西太平洋,ミクロネシアのカロリン諸島東部の火山島。ミクロネシア連邦に属する。現地ではポーンペイ島Pohnpei Islandと呼ぶ。人口3万4500(2000)。面積は334.19km2で,カロリン諸島では最大,ミクロネシア全域ではグアム島に次ぐ。島は台形状に山稜が海岸線に迫り,全島が熱帯雨林に覆われている。この雨林は緑の切れ目を作ることなく,内海に繁茂するマングローブ林に連続している。この豊かな緑は,年平均降水量4870mmという世界でも有数の多雨気候によるところが大きい。島の外側は発達した堡礁が囲み,内海は広くかつ穏やかである。
かつて島には,半ば伝説的なシャウ・テレウルSau Deleur王朝が栄え,島の南東部にナン・マドールNan Madol(現地の発音ではナン・マトル)の都を営んでいた。今日に残るその遺構は,幅0.5km,長さ1.4km,面積70haの浅瀬上に築いた92の人工島から成る,オセアニア最大の海上都市遺跡で,中でも玄武岩の柱状石を組み上げた,高さ8mに及ぶ二重の城壁に囲まれた城塞ナン・タウワシNan Dauwasは著名である。シャウ・テレウル王朝はコシャエ島から遠征して来たイショケレケルによって倒されたと伝えられ,以後ポナペは地方首長の割拠する時代を迎える。1830年代ころより欧米の船が頻繁に来航するようになった当時,島は五つの首長国に分裂していた。このころの島には,至高神アニーラップを中心とする多神教,首長制の下での階層社会,発達した敬語と礼儀作法などの生活儀礼,母系氏族・系族(リネージ)を軸とした家族・親族制度,ヤムイモ,パンノキ,バナナ,タロイモなどを主作物とする,いも類栽培と総称される形態の農耕,および内海での漁労を加えた生業経済などを特徴とする伝統的文化が行われていた。
アメリカの捕鯨船の寄港や,1852年に組織的に開始されたキリスト教の布教といった欧米人との接触に引き続いて,86年に島は他のカロリン諸島の島とともにスペインの領有に帰し,それ以降ドイツ(1899-1914),日本(1914-45),アメリカ(1945-86)の統治に服した。アメリカによる統治は公式には国連信託統治で,周囲のモキル,ピンガラップ,ヌクオロ,ガチック,カピンガマランギなどの離島とともにポナペ州を形成した。ヤップ,トラック,コシャエとともに1979年ミクロネシア連邦を結成し,ポナペ島の中心地コロニアKoloniaに連邦の主都を置いた。86年に国連信託統治を脱し,アメリカとの自由連合協定のもとにミクロネシア連邦は政治的自立を達成した。
執筆者:清水 昭俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
太平洋西部、ミクロネシア、カロリン諸島東部の島。旧名アセンションAscension島、正称ポーンペイPohnpei島。同諸島中最大の島で、東西37.6キロメートル、南北19キロメートル、面積334平方キロメートル。火山島で、最高峰はトトロムTotolom峰(791メートル)。この島を中心にしてミクロネシア連邦のポーンペイ行政区(人口4万7000、2001推計)がある。中心集落は北岸のコロニアKoloniaで、通常これをポナペ町という。ドイツ領時代に開かれたヤシ栽培によるコプラ生産、日本統治時代に技術指導されたかつお節製造と製糖工業が主産業である。北西部にはミクロネシア連邦の首都パリキールがある。
[大島襄二]
島民の言語であるポナペ語は、オーストロネシア語族の一員で、中核ミクロネシア語に属する。島民の主要な作物はパンノキとヤムイモであるが、ヤムイモは儀礼的祭宴におもに使用される。位階、称号、初物献上、表敬行動(敬語、礼儀)を軸とする首長制政治組織が発達している。島は五つの地区に分かれ、それぞれにナンマルキとナニケンという最高位の称号があり、伝統的に二つの首長氏族により保持されていた。この二つの系統の下にそれぞれ12の位付けされた主要な称号があり、それは家系あるいは土地管理、儀礼的祭宴における貢献度に応じて、各地域集団の長に与えられた。
[牛島 巖]
「ポンペイ島」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…オセアニア最大の巨石遺跡。西太平洋,ミクロネシアのポナペ島に隣接するテムウェン島沿岸のサンゴ礁上に構築された92個の人工島にある。整然と配置された人工島は水路によって結ばれている。…
※「ポナペ島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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