メロドラマ(英語表記)melodrama

翻訳|melodrama

デジタル大辞泉 「メロドラマ」の意味・読み・例文・類語

メロドラマ(melodrama)

元来は、18世紀後半に西欧で発達した、音楽の伴奏が入る娯楽的な大衆演劇。今日では、恋愛を主なテーマとした通俗的、感傷的な演劇・映画・テレビドラマなどをいう。

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精選版 日本国語大辞典 「メロドラマ」の意味・読み・例文・類語

メロドラマ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] melodrama ギリシア語メロスとドラマの結合した語 )
  2. 演劇形式の一つ。誇張された情況設定やせりふをもつ通俗的な演劇。ヨーロッパで、中世から近世に行なわれ、せりふの合間に音楽を伴奏した娯楽劇。
    1. [初出の実例]「其他の作家のメロドラマと、殊にミュージカル、コメデーが全盛である」(出典:欧米印象記(1910)〈中村春雨〉紐育雑記)
  3. 恋愛をテーマとした感傷的なドラマや映画。
    1. [初出の実例]「散々人を泣かせて置いて遂に目出度し目出度しで終るメロドラマでなければならないと云ふのか」(出典:新しき世界の為めの新しき芸術(1917)〈大杉栄〉六)

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改訂新版 世界大百科事典 「メロドラマ」の意味・わかりやすい解説

メロドラマ
melodrama

英語のmelodramaという言葉は,フランス語mélodrame(メロドラム)の借入であり,J.J.ルソーが自作の《ピグマリオン》(1775)のなかで,人物の出入りに〈音楽の伴奏〉が入る形式の劇をそう呼んだのが初めとされる(なおmélo-はギリシア語で〈歌〉を意味するmelosにさかのぼることができる)。つまり,この言葉はもともと劇の内容よりも,〈音楽入り〉という劇形式を指していたわけであったが,以下に見るように時代の変遷のなかで,しだいに劇形式よりも劇内容が,この言葉の意味を規定するようになっていく。

 その後のフランスでは19世紀の初頭までに,ブールバールで流行したパントマイムとオペラ・コミックが混合していく過程で,メロドラマ(以下,フランスの場合もこの言い方を用いる)の台詞代りに使われていた音楽の役割が後退して,劇効果を高める補助手段としてのみ存在するようになり,一方のパントマイムには大がかりなスペクタクルが取って代わる。このような変化は,劇場で〈絵画的な〉場所を見たがるようになった観客の嗜好によるものであった。古典劇のほとんどでは,題名が劇中の主人公を表し,場所は一つに限定されているのに対して,メロドラマでは地方色を表すさまざまな装置の変化が特徴的である。こうして19世紀初頭,代表的なメロドラマ作者ギルベール・ド・ピクセレクールが現れるに及んで,メロドラマは,パリのタンプル大通りに密集する劇場で全盛を極め,以下に述べるようなその演目の内容から,タンプル大通りには〈犯罪大通りBoulevard du Crime〉という別名も生まれた。

 メロドラマの内容としては,当時流行したゴシック・ロマンス怪奇小説の影響が大きい(フランスではこれらの小説は〈ロマン・ノアール〉(暗黒小説)と呼ばれた)。A.ラドクリフの《ユドルフォ城の謎》やM.G.ルイスの《修道僧》などの小説は当時ヨーロッパ中で愛読されたが,このような小説の題材を劇化することで大衆を引きつけたことが,メロドラマが爆発的に流行したことの基盤となっていた。その中には高僧が悪魔に誘惑されたり,破戒僧が処女を幽閉するなどの教会制度をめぐる主題,亡霊,妖怪などの超自然的要素,森の盗賊,誘拐略奪などの犯罪的要素が含まれており,また,恐怖心を煽るプロセスの後,最後は必ず勧善懲悪に終わる手法などの特徴が集中してあらわれている。ピクセレクールの代表作《ビクトル,または森の子》(1798),《ケリナ,または神秘の子》(1800)もフランスの暗黒小説の作家デュクレ・デュミニルの作品の翻案である。大革命を経て,〈血と恐怖〉とに慣れ切っていた観客は,グロテスクでショッキングな題材を好み,亡霊などの超自然が受けたのもそのためであったろうと思われる。また,一方では強固な道徳性,すなわち善玉・悪玉の対立が際立っており,勧善懲悪の掟が実現するという点で,大衆の不安と不満とは癒されたのであった。

 さらに,メロドラマの成功には,舞台装置や舞台衣裳の豪華さもものをいった。19世紀初頭の劇場は,いずれもこぞって幻想的な大がかりな装置を飾り,背景画家や道具方は俳優同様重要な存在になっていく。ピクセレクールの代表作《バビロンの廃墟》のティグリス川を背景にした巨大な王宮のセットは,ジャン・ピエール・アローJean-Pierre Alauxの作で評判となったし,あるいはベスビアス火山の爆発を表現したJ.ダゲール(のちの写真のダゲレオタイプの発明者)などの装置家による視覚的要素での貢献は,地方色・時代色を尊重するのちのロマン派演劇の傾向をも促進したのであった。

 今日では,メロドラマのさし示す意味合いはさらに変容し,一般に波乱に富む男女の通俗的恋愛劇をさすようになっている。そこでは,変容しつつも何らかの形で受け継がれている〈筋の波乱万丈〉〈場所の変化〉〈正義が必ず勝利を収めるハッピーエンド〉というかつてのメロドラマの基本三要素が,やはり依然として大いに大衆に受け入れられ喜ばれるものとなっており,今日もメロドラマは,劇場だけではなく映画やテレビにおいても盛んに行われている。
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百科事典マイペディア 「メロドラマ」の意味・わかりやすい解説

メロドラマ

18世紀末フランスを中心に流行した音楽芝居が原義。J.J.ルソーの《ピグマリオン》(1775年)が最初とされる。19世紀初頭にかけて市民階級に迎えられたが,音楽的要素が衰退し,今日では大衆受けのする感傷的な作品のことをさす。
→関連項目ブールバール劇

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世界大百科事典(旧版)内のメロドラマの言及

【イタリア演劇】より


[17~18世紀]
 知識人によって書かれたルネサンス喜劇は,反宗教改革の進行とともに衰退の道をたどり,かわってコメディア・デラルテに代表されるような民衆喜劇が主流を占めるようになった。同時にラウダや宗教劇に始まったオペラ的なものは,A.ポリツィアーノの《オルフェオ》を経て,16世紀には牧歌劇が発展整備され,やがて文学と音楽の関係がいっそう密になって,17世紀にかけてカバリPietro Francesco Cavalli,G.カッチーニC.モンテベルディなどの〈メロドラマ〉(オペラ)を生んだ。イタリア演劇ではこの〈メロドラマ〉が悲劇の役割を果たした。…

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