翻訳|poison pill
敵対的買収に対する防衛策の一つで、「毒薬条項」と訳される。買収コストを高くすることで買収を断念させようという手段の一つである。
具体的には、あらかじめ買収者以外の株主(シェアホルダーshareholder)に対して、有利な条件で株式を取得できるような権利(ライツrights)を付与しておくことから、シェアホルダー・ライツ・プランshareholder rights planあるいは単にライツ・プランrights planともよばれる。この種のライツは、買収者が発行済株式数の一定量を上回って買占めが進んだ段階で発動するように取り決められる。ポイズンピルが発動されると、発行済株式数が増加するため、買収側は当初に予定した金額以上の買占めコストがかかることとなり、買収意欲をそがれるという効果がある。買収者にとっては毒薬となることからこのようによばれる。ポイズンピルが実際に発動されるのは買収が深刻化した有事であるが、事前的に買収に備える予防措置であるから、平時導入型の買収防衛策といえる。
1980年代中葉からアメリカで普及した手法であるが、日本においては2005年(平成17)の株式会社ライブドアによる、ラジオ局ニッポン放送買収事件を契機に注目を集めた。一般にライツは新株予約権の形で表象され、信託銀行などに発行したものを、有事に際して株主に割り当てるような仕組みが考えられている。有効な買収防衛策ではあるが、既存株主にとっては株式価値が希薄化したり、経営者が保身を目的に乱用したりする負の側面も懸念されることから、導入に際しては株主総会での承認などの手続が求められている。
[高橋 元]
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(高橋宏幸 中央大学教授 / 2008年)
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