エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合によって得られるポリエステル。略称PET。イギリスのICI社,アメリカのデュポン社によって,それぞれテリレンTerylene,ダクロン(デークロン)Dacronの商品名で,繊維として初めて工業化された。日本ではテトロンTetron(帝人,東レの商品名)として知られている。おもに繊維として開発され,広く用いられてきたが,最近ではオーディオあるいはビデオフィルム,コンデンサー用フィルム,フレキシブルプリント配線用ベースなどのフィルム,ビールや炭酸飲料などの瓶,電気部品,自動車部品などの成形品としても用途が拡大しつつある。コスト・パフォーマンス(価格・性能比)が最もすぐれた高分子といわれる。
耐熱水性,耐アルカリ性などに若干の欠点はあるが,強靱(きようじん)で,剛性が高く,耐熱性にすぐれ,絶縁性などの電気特性,耐候性,耐クリープ性,耐湿性もよく,電気用途,機械用途,産業用途をはじめとし,一般日常用途にも適している。成形品として用いられる樹脂の特性は表に示すとおりである。
製造法にはエステル交換法と直接重合法がある。前者は,テレフタル酸ジメチルを原料とし,エチレングリコールとのエステル交換により,テレフタル酸ビス(ヒドロキシエチル)(BHT)をつくり,さらに減圧下に加熱し,ポリエチレンテレフタレートとする方法であり,後者はテレフタル酸とエチレングリコールから直接BHTをつくり,ポリエチレンテレフタレートとする方法である(図)。最近では直接重合法が主流になりつつある。重縮合触媒としては,酸化アンチモンがよく用いられる。高重合度ポリマーを得るためには,重合の最終段階では290~300℃,1mmHg以下の圧力で十分にかくはん(攪拌)しエチレングリコールの脱離を図る必要がある。押出成形,ブロー成形,射出成形により,フィルム,フィラメント,成形品にされるが,射出成形品とする場合にはガラス繊維で強化し,成形性を上げるために核剤などを加える必要がある。ブロー成形などで瓶をつくる場合には,前もって固相重合を行い重合度を上げておく必要がある。一般には重合度100前後である。
なお,ポリエチレンテレフタレートの射出成形性を改良した樹脂として1,4-ブタンジオール(BG)とテレフタル酸(TPA)から得られるポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)が電気部品,機械部品によく用いられるようになっている。
執筆者:森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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熱可塑性のポリエステルの代表的なもの。PET(ペット)と略称される。
[編集部]
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