収穫物の品質を高める目的で,野菜を暗黒下または弱光下で生育させて,黄化,徒長させる栽培方法。軟白栽培ともいう。軟化によってできた野菜は〈もやし〉と呼ばれることがあり,普通に光をあてたものに比べると,組織の分化が不十分で機械組織も発達していないので,軟らかく,もろい。また,葉緑素ができないので黄白色または白色になり,種類によっては特有の風味がでてくる。キャベツやハクサイのように結球することによって光が遮られ自然に軟化が起こる場合もあるが,普通は軟化させるために,畑で根ぎわに土寄せしたり,萌芽前の根株の上に盛土したりして光を遮るか,根株や種子を人工的な暗所で萌芽させる。人工的な暗所で軟化される野菜には,前年畑で養成した根株や地下茎から萌芽してきた若芽を軟化するウド,ミツバ,ニラ,ボウフウ,サトイモ,ショウガ,ミョウガなどと,種子からの芽生えを軟化するダイズ,リョクトウがある。また,畑で土寄せや盛土などを行って軟化される野菜には,根深ネギ,ワケギ,アスパラガス,ウド,リーキなどがある。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
野菜類を遮光して育てると葉緑素の形成が悪く黄白化し、軟弱に育つ。これを軟化栽培という。軟化栽培は欧米でかなり古くから行われ、日本でも江戸時代にすでに行われていた。1842年(天保13)に幕府はウド、ボウフウ、メイモの軟化栽培に対してぜいたくであるとして禁止令を出した記録がある。現在は前記の作物のほかにショウガ、アスパラガス、ミツバ、セロリ、ネギ、アサツキなどで軟化栽培が盛んである。軟化野菜は繊維組織の発達が悪く、柔組織が多くなるため柔軟多汁質となる。またデンプンが少なく、糖が増え、特有の辛味、苦味、あく味、香味などが淡くなり、風味が淡泊佳良になる。しかしビタミンなど栄養価は減少する。
[星川清親]
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