ポチョムキン号の反乱(読み)ポチョムキンごうのはんらん(英語表記)Vosstanie na Bronenosetse Potëmkine

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポチョムキン号の反乱」の意味・わかりやすい解説

ポチョムキン号の反乱
ポチョムキンごうのはんらん
Vosstanie na Bronenosetse Potëmkine

ロシア第1次革命期(→ロシア革命)の 1905年,ロシア海軍で発生した反乱日本海海戦 1ヵ月後の 1905年6月14~24日,ロシア黒海艦隊の新鋭戦艦『ポチョムキン』(乗員約 750人)において腐肉のスープに抗議したボルシェビキ水兵バクレンチュークを将校射殺したため,水兵が一斉蜂起し,その将校と艦長を射殺。ほかの将校を監禁し,水兵マトゥシェンコを長とする委員会が艦の指揮権を握った。艦は赤旗を掲げてゼネラル・ストライキの行なわれていたオデッサオデーサ)に入港。デモを支援し,ほかの水雷艇,監視船,戦艦『ポベドノスツェフ』を味方につけた。しかし反乱側に有能な指導者と明確な方針がなかったため動揺がつのり,ついに『ポベドノスツェフ』は官憲に降伏し,『ポチョムキン』は燃料,食料が欠乏してルーマニアコンスタンツァ寄港。この反乱の報に接した亡命中のウラジーミル・レーニンは,V.ユージンをオデーサに急行させたが時すでに遅く,反乱は失敗に終わった。ルーマニアはロシア側からの反乱分子引き渡し要求を拒否し,多くの水兵はルーマニアや南北アメリカに逃れたが,ロシアに帰った数十人は死刑あるいは重労働の刑に処された。これはロシアの軍隊における最初の集団反乱で,のちにセルゲイ・エイゼンシュテインにより映画化された(→戦艦ポチョムキン)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポチョムキン号の反乱」の意味・わかりやすい解説

ポチョムキン号の反乱
ぽちょむきんごうのはんらん

1905年6~7月にロシア黒海艦隊の戦艦「ポチョムキン号」Потёмкин/Potyomkinで起こった水兵の反乱で、ロシアの1905年革命における最大の艦隊反乱。その背景には、旅順要塞(ようさい)陥落対馬(つしま)沖でのバルチック艦隊壊滅といった日露戦争(1904~1905)敗北のなかで、上官の退廃と横暴に対する兵士・水兵の不満の高まりがあった。反乱のきっかけは、ウジのわいた肉入りボルシチを水兵たちが拒否、将校と衝突したことにある。艦内の権力を握った水兵たちは艦隊委員会を選出し、艦をゼネストの行われているオデッサ(現、オデーサ)に入港させた。オデッサの社会民主労働党の組織は、水兵たちに上陸してゼネストに合流することを働きかけた。他方、政府は反乱鎮圧のため黒海艦隊の二分艦隊を派遣したが、同艦隊の水兵はポチョムキン号攻撃を拒否、反乱を恐れた分艦隊は引き揚げた。ポチョムキン号はその後ルーマニアのコンスタンツァで同政府に引き渡され、水兵たちの多くは亡命した。なおこの反乱は、ソ連のエイゼンシュテインが1925年に映画化(『戦艦ポチョムキン』)したことでも知られている。

[藤本和貴夫]

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百科事典マイペディア 「ポチョムキン号の反乱」の意味・わかりやすい解説

ポチョムキン号の反乱【ポチョムキンごうのはんらん】

1905年の第1次ロシア革命における最も重要な事件の一つ。黒海艦隊所属の戦艦ポチョムキンPotyomkin号の水兵が革命派(メンシェビキ)の指導で起こした反乱。反乱は食糧問題から自然発生的に起こり,反乱後オデッサに入港したが他艦との合流に失敗して孤立のまま終わった。しかし軍の最初の大衆的行動としてツァーリズムに大きな衝撃を与えた。この事件をテーマとした映画《戦艦ポチョムキン》がある。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ポチョムキン号の反乱」の解説

ポチョムキン号の反乱
ポチョムキンごうのはんらん
Potëmkinskoe Vosstanie

1905年6月27日,ロシア黒海艦隊の戦艦ポチョムキン号の水兵が起こした反乱
血の日曜日事件に始まる革命運動の高揚に刺激されて起こったもの。オデッサの労働者のストライキと呼応したが,結局孤立し,水兵の多くはルーマニアのほか,カナダ・アメリカ・ブラジルなどに亡命した。ロシアに帰ったものはわずかで,死刑・懲役に処せられた。

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