ミツバ(読み)みつば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミツバ」の意味・わかりやすい解説

ミツバ
みつば / 三葉
[学] Cryptotaenia japonica Hassk.

セリ科(APG分類:セリ科)の多年草。北海道から九州まで、また中国や朝鮮半島、樺太(からふと)(サハリン)などにも自生する。北アメリカのものと同種とする説もある。林地の縁の半日陰に生え、江戸時代中期から野菜として栽培されてきた。春と秋には長い葉柄の先に3小葉がついた根生葉を束生し、夏にとう立ちして50センチメートルほどになり、茎頂部に白い小花をつける。晩夏に種子が熟す。全草に香気が強く、味は淡泊で、和風料理用に周年需要があるため、いろいろな栽培法がくふうされ、それに応じて糸(いと)ミツバ、根(ね)ミツバ、切りミツバなどいろいろな呼び名がつけられている。

 糸ミツバは春から秋まで随時播種(はしゅ)し、15~20センチメートルになったときに収穫したものである。普通は半日陰地に密播し、やや軟化させ、細く柔らかく育てて利用する。

 根ミツバは春に播種して根株を十分育て、冬に葉が枯れたあとに土寄せし、翌春に葉先が地上に出たときに掘って、根をつけたまま洗って利用するもの。

 切りミツバは促成軟化栽培したもので、畑で育てた根株を初冬から掘り取り、土をつけないで温床に伏せ込み、暗黒・多湿条件で育てる。その後葉身だけが緑色になるように光を当て、葉柄が30センチメートルほどに伸びたときに地際(じぎわ)から切って出荷する。品種には茎や葉柄が緑色の青茎(あおぐき)と、やや赤紫色の赤茎(あかぐき)とがある。

[星川清親 2021年12月14日]

調理

葉柄や葉身、若い茎を汁の実、酢の物、ひたし物、てんぷらにする。また、根は甘味をつけて煮物としたり、油炒(いた)めにする。和風料理の菜として一年中供給されるが、春に出回る根ミツバが、もっとも香気が優れている。根ミツバ以外はさっと熱湯を通す程度とする。切りミツバなどは生(なま)のままでも食べられる。根ミツバはビタミンAやCが多く、カロチンは100グラム中3200マイクログラム含まれる。もやしの切りミツバは根ミツバ、糸ミツバより栄養価は低い。山菜のミツバは春のほか夏、秋にも利用できる。煮食のほか飯に炊き込み、また塩漬けにして保存する。

[星川清親 2021年12月14日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ミツバ」の意味・わかりやすい解説

ミツバ (三葉)
Japanese hornwort
Cryptotaenia japonica Hassk.

葉を食用とするセリ科の多年草。南サハリンから日本全域,朝鮮半島,中国,台湾に分布し,ごく近縁の種C.canadensis DC.が北アメリカに分布している。両者は同一種とされることもある。葉は根生し,3小葉からなり,夏30~50cmの茎を立てて複散形花序に小さな白花をつける。果実は2分果からなり長楕円形。山間のやや湿った所に多い。全草に強い香りがあり,日本では古くから野生のミツバを野菜として利用しているが,栽培は江戸時代に始まった。品種は関東系と関西系に分化しているにすぎない。軟化栽培には,根株を養成して溝や穴ぐらで軟化し,葉柄を切って出荷する切りミツバや,萌芽した根株に土寄せして軟化し,根をつけたまま出荷する根ミツバがある。普通の青ミツバ(糸ミツバ)には,秋まきビニル被覆栽培,トンネル利用の冬まき栽培,露地春まき栽培,寒冷紗(かんれいしや)利用の夏まき栽培などの作型があり,周年出荷される。さらに1970年ごろから始められた水耕プラント利用による栽培は,年間5~6作を行って周年出荷している。日本で育成された特産野菜の一つで,特有の香気を利用して,椀だね,おひたし,卵とじ,てんぷらにして食べる。ミツバは中国でも利用されているが,日本のようなていねいな栽培はされていない。またインドネシアにも導入されたが広まっていない。
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食の医学館 「ミツバ」の解説

ミツバ

《栄養と働き&調理のポイント》


 セリ科の多年草で、香り豊かな緑黄色野菜です。促成栽培された「切りミツバ」、水栽培で育て葉柄が10~15cmになったら収穫する「糸ミツバ」、畑で栽培して根がついたまま店頭にならぶ「根ミツバ」の3種類があります。
○栄養成分としての働き
 ともにカリウムカルシウム、鉄といったミネラル類、ビタミン類が豊富です。
 とくに根ミツバには鉄、ビタミンB1、Cが多く、それぞれ100g中8mg、13mg、22mgを含んでいます。これらの栄養素は、貧血や疲労回復、肌荒れなどに有効に働きます。
 糸ミツバはカロテンが100g中3200μgと3種のなかでもっとも豊富に含みます。カロテンは体内でビタミンAにかわり、活性酸素を抑える作用があります。
 共通して多いカリウムは体内のナトリウムを排出する働きをし、高血圧予防に効果的。塩分の多いものを食べたときなどは、積極的にとりたい食品です。
 また、独特の香り成分が食欲を増進し、胃もたれを解消する作用もあります。神経の興奮を鎮め、イライラを解消する働きもあります。
 ニンジンやキャベツ、トマト、リンゴなどといっしょに青汁にして飲むと胃弱体質の改善に役立ちます。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「ミツバ」の解説

ミツバ

正式社名「株式会社ミツバ」。英文社名「MITSUBA Corporation」。電気機器製造業。昭和21年(1946)「株式会社三ツ葉電機製作所」設立。平成8年(1996)現在の社名に変更。本社は群馬県桐生市広沢町。自動車用電装品メーカー。ワイパーモーター・スターターモーターなどを製造。ホンダ・日産向け中心。東京証券取引所第1部上場。証券コード7280。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミツバ」の意味・わかりやすい解説

ミツバ
MITSUBA Corporation

自動車用電装品メーカー。1946年三ツ葉電機製作所として設立。自転車用発電ランプの製造から始まり,四輪向け電装品総合メーカーに発展した。1987年アメリカ合衆国,ウオルブローとの合弁会社 CMEを設立。海外生産も軌道に乗り業務拡大。1996年現社名に変更。2007年自動車電機工業を合併。本田技研工業向けが多い。

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百科事典マイペディア 「ミツバ」の意味・わかりやすい解説

ミツバ

日本全土,東アジアに分布し,山地の木陰などにはえるセリ科の多年草。全草に芳香があり,古くから食用とされてきたが,野菜としての栽培は江戸時代に始まる。高さ30〜60cmで,葉はやわらかく,鋸歯(きょし)のあるとがった卵形の3小葉からなり,互生する。夏,白色の小花からなる複散形花序をつける。ふつう軟化栽培した茎葉を椀だね,浸しもの,卵とじなどにする。

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栄養・生化学辞典 「ミツバ」の解説

ミツバ

 [Cryptotaenia japonica].セリ目セリ科ミツバ属の多年草.葉,茎全体を食用にする.

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