勧めで人文主義の研究に励み,従来,ほとんど古典文学作品に限られていたテキストの文献学的研究をイタリア語の作品に応用して,ペトラルカの《カンツォニエーレ》とダンテの《神曲》を出版した。次いで,旧来の愛の概念に検討を加えたうえで,愛とは神聖かつ理想的な美について思索を深めるよう人を誘うものだと定義した《アーゾロの人々》(1505)を刊行した。さらに,ラテン語に代わる文学語としてイタリア語を用いるよう提唱し,その規範として,ダンテ,ペトラルカ,ボッカッチョを生んだトスカナ語の使用を主張した《俗語散文集》(1525)を発表した。ここでは,初めてイタリア語文法の体系化も試みられ,イタリア語の統一に向かって新たな一歩が踏み出された。一方,《詩集》(1530)ではペトラルカの詩法を忠実に模倣した作品を発表し,その後,これに倣った多くの詩人たちが輩出する端緒を開いた。ほかに,ベネチア共和国の公式記録作者として,《ベネチア史》(1530)などがある。
執筆者:川名 公平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報