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モルヒネ morphine

翻訳|morphine

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

モルヒネ
morphine

モルフィン,モルフィウム,モルフィナともいう。 C17H19NO3アヘン (阿片) 中のアルカロイドの一つ。良質アヘンには9~14%の無水モルフィンが含まれる。短柱状結晶。分解点 254℃。 190~200℃で昇華。光で黄変する。種々の酸と塩をつくる。塩酸モルヒネは鎮痛剤鎮痙剤止瀉剤に,硫酸モルヒネは鎮痛剤,基礎麻酔薬,鎮咳剤に利用される。常用すると中毒を起しやすい。副作用は嘔吐,便秘,アレルギー反応,呼吸抑制などで,習慣性がある。効果が約4時間しか続かない欠点を補う硫酸モルヒネ徐放剤 (商品名 MSコンチン錠) が開発・市販された。日本では製造は麻薬及び向精神薬取締法で規定されている。

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知恵蔵の解説

モルヒネ

がんの痛みを緩和するために使われる医療用麻薬。がんによる激しい痛みを緩和することは、がん患者の生活の質を維持するため重要とされている。国際的な標準である世界保健機関(WHO)方式のがん疼痛(とうつう)治療法では、患者の痛みに応じて、最も適切な薬を使い分ける。その中でも強い痛みに対しては、モルヒネなどを含む強い鎮痛薬を、持続的に規則正しく使うことが推奨されている。成分を徐々に放出する徐放性の経口薬が使われることが多い。がん疼痛緩和に専門家が正しく使えば、依存は起きず、患者の死期を早めることもない。日本では緩和ケアの専門家の不足などもありモルヒネの使用量は欧米先進国に比べて少ないのが現状で、医師への教育が重要とされている。法的には、「麻薬及び向精神薬取締法」において麻薬に指定されており、医師や薬剤師には厳重な管理が求められている。

(浅井文和 朝日新聞記者 / 2008年)

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デジタル大辞泉の解説

モルヒネ(〈オランダ〉morfine)

アヘンに含まれるアルカロイドの主成分。塩酸塩が鎮痛薬として癌(がん)などの疼痛(とうつう)に用いられる。連用により習慣性になりやすく、麻薬に指定。モルフィン。

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百科事典マイペディアの解説

モルヒネ

モルフィンとも。ケシ科植物などに含まれるアルカロイド。分子式C17H19NO3,分子量285.3。アヘンの主要成分。名称はギリシア神話の眠りの神モルフェウスに由来。
→関連項目アトロピンアルカロイドカフェインコデイン鎮痛薬麻薬薬物依存症

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栄養・生化学辞典の解説

モルヒネ

 C17H19NO3 (mw285.34).

 ケシからとるアヘンの成分.アルカロイドの一つ.中枢神経に作用して鎮痛作用を示す.痛み止めに使うが習慣性があり,麻薬の一つである.

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世界大百科事典 第2版の解説

モルヒネ【morphine】

モルフィンともいう。アヘンの主成分で,産地によって異なるがアヘンに9~14%含まれる。モルヒネは1805年ドイツの薬剤師F.W.A.ゼルチュルナーによって初めて分離され,1952年M.ゲーツらによって化学的に合成された。分子式C17H19NO3,分子量285.3のアルカロイドで,分解点254℃,[α]D25=-132゜の苦味をもつ無色結晶。薬物としては,塩酸塩または硫酸塩が用いられる。 モルヒネの名前は,ギリシア神話の眠りの神ヒュプノスHypnosの子の夢の神モルフェウスMorpheusに由来するもので,これは主作用である鎮痛作用と同時に,痛みに伴う不安を除き,不快な感覚を忘れさせて快感をもたらし,陶酔をきたす作用による。

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大辞林 第三版の解説

モルヒネ【morfine】

阿片に含まれるアルカロイドで、麻薬の一。鎮痛・鎮静薬として種々の原因による疼痛とうつうに有効。習慣性が著しいので、法律により使用が制限されている。モルフィン。モヒ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

