めかす(読み)メカス

デジタル大辞泉 「めかす」の意味・読み・例文・類語

めか・す

[接尾]《動詞五(四)段型活用》名詞や形容動詞の語幹などに付いて、そのように見せかける、そのようにする、それらしく振る舞う、などの意を表す。「冗談―」「親切―」「秘密―」

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精選版 日本国語大辞典 「めかす」の意味・読み・例文・類語

めか・す

  1. [ 1 ] 〘 接尾語 〙 ( 五(四)段型活用 )( 接尾語「めく」から ) 名詞などに付いて動詞をつくり、そのように見せかける、…らしくふるまうの意を表わす。「人めかす」「ものめかす」「なまめかす」など。現代では、「学者めかす」「本物めかす」「風流めかす」などと、名詞に付いて用いられることが多い。
    1. [初出の実例]「上方めかして取遣りもすみければ」(出典:滑稽本・客者評判記(1811)上)
    2. 「折々議論めかす事ありと思へば」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)
  2. [ 2 ] ( 粧 ) 〘 自動詞 サ行五(四) 〙 ( [ 一 ]から )
    1. 外見を装う。とりつくろう。上に連用修飾語や目的語を伴って用いる場合と、それらを省略して用いる場合とがある。
      1. [初出の実例]「いくら金魚風にあはれっぽしくめかしても」(出典:洒落本・嘉和美多里(1801))
    2. 身なりを飾りたてる。化粧や衣服などを必要以上に飾りたてて、おしゃれをする。非難からかい気持をこめていう場合が多い。
      1. [初出の実例]「あれもめかしたやつだ。すがぬひの紋所で、黒八の羽織にお太刀をきめて、大きな面だ」(出典:滑稽本・素人狂言紋切形(1814)上)
    3. 浮きたたせるようにはやし立てる。
      1. [初出の実例]「『〈略〉うまいうまいやっちゃやっちゃでごはりまする』とめかすれば」(出典:浄瑠璃・新うすゆき物語(1741))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「めかす」の意味・わかりやすい解説

メカス
めかす
Jonas Mekas
(1922―2019)

リトアニア出身で、アメリカ、ニューヨークを拠点に活動した映画作家、映画評論家。リトアニア北部ビルジャイ県セメニシュケイ村の農家に生まれる。1943年にビルジャイ市のギムナジウムを卒業。子供のころから文学に熱中し、地方新聞の編集にかかわったり、詩編を発表するなどしていたが、1942年から続くナチスによる祖国占領が、彼の将来に大きな影響を及ぼす結果となった。反ナチスの地下新聞の編集に携わったメカスと弟のアドルファスAdolfas Mekas(1925―2011)は、1944年、ナチスによる追及を逃れるべくリトアニア脱出を企てたが失敗、ドイツの強制収容所へ送られ、そこで第二次世界大戦終結を迎える。戦後、ドイツ国内の難民収容所を転々としていたが、ウィースバーデン収容所に落ち着き、マインツのヨハネス・グーテンベルク大学などで文学や哲学を学び、1948年に詩集『セメニシュケイの牧歌』Semeniški Idilésを刊行。故郷の小さな村への追憶を込めたこの詩集は、1955年にアメリカ・リトアニア作家協会が設けたビンツァス・クレベー賞を受賞。しかし、反スターリン的な立場を鮮明にしていたメカスにとって、戦後、ソビエト連邦の支配下にあった祖国への帰還は望むべくもなかった。

