対象企業の取締役会の同意を得ずに仕掛ける買収のこと。対象先が上場している場合、株式公開買い付け(TOB)により、経営権を支配できる議決権の取得を目指すのが一般的。国内では、買収する側の企業イメージ悪化を理由に手控えられてきたが、金融市場では買収先の企業価値向上策の一環として近年は抵抗感が薄まっている。
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企業買収に際して、対象企業の現経営者や従業員等からの同意を得ることなく行われる形態。企業の経営資源が十分に活用されていないようなケースが買収のターゲットになりやすく、その場合は株価も低位に放置されているはずだから、当該業務分野に関心をもつ買収企業にとっては、新たに同一の事業を立ち上げるよりも、株式取得を通じて支配権を確立するほうがコスト面で魅力的である。そこで、買収対象企業が上場会社の場合、買収企業は買収の意思を明らかにしたうえで、株式公開買付(TOB)により買収を進めることが一般的である。その際の株式買付価格は、株主に売却を促すために、市場株価よりも高い値段を提示することとなる。
一方、買収対象企業の経営者や従業員は、買収後のポストや雇用条件等への不安から反対するが、それらの動機に自己保身的要素が強いようであれば、買収の成否にかかわらず経営陣の交代は不可避である。つまり、買収に関する攻防を通じて、買収対象企業の内在価値や問題点が浮き彫りとなり、その結果として経営効率の向上が促進されるメリットが指摘される。既存株主は、敵対的買収を通じて企業価値が高まると判断すれば積極的にTOBに応じようが、買収によって株主価値が毀損(きそん)される懸念があれば、むしろ買収を失敗させた後の経済的利益を期待して現経営陣を支持することもあり得る。
敵対的買収は、1980年代のアメリカで盛んに行われた。しかし、買収に成功しても、従業員をはじめ多くの利害関係者から反発を招き、その後の経営に支障をきたす例が少なくなく、今日では買収対象企業との話し合いを重視して円満に解決を図る友好的買収が主流になっている。とくに、日本においては、歴史的な企業風土となじまないうえ、2005年(平成17)の株式会社ライブドアによる、ラジオ局ニッポン放送株を巡る買収劇など、敵対的買収のイメージは悪いが、その行為自体に善悪の含意はない。
[高橋 元]
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