モルヒネ
もるひね
morphine

代表的なアヘンアルカロイドで、1805年ドイツの薬剤師ゼルチュルナーSertrnerによってアヘンから単離された。塩酸塩である塩酸モルヒネが、おもに鎮痛剤として医薬用に使われる。白色の結晶または結晶性粉末で、においはない。水に溶けやすく、光によって変化する。麻薬及び向精神薬取締法により取扱いが規制されている毒薬である。
 モルヒネの鎮痛作用は中枢神経系に作用することによるが、その特徴は睡眠に陥る前または睡眠を伴わずにおこり、多幸感をおこす。量を増すと、傾眠状態、悪心、嘔吐(おうと)、呼吸抑制がみられる。そのほか、抗利尿ホルモンの分泌を促進して尿量の減少をみたり、高血糖の発現や瞳孔(どうこう)の収縮もみられる。腸管に対しては便秘がおこる。したがって、モルヒネの薬理効果は鎮痛のほか、止瀉(ししゃ)剤として頑固な下痢症の治療にアヘンチンキなどが用いられたり、催吐剤としてアポモルヒネが使われる。
 モルヒネは繰り返して用いることにより耐性を生ずるとともに、身体性依存および禁断現象が現れる。しかし、癌性疼痛(がんせいとうつう)にはなくてはならない鎮痛剤であり、注射のほか、錠剤、顆粒(かりゅう)剤、液剤があり、とくに特効製剤(徐放(じょほう)錠、カプセル、細粒)が内用で癌性疼痛のコントロールに繁用されている。また、副作用である呼吸抑制に対しては麻薬拮抗(きっこう)剤であるナロルフィン、レバロルファン、ナロキソンが用いられ、分泌液の増加に対しては硫酸アトロピンを配合したモルヒネアトロピン注射液が用いられる。
 なお、モルヒネ誘導体のうち、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)は効力も大であるが副作用も大で、医薬用には使われていない。[幸保文治]

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世界大百科事典内のモルヒネの言及

【アヘン(阿片)】より

… 作用の本体となるのは全量の約25%を占める20種以上のアルカロイドであるが,これらは化学的には次のように二つに大別される。一つはフェナントレン骨格をもつモルヒネ(10~16%),コデイン(0.8~2%),テバインthebaine(0.5~2%)であり,他の一つはイソキノリン骨格をもつパパベリンpapaverine(0.5~2.5%),ノスカピンnoscapine(ナルコチンともいう。5~7%)で,これ以外のアルカロイドの含量はきわめて低く,ほとんどが0.01%以下である。…

【痛み】より

…たとえば,間脳の第三脳室を取り囲む部分を電気で刺激して痛みを抑えるのに成功したという報告がある。このほか,痛みの強力な治療薬であるモルヒネと似た物質が脳の中でつくられることも知られている。脳や脊髄にはモルヒネと特異的に結合する受容体があって,この受容体と結合する活性物質を探し求めた結果発見されたものである。…

【ゼルチュルナー】より

…1820年,ハーメルンに薬局を開設した。薬局での仕事のかたわら,アヘンに含まれる〈睡眠物質〉の研究に従事し,1805年モルヒネの単離,抽出に成功した。彼はこの結果を05年,06年と2度にわたって発表したが,当時は世の注目を集めることとならず,17年の再出版でようやく認められることとなった。…

【鎮痛薬】より

…作用部位とその作用の特徴によって,麻薬性鎮痛薬と解熱性鎮痛薬に大別される。
[麻薬性鎮痛薬]
 天然のアヘン製剤をはじめ,その主成分アルカロイドであるモルヒネコデインと,モルヒネの化学構造の一部を変えた半合成品のエチルモルヒネ,オキシコドン,ジヒドロコデイン,さらに合成麻薬のペチジン,メサドンなどが含まれる。合成麻薬の化学構造も,基本的にはモルヒネの構造に由来したものが多い。…

【ヘロイン】より

…ジアセチルモルヒネdiacetylmorphineの一般名。モルヒネのアセチル化によってつくられる。…

【麻薬】より

…薬理学的には,アヘン総アルカロイドと,これから分離して得られるモルヒネコデイン,これらの半合成体(ヘロイン,オキシコドンなど),およびモルヒネ類似の薬理作用と依存性を有する合成薬物(ペチジンなど)をさす。英語はギリシア語のnarkē(麻酔,麻痺)に由来し,これらの薬物を摂取すると,意識が混濁したり,感覚が麻痺状態になることから,麻酔様状態を起こす薬物の意でつけられた。…

【薬用植物】より

…それらの中で,薬効と関連するものを有効成分という。化学成分の研究は1803年F.ゼルチュルナーがアヘンからモルヒネを単離して以来,キナ皮からキニーネ,タバコからニコチン,吐根からエメチン,コカ葉からコカイン,さらにストリキニーネ,アトロピン,ヒヨスチアミン,エフェドリンといった重要な,生理活性の強いアルカロイドがいろいろな薬用植物から次々と単離された。さらに1837年J.F.リービヒとF.ウェーラーがアミグダリンを加水分解して糖を得たことから,配糖体が薬効成分として大きな位置を占めることが知られるようになった。…

※「モルヒネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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