ホルベア(英語表記)Ludvig Holberg

デジタル大辞泉 「ホルベア」の意味・読み・例文・類語

ホルベア(Ludvig Holberg)

[1684~1754]デンマークノルウェー小説家歴史家。ノルウェーで生まれ、おもにデンマークで活躍した。北欧啓蒙主義の代表者の一人で、北欧のモリエールと称された。大学では歴史ラテン語などを講じた。著作風刺喜劇「産室」「丘のイェッペ」、風刺小説「ニルス=クリムの地下旅行記」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ホルベア」の意味・わかりやすい解説

ホルベア
Ludvig Holberg
生没年:1684-1754

デンマークの劇作家。ノルウェーのベルゲン生れ。学生時代からコペンハーゲンで暮らす。18世紀のデンマーク文化と文学界で重要な位置を占める。哲学形而上学,ラテン修辞学の教授職を経て専門の歴史教授となる(1730)。またハンス・ミケルセンHans Mikkelsenのペンネームで社会批評,風刺をはじめ,喜劇詩《ペーダ・ポールス》(1719-20)を書く。当時レパートリーの少なかった新しい王立劇場のために短期間(1722-28)に28の喜劇を提供した。その後再開した劇場(1748)に数編を追加する。創作の基盤にはイギリス,フランスの劇があるが,独自の方法でデンマークの市民を登場させつつ,その会話の妙をとらえている点,今日まで新鮮味を失っていない。とくに百姓を主人公とした《山の上のエッペ》(1723)や,過度にラテン語重視に染まった当時の社会を風刺した《エラスムス・モンタヌス》(1731)などはいまだ古典中の重要作品として上演される。デンマークおよびノルウェーにおける演劇の祖とされている。《デンマーク・ノルウェー史》(1732-35),《教会史》(1738)の著作もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホルベア」の意味・わかりやすい解説

ホルベア
ほるべあ
Johan Ludvig Holberg
(1684―1754)

デンマークの劇作家、学者。ノルウェーのベルゲンに生まれ、早く父母を失い孤独な青春を過ごす。コペンハーゲン大学に学ぶが、中退しヨーロッパを放浪、オックスフォード大学で史学を専攻。帰国後執筆した『ヨーロッパ列強史序説』(1711)で学位を得、コペンハーゲン大学教授となる。法律、哲学、古典語、歴史、地理などを講じ万能学者として知られる。初め文学的関心は薄かったが、同僚の学者を風刺した詩が評判をよんだことから、偽善的社会を暴露する長詩『ペーデル・パウルス』(1719~20)を書く。この作品は市民を侮辱するものとして訴えられたが、国王が読み「無害なおもしろい本」と裁決したため、無罪となる。

 1722年、首都に初めて劇場が創設されるにあたり、依頼されて劇作を試み、ほぼ1年半の間に『産室』『山のエッペ』『居酒屋政治家』『エラスムス・モンタヌス』など26編を書き、上演。その多くは風刺喜劇として成功を収め、「北欧のモリエール」とよばれ、北欧文学の存在を世界に知らせた。前記の諸作は今日でもしばしば上演される。30年、篤信家の王がたち「劇場は諸悪の源」として閉ざすに及び学業に復帰。またラテン語でスウィフト流の風刺小説『ニイルス・クリムの地下旅行』(1740)を発表。その後劇場が再開され、新作七編を書いたが、これらの作には往年の生色がみられない。書簡五巻も知られる。

[山室 静]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホルベア」の意味・わかりやすい解説

ホルベア
Holberg, Ludvig

[生]1684.12.3. ベルゲン
[没]1754.1.28. コペンハーゲン
デンマークの劇作家,歴史家。コペンハーゲン大学を中退して大陸を放浪,次いでイギリスに渡ってオックスフォード大学で史学を学び,帰国後『ヨーロッパ列強史序説』 Introduction til de fornemste Europæiske Rigers Historie (1711) で認められて王から奨学金を得た。 1714~16年ヨーロッパの諸都市を大部分徒歩で巡歴,帰国後の 17年コペンハーゲン大学教授となった。同僚の学者を風刺した詩が有名になったことから文学を志し,『山のイェッペ』 Jeppe på Bjergetなど多くの喜劇を書いた。 30年敬神家の新王が立って劇場を閉鎖すると,再び学問の世界に戻り,『デンマーク=ノルウェー史』 Dannemarks og Norges Beskrivelse (32~35) ,『教会史』 Almindelig Kirkehistorie (38) ,またラテン語の風刺小説『ニールス・クリムの地下旅行』 Nicolai Klimii iter subterraneum (41) などを書き,のち劇場が再開されると再び劇作に戻った。

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百科事典マイペディア 「ホルベア」の意味・わかりやすい解説

ホルベア

デンマークの劇作家。ノルウェーのベルゲンに生まれ,オックスフォードに学んだ歴史家で,《ヨーロッパ列強史序論》《デンマーク史》などの著作があるが,1722年コペンハーゲンに劇場が創設されたときに依頼されて劇作に入り続々と喜劇を発表,〈北欧のモリエール〉と呼ばれる。《産室》《山のエッペ》などは今でも上演される。ラテン語の小説《ニルス・クリムの地下旅行》は《ガリバー旅行記》の向こうを張った作。

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世界大百科事典(旧版)内のホルベアの言及

【デンマーク】より

… 18世紀はルイ14世のフランス文化が全ヨーロッパで国際的威信を享受し,デンマークもその啓蒙主義と古典主義から強く影響される。この時代の申し子,〈デンマーク文学の父〉と呼ばれるノルウェー人ホルベアは広く文学,歴史,哲学の分野で超人的な著作活動を行い,モリエールとユウェナリスに多くを負う人間・社会風刺の喜劇多数と,哲学的な書簡体エッセーをまとめた。18世紀中期までのデンマーク文学は概してフランス的,次いでイギリス的色彩を帯びていったと言えよう。…

【ノルウェー】より

…14世紀半ばの黒死病流行により人口の3分の2を失ったノルウェーは,その後400年間デンマークに従属して,口承民話や歌謡以外に自らの文化を失うが,国を出たすぐれた芸術家の活躍はその間も続く。北欧啓蒙期最大の文学者ホルベアはコペンハーゲン大学の教授となるが,ノルウェーのベルゲンの生れで,〈北欧のモリエール〉と称される彼の喜劇もまた,デンマークとノルウェーの両文学史で扱われる。1772年にコペンハーゲンで結成された〈ノルウェー協会〉による作家たち,ウェッセルJohan Herman Wessel(1742‐85)やブルンJohan Nordahl Brun(1745‐1816)らもまた同じである。…

※「ホルベア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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