ボルボックス(英語表記)Volvox

精選版 日本国語大辞典 「ボルボックス」の意味・読み・例文・類語

ボルボックス

〘名〙 (volvox) 緑藻植物ボルボックス科の淡水藻。動物分類上は原生動物の一種として扱われる。春先から初夏にかけて各地の水田・池沼・湖水に発生。径一ミリメートル内外の球形の群体をなし、浅緑色をし、自力でゆっくり泳ぎ回るので肉眼でも見ることができる。一つ一つの細胞は楕円形で、二本の鞭毛をもち、球の表面に数千個が一層をなして並ぶ。隣同士の細胞は原形質で連絡している。和名おおひげまわり。

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デジタル大辞泉 「ボルボックス」の意味・読み・例文・類語

ボルボックス(〈ラテン〉Volvox)

植物性鞭毛べんもう虫類の原生動物。または、ボルボックス科の緑藻として分類される。淡水産の代表的なプランクトンで、2本の鞭毛をもつ単細胞が多数集まり、球状中空の群体をつくる。おおひげまわり。

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改訂新版 世界大百科事典 「ボルボックス」の意味・わかりやすい解説

ボルボックス
Volvox

2本の等長の鞭毛をもった数千個の細胞が寒天球の表層壁に並んで,直径0.2~1.3mmの中空の群体をつくる遊泳性の淡水産緑藻。緑藻綱ボルボックス目ボルボックス科に属するが,運動性があるため動物としても扱われ,この場合は原生動物門有色鞭毛虫綱藻鞭毛虫目として分類される。群体は前後の極性があり,中央部から後部にかけての細胞は無性的に分化して娘群体となり増殖することができる。有性生殖の場合は細胞が造精器と生卵器に分化し,泳ぎ出た精子が生卵器内に入って受精が行われる。受精卵は休眠後に減数分裂し,後に群体に発育する遊走子をつくる。水たまり,水田,池沼などに生育し,日本では5種が知られ,ふつうに見られるのは次の2種である。オオヒゲマワリV.globator L.は群体は直径0.4~0.8mmの大きさで,群体の外側からみると多角形にみえる細胞が8000~1万7000個集まって構成される。ボルボックス・アウレウスV.aureus Ehrenb.は群体は直径0.2~0.8mmの大きさで,外側からみると円形の細胞が1000~3000個集まって構成される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルボックス」の意味・わかりやすい解説

ボルボックス
Volvox

緑藻類オオヒゲマワリ目オオヒゲマワリ科の藻類。オオヒゲマワリともいう。休耕水田など日当りよく水の動きの激しくない場所に発生する。 10種以上知られており,全世界に分布する。藻体は直径 0.5mm,大きなものでも 1mmほどの球状体で,肉眼ではわずか緑色の粉のようにみえる。球体は薄い膜から成りもろく,力を加えるとこわれやすい。その中に微小の細胞が多数 (ときに 1000以上になる) 並んで群体を形成している。この細胞はそれぞれ2鞭毛,1核,1眼点を有し,各細胞は互いに細い原形質糸で連絡している。球状の藻体は細胞の分裂による増加とともに大きくなるが一定の大きさに達すると,球面はいくつかの細胞とともに球体内部の腔内に陥入して,新しい球体をつくる。このような腔内の若い藻体を娘体というが,一つの球体内に数個も数えられることがあり,それぞれ腔内で生長し,最終的には親の体を破って外に出て新個体となる。また特殊な細胞が同様に腔内に陥入し,3~9個の卵子を生じる生卵器,または 16~32個の紡錘形で2頂毛を有する精子を生じる造精器となることが知られている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルボックス」の意味・わかりやすい解説

ボルボックス
ぼるぼっくす
[学] Volvox

緑藻植物、緑藻類の一属の総称。淡水産の藻類で、クラミドモナス型の2本の鞭毛(べんもう)をもつ細胞が多数集まって、美しい球形の群体をつくるのでよく知られる。また、教材としてもたびたび利用される。オオヒゲマワリの和名もあるが、ボルボックスのほうが一般的である。日本では、約500の細胞からなるボルボックス・オーレウスV. aureus Ehr.、約1万の細胞からなる大形のボルボックス・グロバータV. globator L.など数種が知られているが、どこにでも出現するわけではなく、毎年発生する場所が限られているようである。なお、クラミドモナス―クワノミモ―ユードリナ―ボルボックスという一連の系列は、藻類の進化を証明する好例とされている。

[小林 弘]

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百科事典マイペディア 「ボルボックス」の意味・わかりやすい解説

ボルボックス

オオヒゲマワリとも。原生動物植物性鞭毛(べんもう)虫綱。200〜2万個の個体がゼラチン質の膜の表層に並び,径0.2〜1.3mmの群体をつくる。個々の個体は互いにかなり太い原形質糸で連絡しており,1個の葉緑体と2本の等長の鞭毛,数個の収縮胞と眼点がある。池や水田などにみられる大型プランクトンの一種。また植物として緑藻綱ボルボックス目ボルボックス科ともされる。

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