薬物依存症(読み)やくぶついぞんしょう(英語表記)drug dependence

知恵蔵の解説

薬物依存症

日本では、有機溶剤覚醒剤薬物乱用の大半を占めている。多くは好奇心による使用が、乱用のきっかけになっている。依存性薬物には、中枢神経系に作用して一時的に爽快感や覚醒感、あるいは緊張感や苦痛の抑制があるので、次第に薬物への欲求が強まり、やめられなくなる。反復使用するうちに効果が減少し(耐性)、使用量を増やさなければならなくなる。一方、使用を中断すると不眠や脱力感など、薬物特有の不快な離脱症状が現れ、この苦痛から逃れるために、繰り返し薬物を摂取することになる。大量に摂取すれば、急性中毒になる。周囲の出来事を曲解し、暴れ、錯乱状態に至ることもある。身体的にも危険な状態になる。乱用を続けると、落ち着きがなく怒りっぽくなったり、意欲を喪失し、無気力な状態になる。薬物依存独力で治すことは不可能なので、入院などにより断薬し、心身の障害を取り除くことが大切である。各自治体の精神保健福祉センターが窓口となる。

(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

薬物依存症【やくぶついぞんしょう】

薬物摂取の経験のあとで,薬物欠乏による不快をさけるために使い続けたいという強迫を伴う行動。身体依存(薬物摂取の中断による症状出現,禁断症状)と,精神依存(快感を得たい,または不快感を回避したいという心理)に大別される。古くより,モルヒネコカイン,アルコール,バルビツール剤(催眠薬),覚醒(かくせい)剤など,医療医薬品の不適切な使用による依存症の発症があったが,近年は,遊蕩(ゆうとう)の目的で乱用する例が世界的規模で増大し,社会問題化している。
→関連項目外傷後ストレス障害買物依存症ギャンブル依存症クラック

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内科学 第10版の解説

薬物依存症(薬物中毒・依存症)

(4)薬物依存症
 依存性を形成する薬物はWHOにより9つのタイプに分類される(表16-2-9).精神依存と身体依存は連続した状態であり,中枢興奮性作用をもつ覚醒剤,コカイン,幻覚剤は精神依存にとどまり身体依存まで進展しない.一方,中枢抑制作用をもつ麻薬性鎮痛薬,アルコール,バルビツール酸誘導体類は身体依存まで進展する.薬物依存症に常時みられるのは薬物への精神依存と薬物を求める衝動である.薬物摂取による快感や満足感の獲得(正の強化効果・報酬効果)や,不安,苦痛からの解放(負の強化効果)により,薬物探索行動が始まる.この強化効果,報酬効果は脳内ドパミン神経系,特に中脳辺縁系が深く関与している.
 表16-2-9であげた薬物のうち現在臨床で使用可能なものは,麻薬性鎮痛薬,バルビツール酸誘導体類,塩酸コカイン,塩酸メタンフェタミンである.このほか,依存性に留意が必要な医薬品としては,向精神薬(ベンゾジアゼピン類,塩酸メチルフェニデート),中枢性鎮痛薬(塩酸ブプレノルフィン),抗Parkinson病薬(ビペリデン),食欲抑制薬(マジンドール)などがあげられる.これらの薬物は連用後に中止した際,薬物血中濃度が低下し効果が減弱したとき,退薬症候(離脱症状)が発現する恐れがあるため,注意を要する.[福本真理子]
■文献
福本真理子:アセトアミノフェン中毒の治療にノモグラムは有用か.中毒研究,23: 111-115,2010.
上條吉人:臨床中毒学(相馬一亥監修),pp1-38,医学書院,東京,2009.
Kearney TE: Therapeutic Drugs and Antidotes. In : Poisoning & Drug Overdose, 4th ed (Olson KR ed), pp404-509, McGraw-Hill, New York, 2004.

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