本来は買物籠という意味であるが,これに方式の語が付された場合は,一定の生活を営むために必要な生活用品やサービスの量を,たとえばパン130g,牛肉100gなどのように個々に決定し,これを購入価格に換算・合計し生活費を算定する方法をさす。この方法が標記の名称で呼ばれるようになったのは,個人がマーケットで生活用品を買物籠に入れるのに似ているということからである。マーケット・バスケット方式は,生活用品やサービスの量を生活科学の知識に基づいて積み上げる理論生計費方式の部類に属しており,有名なものとしてB.S.ラウントリーの作成した貧困線がある。なお生活用品等の積上げに際し,生活に必要なすべての品目を理論的に決定し総生活費を算出する全物量方式と飲食物費のみを栄養学の知識をもとに決定し,残りの住居費や被服費などは飲食物費から推計して総生活費を算出する半物量方式の二つの方法がある。この方法は日本において第2次大戦後,学者や労働組合によって,最低生活費や賃金要求額の根拠を算定するために利用されているが,1948年から64年までの生活保護基準の算定方法に採用されたことでも知られている(ただし,1960年以前は全物量方式,61年以降半物量方式)。マーケット・バスケット方式の難点は,飲食物費以外の品目を決定する際,恣意や主観が入りやすいことなどのため算定結果が現実の生活実態と遊離するおそれがあることである。
執筆者:藤井 康
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理論生計費算出のため、消費物資やサービスを物量で表示し、それで生活内容を表す方法をいう。消費者がマーケットで買物籠(かご)に必要な生活物資を入れるのに似ていることから、この名でよばれるようになった。イギリス労働党が1923年に創案したもので、わが国でも1952年(昭和27)ごろ労働組合が賃金要求額の根拠を算定するために利用した。マーケット・バスケット方式には、生活に必要なすべての品目を理論的に決定し、一定の規準に従って総生計費を算出する全物量方式と、飲食物費のみを全物量方式と同じように算出し、これをもとにエンゲル係数から逆算して総生計費を算出する半物量方式とがある。
[小泉幸之助]
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…その算定方法には,全物量方式と一部物量方式とがある。前者はマーケット・バスケット方式とも呼ばれているが,標準的世帯が一定の標準的生活水準を維持していくのに必要な飲食費,衣料費,住居費およびその他の生活必要費用を算出し,これをもとにして生計費を算定する方式である。後者はエンゲル方式ともいわれ,基本的にはさきの飲食費をエンゲル係数(勤労世帯の家計支出のうちで飲食費の占める比率を百分比で表したもの)で除して生計費を求める方式である。…
※「マーケットバスケット方式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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