日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホホジロザメ」の意味・わかりやすい解説
ホホジロザメ
ほほじろざめ / 頬白鮫
軟骨魚綱ネズミザメ目ネズミザメ科の属の総称、またはその1種の名称。ホホジロザメ属CarcharodonはホホジロザメC. carcharias(英名great white shark)の1種からなる。全体的に三日月形の尾びれをしていること、尾びれの付け根が縦扁(じゅうへん)し、その側方に1本のキール(隆起線)が発達すること、上顎歯(じょうがくし)が幅広い三角形で、上下両顎歯の縁が鋸歯(きょし)状であることなどが特徴である。おもに沿岸の表層域に生息するが、沖合いや外洋域を長距離移動したり、水深1000メートルよりも深い所に潜ったりする。亜熱帯海域から冷水域まで分布域も広い。小さなときはおもに魚類を捕食するが、大形になるとアザラシなどの哺乳(ほにゅう)類をも食べるようになる。もっとも危険なサメの1種で、映画『ジョーズ』(1975)により有名になった。日本近海では、瀬戸内海などにも入り込み、潜水漁業者や漁船に被害を与えたこともある。生殖方法は食卵型の胎生であるが、発生の初期は自分の卵黄で成長し、その後、子宮ミルク(母親の子宮壁から分泌される脂質栄養物)を摂取した後、最終的に食卵型に移行する。2~14尾の子を産む。産まれるときの大きさは1.3メートルほどで、最大で6メートルほどになる。現在では世界的に個体数が減少し、国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、絶滅危惧(きぐ)種中の「危急」(VU)に指定されている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]