ホワイト(読み)ほわいと(英語表記)Minor White

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ホワイト(Minor White)
ほわいと
Minor White
(1908―1976)

アメリカの写真家。ミネソタ州ミネアポリスに生まれる。アマチュア写真家であった祖父の傍(かたわ)らで、幼い時から写真に親しんだ。ミネソタ大学で植物学を専攻し、植物の顕微鏡写真を撮影する。顕微鏡のなかに広がる、微細な自然現象の神秘的な姿は、後の写真表現につながっている。大学卒業後しばらくの間詩を書いており、やがて独学で写真制作を始めた。
 1942~1945年第二次世界大戦に従軍。その間にカトリックに改宗、後に神秘論者G・I・グルジェフGeorges Ivanovitch Gurdjieff(1877―1949)を信奉する一方、禅の思想に没頭するなど、精神的な希求から独自の写真哲学を発展させた。戦後コロンビア大学で美学・美術史を学び、1946年カリフォルニア美術学校で教鞭をとる。
 1946年はホワイトにとって重要な年であり、決定的な影響を及ぼす人物に出会う。アンセル・アダムズからは、現像プロセスを極度にコントロールすることで、表現意図を強調する技術を学び、エドワード・ウェストンからは、自然に内在する力を直感力で引き出して映していく美学を学ぶ。また、カリフォルニア州のポイント・ロボスというウェストンの写真における聖地で、岩の断面を抽象的に撮りはじめ、重要な転機を迎えた。アルフレッド・スティーグリッツは、ホワイトを従軍経験による疲弊しきった精神状態から立ち直らせ、写真は精神的な支柱となりうるという確信を与えた。こうしてアメリカの近代写真を築いた先達に多大な影響を受けながら、ホワイトは次代の写真家として、自己の内面をみつめ、その心象を写真に表現していくという課題を担う一人となっていった。1947年からは代表作「シークエンス(連作)」を撮りはじめる。
 写真史家ニューホール夫妻Beaumont Newhall(1908―1993)、Nancy Newhall(1908―1974)との出会いは、ホワイトに別の道を開いた。MoMA(ニューヨーク近代美術館)、後にジョージ・イーストマン・ハウス国際写真博物館(ニューヨーク州ロチェスター)で彼らの仕事を手伝い、写真を研究者としての視点からみることを学んだのである。彼らとともに写真雑誌の構想を練り、1952年『アパチャー』Aperture誌を創刊し、スティーグリッツが主宰した『カメラ・ワーク』Camera Work誌以来の重要な写真批評の場をつくった。この季刊雑誌は、編集を担当したホワイトの感性が主調をなし、次第に彼の個人誌的な様相を呈した。同誌では、ホワイトのアフォリズム、ニューホール夫妻の写真史観、マヌエル・アルバレス・ブラボManuel Alvarez Bravo(1902―2002)、ウィン・バロックWynn Bullock(1902―1975)、ポール・カポニグロPaul Caponigro(1932― )、アーロン・シスキン、フレデリック・ゾマーFrederick Sommer(1905―1999)ら新世代の写真家の作品群が披露(ひろう)され、『カメラ・ワーク』の理想を引き受けながら、1959年特集号「カメラ・ワークを超えて」以降ホワイト流の神秘的信念に基づく「写真道」が追求された。ホワイトは1975年まで同誌の編集・発行を務め、写真界に大きな影響力を及ぼした。多くの大学で教鞭をとり、写真家であると同時に、編集者、教育者としても活躍した。
 1969年自伝的写真集『鏡、メッセージ、マニフェステーション』Mirrors Messages Manifestationsを出版。岩の断面や氷の結晶といった荒々しい自然の断片と、光と影が鮮明に映し出された心象風景を、自作の詩とともに「シークエンス(連作)」として綴(つづ)り、入念な編集による記念碑的な写真集となった。地層の複雑に入り組んだ形態とマチエールを、偏執的なまでにつぶさに写し出した写真は、強烈なインパクトをもって観る者に迫る。
 MoMAの写真部長ジョン・シャーカフスキーは、ホワイトへのオマージュとして『鏡、メッセージ、マニフェステーション』から名をとった「鏡と窓――1960年以降のアメリカ写真」展(1978)を企画し、アメリカの1950年代の写真における重要な出来事として、「ファミリー・オブ・マン」展の組織、ロバート・フランクの『アメリカ人』The Americans発刊とともに、『アパチャー』誌創刊を挙げている。この事実は、ホワイトの影響力の大きさをまさに物語っている。[蔦谷典子]
Mirrors Messages Manifestations (1969, Aperture, New York) ▽James Baker Hall Minor White; Rites & Passages (1978, Aperture, New York) ▽Peter Bunnel, Jill Guthrie Minor White; The Eye That Shapes (1989, The Trustees of Princeton University, New Jersey)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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