西洋音楽の様式に関する用語。ギリシア語monos(単一)とode(歌)との合成語で、広義には単一声部からなる声楽曲をさす。これは通常リュートや鍵盤(けんばん)楽器による和弦的伴奏に伴われることが多いため、ホモフォニーの一種とみなされる。狭義には、1600年ごろ、ポリフォニー様式の反動としてイタリアで発展した独唱音楽の様式に対して用いられる。今日、単にモノディといえば、狭義の意味で用いるのが普通である。
16世紀の末、フィレンツェのカメラータ(バルディ家の学者や音楽家たちの集団)の間では古典ギリシア劇の再興が企てられていたが、モノディはその理念に端を発し、形成された。ここでは歌われる歌詞が高い表現力や劇性をもって一語一語克明に表現されることが求められ、旋律は通奏低音楽器の和弦的伴奏に支えられたレチタティーボ風なものとなっている。初期のモノディのもっとも有名なものには、カッチーニの『新音楽』(初版1601)や、現存最古のオペラ『エウリディーチェ』(ペーリ作曲、1600初演。一部はカッチーニ作曲)があげられる。その後、この様式はあらゆる音楽に急速に浸透し、器楽面では独奏ソナタの成立を促した。しかし、声楽や器楽固有の表現法の開発とともに、1630年代を境に衰退した。
[黒坂俊昭]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ルネサンスのポリフォニーが諸声部の対等性に基づいて1個の均質な音響空間を形成したのに対して,バロック音楽では音響空間が上声と下声(通奏低音)に分裂し,緊張をはらんだこの双極構造の中で内声部は一般に副次的な位置を占めるにすぎない。16世紀末,フィレンツェのカメラータ(文学者,音楽家のグループ)によって創始されたモノディは通奏低音に支えられた独唱のスタイルで,歌詞の抑揚や情緒を,あたかも語りのように表現しようとした。初期バロックの天才C.モンテベルディが語ったように,今や〈言葉が音楽の主人〉となり,言葉の内容に即した表現を実現するためには,マドリガーレのようなポリフォニー音楽においても,ルネサンス・ポリフォニーの規則に縛られない破格な進行や和声が許されるようになった。…
…またポリフォニーやホモフォニーの音楽のなかでモノフォニー風の部分が効果的に現れることもあり,逆に単旋律の音楽でもポリフォニー的あるいはホモフォニー的構造を示すことができる(J.S.バッハの無伴奏バイオリン曲やチェロ曲など)。なお,モノフォニーのことをドイツ語,フランス語などではモノディということがあるが,これは,ふつうはとくに17世紀初頭の伴奏付独唱曲を指す。【土田 英三郎】。…
※「モノディ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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