 翌1949年、国連が援助した船賃で、兄弟はアメリカ合衆国へ移住。ニューヨークに住居を定める。詩作は母国語以外では不可能との考えをもつメカスは、さまざまな仕事で生計を立てながら、言語以外の新たなコミュニケーション手段を求めて中古のボレックス(スイス製16ミリシネカメラ)を移住してすぐに購入、自身の身辺や日常的な情景を被写体とする「日記映画」を撮り始める。そうした彼独自の映画づくりの最初の集大成として、約25年ぶりに故郷に帰還し、母親ら家族との再会の模様などを撮影した代表作『リトアニアへの旅の追憶』(1972)があり、その後も『ロスト・ロスト・ロスト』(1976)、アンディ・ウォーホルやジョン・レノンオノ・ヨーコの夫妻ら友人たちのリラックスした姿が収められた『時を数えて、砂漠に立つ』(1986)など、やはり「日記映画」の延長線上で何本もの長編作品をまとめあげ、個人映画作家としての地位を固めていった。

 そのほか、メカスの活動のなかで重要な比重を占めるものに、1960年代にウォーホルやフルクサスなどのアート・シーンでの革新的な動きとも共振しつつ実り豊かな成果を生み出した、アメリカのインディペンデント映画運動における優れたオルガナイザーとしての役割がある。1958年から開始され、後に著作『メカスの映画日記』Movie Journal(1972)にまとめられる『ビレッジ・ボイス』Village Voice誌でのコラムの執筆活動などを通して論陣を張るにとどまらず、1960年にニューヨークの映画作家らで組織された「ニュー・アメリカン・シネマ・グループ」にジョン・カサベテスや写真家ロバート・フランクらと参加。メカスがその際に執筆したマニフェストには、映画とは何よりも作家個人の表現としてあり、プロデューサーや配給者、検閲などの介入を拒絶すること、たとえ優れた作品でも上映機会の少ない低予算個人映画を配給するための独自のルートを開拓すること、といった理念や目的がうたわれた。その実践として、インディペンデントな映画作品の配給・上映を行う「フィルム・メーカーズ・コーポラティブ」を翌1961年に発足。さらに1970年には、ともすれば失われがちな個人映画のプリント保存や資料の蒐集を目的とする「アンソロジー・フィルム・アーカイブズ」を設立し、その活動の中心的役割を担った。

[北小路隆志]

資料 監督作品一覧

リトアニアへの旅の追憶 Reminiscences of a Journey to Lithuania(1972)
ロスト・ロスト・ロスト Lost, Lost, Lost(1976)
時を数えて、砂漠に立つ He Stands in a Desert Counting the Seconds of His Life(1985)
ライフ・オブ・ウォーホル Scenes from the Life of Andy Warhol(1990)
映画は百歳ではない Cinema Is Not 100 Years Old(1996)
グリーンポイントからの手紙 Letter from Greenpoint(2004)
メカス×ゲリン 往復書簡 Correspondences:José Luis Guerin and Jonas Mekas(2011)
Mont Ventoux(2012)

『飯村昭子訳『メカスの映画日記――ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959―1971』(1993・フィルムアート社)』『村田郁夫訳『セメニシュケイの牧歌』(1996・書肆山田)』『木下哲夫訳、フォトプラネット編『フローズン・フィルム・フレームズ――静止した映画』(1997・河出書房新社)』

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百科事典マイペディア 「めかす」の意味・わかりやすい解説

メカス

映画作家。リトアニア生れ。1949年ニューヨークに渡る。いくつもの職を転々とした後,中古の16ミリ・カメラを手に入れ,映画の道に進む。《フィルム・カルチャー》誌の創刊や執筆活動の他,1960年にはR.フランク,J.カサベテスらとニュー・アメリカン・シネマ・グループを結成し,個人映画や実験映画の上映・配給を手がけた。1962年処女作《木々の大砲》を発表。翌年A.ウォーホルを知り,彼の映画《エンパイア》(1964年)の撮影を行ったほか,ウォーホルを題材にした作品も撮影。家族・友人など身近な人々や,都市の風景を対象とした独自の作風は〈日記映画〉と呼ばれている。代表作に《営倉》(1964年),《リトアニアへの旅の追憶》(1972年),《ロスト・ロスト・ロスト》(1976年),《時を数えて,砂漠に立つ》(1985年)などがある。

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