イタリア北部,エミリア・ロマーニャ州の同名県の県都。人口18万0110(2004)。ポー平原の南部,エミリア街道沿いにあり,豊かな農業地域に囲まれているため,工業も農産物加工(ハム,ソーセージなどの食肉加工,酪農製品)が盛んであるが,農業機械,化学肥料などの製造業も近年発展が著しい。エトルリア人の建設した都市で,ローマ時代にはムティナMutinaと呼ばれ,すでにブドウ酒,羊毛,陶器などの生産地として重要であった。その後,ローマ帝国の衰退とともに蛮族の侵入,洪水などで荒廃。9世紀ごろ再建され,1115年から自由都市として経済的にも繁栄に向かい,大聖堂も建造された。1288年エステ家のオビッツォの所領となるが,1306年再び自由都市に復帰した。しかし36年,シニョーレに戻ったエステ家は,途中,多少の中断はあるものの,19世紀半ばのイタリア統一までほぼ一貫してこの都市を支配した。1452年にはレッジョ・ネレミリアとともに公国となり,都市域は拡張し発展したが,エステ領の首都フェラーラにみられたルネサンス文化の輝かしい開花はおこらなかった。1598年にフェラーラが教皇領となるとともに,エステ家の宮廷がここに移されたが,ほかのイタリア諸都市同様,このころから停滞の時代に入った。しかし,図書館の創設(16世紀末にフェラーラから移転)や,後世に影響を及ぼしたムラトーリの歴史研究などは文化の胎動を示すものであり,18世紀後半の支配者たちの一連の啓蒙的な社会改革への道を開いた。ナポレオン時代にチザルピナCisalpina共和国に編入されたが,ナポレオン失脚後,オーストリア系エステ家が復帰し反動的な支配を行った。1860年,サルデーニャ王国に統合された。
執筆者:萩原 愛一
ロマネスク様式の大聖堂(サン・ジェミニアーノ)は,ロンバルディアの建築家ランフランコLanfrancoの下に1099年に起工された。献堂は1184年。玄関左右の大理石ライオン像が背に円柱を担いロッジアを載せる形式は,イタリア北部のほかフランスにも影響を及ぼした。外面上方の3連アーチの並ぶ階廊は四周を取り囲み,全体的調和が図られている。西玄関の低浮彫にはウィリゲルムスWiligelmusの署名があり,彼の工房が南北の玄関の彫刻を制作している。堂内の内陣仕切りはライオン像の上に立ち,〈受難〉の諸場面を表す(13世紀)。
エステンセ美術館は,当地出身の画家バルナバ・ダ・モデナ,トマソ・ダ・モデナ(ともに14世紀),フランスのフォンテンブローで没したアバーテ(16世紀)ほかの作品を収蔵する。
執筆者:五十嵐 ミドリ
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イタリア北東部、エミリア・ロマーニャ州モデナ県の県都。人口17万5442(2001国勢調査速報値)。ポー川の南に広がる平野部のエミリア街道沿いに位置する交通の要地。農産物の集散地としての伝統的機能を果たすほか、食品加工や農業機械、化学肥料の製造といった農業関連工業が盛んである。またスポーツカーの生産が行われる。1774年創設のモデナ大学がある。また、87メートルの「ギルランディーナの鐘塔」を有するロマネスク様式の大聖堂(11~13世紀)、現在は士官学校となっているドゥカーレ宮殿(17世紀)、エステ家美術館などの歴史的建造物が残る。
[堺 憲一]
大聖堂は、隣接する市民の塔(トッレ・チビカ)およびグランデ広場とともに1997年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「モデナの大聖堂、トッレ・チビカおよびグランデ広場」として世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。
[編集部]
エトルリア人の集落として発足した。エミリア街道の建設に伴い、紀元前183年ローマの植民市となる。ラテン名ムティナMutina。紀元後4世紀に司教座が置かれた。1288年にはすでにフェッラーラに拠点を置いていたエステ家の支配下に入る。1452年同家のボルソBorso d'Este(1413―71)がモデナ公の称号を獲得、さらに1598年フェッラーラが教会領になったのを契機にモデナ公国の首都となった。その後1796年のフランス軍による占領までエステ家の支配が続き、それにちなんだ多くの建築物が建てられた。王政復古によってオーストリア・エステ家の統治が再現されるが、1860年に国民投票により公国は解体し、イタリア王国に併合された。
[堺 憲一]
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