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愛染かつら あいぜんかつら

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

愛染かつら
あいぜんかつら

日本映画。 1938~39年松竹作品。監督野村浩将。脚本野田高梧。原作川口松太郎。主演上原謙田中絹代。愛し合う病院長の息子と子持ちの看護師が,周囲の迫害に耐え,幾度かのすれ違いを繰り返しながらついに結ばれるまでの,波瀾万丈のメロドラマ。大ヒット作となり,続編,完結編もつくられて話題になった。

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世界大百科事典 第2版の解説

あいぜんかつら【愛染かつら】

川口松太郎(1899‐1985)の長編現代小説。1937‐38年《婦人俱楽部》に連載。津村病院に勤務する23歳の美貌の看護婦高石かつ枝と病院長の令息津村浩三のラブストーリー。かつ枝は17歳の時結婚して1子をもうけたが,夫と死別,病院で働く。2人は津村家の菩提寺の愛染かつらの樹の下で永遠の愛を誓う。その後幾多の誤解とすれ違いの末,日蓄レコードの作曲家としてデビューすることとなったかつ枝は浩三と再会し,結ばれることとなる。

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大辞林 第三版の解説

あいぜんかつら【愛染かつら】

小説。川口松太郎作。一九三七(昭和一二)~38年「婦人俱楽部」連載。未亡人の看護婦と医師との恋愛を描いたもの。38年映画化され、主題歌「旅の夜風」とともに戦時下に大ヒットした。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

愛染かつら
あいぜんかつら

日本映画。1938年(昭和13)作品。野村浩将(のむらひろまさ)(1905―1979)監督。原作は作家の川口松太郎(かわぐちまつたろう)の同名小説で、子持ちの未亡人で看護婦の高石かつ枝と大病院の子息で医師の津村浩三(つむらこうぞう)の恋愛を描き、当時の雑誌『婦人倶楽部(くらぶ)』に連載され評判となった。日中戦争以後の女性観客の増大をみて、女性映画に定評のあった松竹大船の撮影所長城戸四郎(きどしろう)は、脚色に野田高梧(のだこうご)、監督に『人妻椿(ひとづまつばき)』(1936)などをヒットさせた野村浩将を起用、田中絹代(たなかきぬよ)と上原謙(うえはらけん)(1909―1991)のスターを主演させて製作。劇中、新橋駅でのすれ違いの場面に、西條八十(さいじょうやそ)作詞・万城目正(まんじょうめただし)(1905―1968)作曲による主題歌『旅の夜風』を、霧島昇(きりしまのぼる)(1914―1984)と松原操(まつばらみさお)(1911―1984)のデュエットで挿入、サウンドとカットバックがやるせないロマンチシズムを盛り上げ、大ヒットの原動力となった。松竹はさらに同じスタッフ、キャストで『続愛染かつら』『愛染かつら 完結編』(1939)を製作。戦時下、召集され家族が離別する時代の日本人の心情に訴えかけて、3編とも歴史的なヒット作となった。
 第二次世界大戦後のリメイク作品には、水戸光子(みとみつこ)(1919―1981)と龍崎一郎(りゅうざきいちろう)(1912―1988)で『新愛染かつら』(1948年、大映)、京マチ子(きょうまちこ)(1924― )と鶴田浩二(つるたこうじ)(1924―1987)で『愛染かつら』(1954年、大映)、岡田茉莉子(おかだまりこ)(1933― )と吉田輝雄(よしだてるお)(1936― )で『愛染かつら』『続・愛染かつら』(1962年、松竹)と、3作品つくられている。こうした階層や身分の違いが障壁となる恋愛メロドラマは、『カチューシャ』(1914年、日活)や『君の名は』三部作(1953~1954年、松竹)などが大ヒットしており、戦争など歴史の変動期やその後の社会変化の時期に起きる現象と認められる。[千葉伸夫]

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世界大百科事典内の愛染かつらの言及

【城戸四郎】より

…31年,日本映画のトーキー第1作《マダムと女房》を製作。38年には,《愛染かつら》を大ヒットさせ,〈すれ違い〉ということばをはやらせ,のちの《君の名は》(1953‐54)に至る松竹メロドラマ路線をつくる。第2次世界大戦中は,社団法人映画公社設立とともに専務理事となるが,46年映画公社解散とともに松竹に戻り副社長となったが,47年から50年まで公職追放。…

【田中絹代】より

…出世作《恥しい夢》(1927)からファンの人気を一身に集めたヒット作《絹代物語》(1930)をへて,日本映画における最初の本格的トーキー《マダムと女房》(1931),川端康成原作の《伊豆の踊子》の最初の映画化(1933)等々に至る五所平之助監督作品を中心に,《感激時代》(1928)から《山の凱歌》(1929)に至る鈴木伝明主演,牛原虚彦監督による青春スポーツ編や,《大学は出たけれど》(1929)から《落第はしたけれど》(1930)に至る小津安二郎監督作品,トーキー最初の《金色夜叉》や《忠臣蔵》(ともに1932)をへて《私の兄さん》(1933)に至る林長二郎とのコンビ作品などを通して,〈明るくあたたかく未来を見つめる〉蒲田映画のシンボルとなり,〈蒲田の誇り〉とまでたたえられ,スター女優第1号の栗島すみ子を抜いて松竹蒲田の看板スターになる。早慶戦の花形選手だった慶応の名三塁手・水原茂とのロマンスをうたわれ,次いで谷崎潤一郎の小説《春琴抄》の最初の映画化で島津保次郎監督による《お琴と佐助》(1935)で〈演技開眼〉して新境地をひらき,〈すれちがいメロドラマ〉ということばまで生み出した大ヒット作《愛染かつら》三部作(1938‐39)で人気の頂点に達した。その後,〈洋装の似合う〉高峰三枝子,桑野通子,高杉早苗の〈近代娘〉三人にスターの座を譲るが,第2次世界大戦後は《夜の女たち》(1948)から《西鶴一代女》(1952),《雨月物語》(1953),《山椒太夫》(1954)等々に至る溝口健二監督作品を中心に,日本の母親を演じた成瀬巳喜男監督《おかあさん》(1952)や,中年女の役を演じた五所平之助監督《煙突の見える場所》(1953)や姥捨山に捨てられる老母を演じた木下恵介監督《楢山節考》(1958)等々を通して,〈演技派女優〉として活躍し,数々の名作を残した。…

※「愛染かつら」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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