電波を利用上の便宜から波長によって区分したものの一つ。波長の範囲は10ミリメートルから1ミリメートルまでであり、周波数範囲は30ギガヘルツから300ギガヘルツまでの電波を慣用的に総称していう。ミリメートル波ともよばれる。電波法施行規則で定められた周波数帯の略称ではEHF帯(ミリメートル波)に相当する。
EHF帯の電波は周波数が高いことからSHF帯(3ギガヘルツを超え、30ギガヘルツ以下)よりさらに広帯域の使用が可能である。しかし、雨や霧のなかを通過すると大きな減衰を受けるので遠方までの伝送には使用できない。このため比較的短距離の無線アクセス、画像伝送システム、ミリ波レーダーなどに使用される。リモート・センシング(遠隔探査)においては、通信の媒体としてではなく、地球観測衛星による赤外線観測で、測定値に誤差を与える空間に存在する水蒸気量を、観測対象から自然放射されるミリ波(37ギガヘルツ付近)の減衰量によって測定し、赤外線の損失量を算定する。ミリ波はまた、天文学にも応用され(国立天文台野辺山(のべやま)宇宙電波観測所など)、天体から放射され地球に到達する微弱なミリ波を巨大なパラボラアンテナ(回転放物鏡アンテナ)で受信して、天体の組成まで探査する。
2000年(平成12)の電波法改正により、60ギガヘルツ帯に無免許で運用できる周波数帯が設けられた。またミリ波の帯域は、近距離ではあるが広帯域に伝播(でんぱ)する性質を利用して、多数設置を必要とする携帯電話中継基地局用として、50ギガから57ギガヘルツおよび66ギガから95ギガヘルツまで使用されている。100ギガヘルツを超える周波数の使用は特殊な軍事目的以外には行われておらず、2012年時点では技術面、経済面ではまだ利用できていない。
法律のうえではさらに波長の短いデシミリメートル波(300ギガヘルツを超え、3000ギガヘルツ以下)までを定めているが、周波数帯としての呼び名もなく、しだいに遠赤外線の性質にも近づくため、電波としての発振は困難になってくる。また、それ以上の周波数は法的にも電波として扱わない。
EHF帯の利用には、SHF波よりも1桁(けた)上の周波数の発振器が必要となる。帯域内の低い周波数部分においては、マグネトロン(磁電管)やクライストロン(速度変調管)が使用可能である。
[石島 巖]
ミリメートル波の略。波長が1mmから10mmまでの範囲の電波,すなわち周波数で30~300GHzの範囲の電波をいう。公式の呼称はEHF(extremely high frequencyの略)である。ほとんど光と同様の性質を有するようになり,直進するとともに霧や雨の減衰が著しくなる。衛星通信や近距離の固定通信,計測用などに利用されているが,本格的利用は今後に残されている。
→電波
執筆者:宮川 洋
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