ミクロコスモス(英語表記)microcosmus[ラテン]

デジタル大辞泉 「ミクロコスモス」の意味・読み・例文・類語

ミクロコスモス(〈ドイツ〉Mikrokosmos)

小宇宙。→マクロコスモス
[補説]作品名別項。→ミクロコスモス

ミクロコスモス【〈ハンガリー〉Mikrokozmosz】[曲名]

バルトークのピアノ曲集。全6巻、153曲からなる。1926年から1939年にかけて作曲。はじめは平易な曲が多く、巻が進むにしたがって難度が増す。

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精選版 日本国語大辞典 「ミクロコスモス」の意味・読み・例文・類語

ミクロ‐コスモス

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Mikrokosmos ) 小宇宙。小世界。特に、大宇宙(マクロコスモス)に対応するものとしての人間。人間が宇宙のすべての構成要素に対応する諸部分を持つという考え方。ルネサンス期世界観の典型。⇔マクロコスモス
    1. [初出の実例]「一つの小宇宙(ミクロコスモス)を形づくったら」(出典死霊三章(1946‐48)〈埴谷雄高〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「ミクロコスモス」の意味・わかりやすい解説

ミクロコスモス
microcosmus[ラテン]

マクロコスモスmacrocosmusの対概念で,大きな世界(大宇宙)に対応する小さな世界(小宇宙),すなわち人間を指す。人間と宇宙とを対比させて考えるこの思想型は,すでに初期古典ギリシア時代のデモクリトスにみられるが,とくにプラトン学派の人々に好んで用いられ,《ティマイオス》的・生命的宇宙観と結びつけて語られた。この伝統はボエティウス新プラトン主義を介して西欧に伝えられ,中世プラトン主義の拠点となったシャルトル学派ベルナルドゥス・シルウェストリスらによって代弁された。さらにルネサンス期になると,フィレンツェ・プラトン主義者グループのフィチーノらによってヘルメス思想と融合され,ルネサンス期世界観の典型となった。たとえばレオナルド・ダ・ビンチに明らかなように,ミクロコスモスとマクロコスモスとの間には厳密な類比関係があり,両者はともに機械的ではなくて生命的な存在だとされる。そこからミクロコスモスたる人間の尊厳性と同時にマクロコスモスたる世界の尊厳性とが同様に提唱され,とりわけ人間の尊重思想と合して,個人は宇宙全体に匹敵するという個人主義思想が強調された。他方,個体と宇宙とが現象面でも照応するという考え方は,占星術と結びついて,医学,人相学骨相学などの原理ともなった。その後近代になってミクロコスモスという用語は,しだいに特殊的意義を失って,一般的意味で使用されるようになり,今日では,ミクロの世界といえば,肉眼では不可視な極微の世界を,逆に,マクロの世界といえば,巨視的な,宇宙のごとき巨大世界を指すようになった。
ヘルメス思想
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ミクロコスモス
Mikrokosmos

バルトークの作曲した子どものためのピアノ練習曲集。息子ペーテルのピアノ練習のために1926年に作曲を始め,第1巻と第2巻を息子に捧呈し,39年に全6巻,153曲のピアノ曲集(Sz(セレーシュSzőllősy Andrásによる作品整理番号)107)として完成した。タイトルの〈小宇宙〉が示しているように,この曲集は,ピアノ演奏の初歩から高度な技巧までのすべてを含み,とくに近代・現代の音感覚を効果的に生かしている。ハンガリーの民謡に基づく旋法,自由なリズム,長調・短調の枠にとらわれない拡大された調性などが用いられている。113番(《ブルガリアのリズム第1番》),69番(《和音の練習》),135番(《無窮動》),123番(《スタッカートとレガート》),127番(《新しいハンガリー民謡》),145番(《半音階的インベンション》),146番(《オスティナート》)は,バルトーク自身によって《ミクロコスモスより七つの小曲》(Sz108)として2台のピアノのために編曲されている。
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デジタル大辞泉プラス 「ミクロコスモス」の解説

ミクロコスモス〔クラシック〕

ハンガリーの作曲家バルトーク・ベラのピアノ曲集(1926-1939)。原題《Mikrokosmos》。全6巻、153曲の小品からなる。ピアノ演奏の教材として作曲された。

ミクロコスモス〔歌集〕

北小路功光(いさみつ)の歌集。1964年、第3回文藝賞佳作受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のミクロコスモスの言及

【宇宙】より

…ウーシアはイデアたる〈真実有〉であり,コーラは質料,素材に相当する〈空間〉である。もう一つプラトンに特徴的な発想は,こうした宇宙を大宇宙(マクロコスモスmacrocosm)としたときに,人間はそれと対比をもつ小宇宙(ミクロコスモスmicrocosm)として把握されている点であって,そのことはまたプラトンにあっては,宇宙は一つの有機体として生き生きと活動する概念であったともいえる(例えば《ファイドロス》におけるプラトンは,宇宙を〈戦車〉にたとえ,それを御するものとしてゼウスを擬している)。 こうした古代的宇宙観は,唯一の世界創造者としての創造主概念を強力にもつユダヤ・キリスト教の展開とともに,限定付きで受けとられた。…

【コンピューターゲーム】より

…1990年代に急速に研究が進み,いまやコンピューター詰将棋の実力はトップクラスのプロ棋士の実力をはるかにしのぐまでになっている。十数手までは一瞬のうちに解き,現在最長の詰将棋であるミクロコスモス(1525手詰め)も数時間で解くことができる。研究の焦点はコンピューターによる詰将棋の創作へ移った。…

【賤民】より

…ヨーロッパにおいては12~13世紀以降に村落共同体と都市共同体が成立するが,それ以前の氏族団体においては家が人的結合の基本的な単位をなしていた。この段階においてはミクロコスモスとしての家とマクロコスモスとしての世界が対峙していたのであって,司祭や呪術師,国王ですら前述の仕事にたずさわった人々と同じく二つの世界の狭間に生きていたのであった。しかるに12~13世紀以降共同体が成立するとともに人間がみずからなんとか制御しうるミクロコスモスの領域が拡大され,キリスト教信仰の普及とあいまって,かつての多元的な世界像に代わって一元的な世界像が成立していった。…

【バルトーク】より

…コダイとの共著)出版の準備が始まる一方,作品も,《弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽》(1936),《2台のピアノと打楽器のためのソナタ》(1937)など,新しい構成原理として黄金分割を採用した最も独創的でしかも円熟した作品が相次いで誕生する。また,教育的内容をもったピアノ曲集《ミクロコスモス》(1939)が完成するのもこの時期である。《弦楽四重奏曲第6番》(1939)をヨーロッパ時代の最後の作品として,40年,バルトークは荒れ狂うファシズムの嵐を避けてアメリカに亡命する。…

※「ミクロコスモス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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