精選版 日本国語大辞典 「モルヒネ」の意味・読み・例文・類語
モルヒネ
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代表的なアヘンアルカロイドで、1805年ドイツの薬剤師ゼルチュルナーSertürnerによってアヘンから単離された。塩酸塩である塩酸モルヒネが、おもに鎮痛剤として医薬用に使われる。白色の結晶または結晶性粉末で、においはない。水に溶けやすく、光によって変化する。麻薬及び向精神薬取締法により取扱いが規制されている毒薬である。
モルヒネの鎮痛作用は中枢神経系に作用することによるが、その特徴は睡眠に陥る前または睡眠を伴わずにおこり、多幸感をおこす。量を増すと、傾眠状態、悪心、嘔吐(おうと)、呼吸抑制がみられる。そのほか、抗利尿ホルモンの分泌を促進して尿量の減少をみたり、高血糖の発現や瞳孔(どうこう)の収縮もみられる。腸管に対しては便秘がおこる。したがって、モルヒネの薬理効果は鎮痛のほか、止瀉(ししゃ)剤として頑固な下痢症の治療にアヘンチンキなどが用いられたり、催吐剤としてアポモルヒネが使われる。
モルヒネは繰り返して用いることにより耐性を生ずるとともに、身体性依存および禁断現象が現れる。しかし、癌性疼痛(がんせいとうつう)にはなくてはならない鎮痛剤であり、注射のほか、錠剤、顆粒(かりゅう)剤、液剤があり、とくに特効製剤(徐放(じょほう)錠、カプセル、細粒)が内用で癌性疼痛のコントロールに繁用されている。また、副作用である呼吸抑制に対しては麻薬拮抗(きっこう)剤であるナロルフィン、レバロルファン、ナロキソンが用いられ、分泌液の増加に対しては硫酸アトロピンを配合したモルヒネアトロピン注射液が用いられる。
なお、モルヒネ誘導体のうち、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)は効力も大であるが副作用も大で、医薬用には使われていない。
[幸保文治]
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7,8-didehydro-4,5-epoxy-17-methyl-(5α,6α)-morphinan-3,6-diol.C17H19NO3(285.34).ケシ科Papaver somniferumの未熟果中に含まれる.アヘンの主アルカロイドで,約10% 以上含有される.強力な麻酔鎮痛作用を有し,その名称はギリシア神話の眠りの神Morpheusに由来する.通常,一水和物で得られる.白色針状または柱状晶.110 ℃ で水和水を失い,230 ℃ で分解し,紫色となる.
1.32.pKa 6.13.アルカリ水に易溶,熱メタノールに可溶,水に難溶.
-132°(メタノール).λmax 285 nm(水).酸化を受けやすく,また光によって褐色となる.塩酸塩(塩酸モルヒネ)は,皮下注射後数分で作用が現れ,半時間で極点に達し,数時間後に衰え,約半日後に消失する.このような鎮痛作用と同時に,不快感を忘れさせ,恍惚(こうこつ)感を起こさせるので,習慣性,耽溺(たんでき)性があり,麻薬に指定されている.LD50 500 mg/kg(マウス,皮下).[CAS 52-27-2]
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(浅井文和 朝日新聞記者 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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… 作用の本体となるのは全量の約25%を占める20種以上のアルカロイドであるが,これらは化学的には次のように二つに大別される。一つはフェナントレン骨格をもつモルヒネ(10~16%),コデイン(0.8~2%),テバインthebaine(0.5~2%)であり,他の一つはイソキノリン骨格をもつパパベリンpapaverine(0.5~2.5%),ノスカピンnoscapine(ナルコチンともいう。5~7%)で,これ以外のアルカロイドの含量はきわめて低く,ほとんどが0.01%以下である。…
…たとえば,間脳の第三脳室を取り囲む部分を電気で刺激して痛みを抑えるのに成功したという報告がある。このほか,痛みの強力な治療薬であるモルヒネと似た物質が脳の中でつくられることも知られている。脳や脊髄にはモルヒネと特異的に結合する受容体があって,この受容体と結合する活性物質を探し求めた結果発見されたものである。…
…1820年,ハーメルンに薬局を開設した。薬局での仕事のかたわら,アヘンに含まれる〈睡眠物質〉の研究に従事し,1805年モルヒネの単離,抽出に成功した。彼はこの結果を05年,06年と2度にわたって発表したが,当時は世の注目を集めることとならず,17年の再出版でようやく認められることとなった。…
…作用部位とその作用の特徴によって,麻薬性鎮痛薬と解熱性鎮痛薬に大別される。
[麻薬性鎮痛薬]
天然のアヘン製剤をはじめ,その主成分アルカロイドであるモルヒネ,コデインと,モルヒネの化学構造の一部を変えた半合成品のエチルモルヒネ,オキシコドン,ジヒドロコデイン,さらに合成麻薬のペチジン,メサドンなどが含まれる。合成麻薬の化学構造も,基本的にはモルヒネの構造に由来したものが多い。…
…ジアセチルモルヒネdiacetylmorphineの一般名。モルヒネのアセチル化によってつくられる。…
…薬理学的には,アヘン総アルカロイドと,これから分離して得られるモルヒネ,コデイン,これらの半合成体(ヘロイン,オキシコドンなど),およびモルヒネ類似の薬理作用と依存性を有する合成薬物(ペチジンなど)をさす。英語はギリシア語のnarkē(麻酔,麻痺)に由来し,これらの薬物を摂取すると,意識が混濁したり,感覚が麻痺状態になることから,麻酔様状態を起こす薬物の意でつけられた。…
…それらの中で,薬効と関連するものを有効成分という。化学成分の研究は1803年F.ゼルチュルナーがアヘンからモルヒネを単離して以来,キナ皮からキニーネ,タバコからニコチン,吐根からエメチン,コカ葉からコカイン,さらにストリキニーネ,アトロピン,ヒヨスチアミン,エフェドリンといった重要な,生理活性の強いアルカロイドがいろいろな薬用植物から次々と単離された。さらに1837年J.F.リービヒとF.ウェーラーがアミグダリンを加水分解して糖を得たことから,配糖体が薬効成分として大きな位置を占めることが知られるようになった。…
※「モルヒネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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