改訂新版 世界大百科事典 「モロコシ」の意味・わかりやすい解説
モロコシ (蜀黍)
sorghum
grain sorghum
Sorghum bicolor (L.) Moench
子実や茎葉を飼料とするために,また子実を食用や醸造原料とするために栽培されるイネ科の一年草で,ソルガムともいう。草丈は2~3mとなるが,最近の栽培品種は1~1.5mの短稈(たんかん)品種が多くなってきている。葉は芽生え時は数cmだが,徐々に大きな葉が伸び出て,大きなものでは長さ1mをこし,幅も10cmほどになる。トウモロコシの葉によく似るが,傷つくと濃紅褐色の斑ができる。茎(稈)は中空とならずに充実し,太さ2~4cm。一般には分げつは出ないか,出ても1~2本であるが,品種によっては多く出るものもある。夏に,茎の先に穂を出す。穂は,太い穂軸に10ほどの節があり,それぞれの節から5~6本の枝(一次枝梗)が放射状に出て,各一次枝梗に20本ほどの枝(二次枝梗)が対につき,これらがさらに枝分れして(三次枝梗)小穂をつける。1穂に2000~3000個の小穂がつく。各小穂は2小花よりなるが,下位小花は退化し,上位小花のみが稔実する。穂の形から,密穂型,開散穂型,中間型に分けられ,品種の特性となっている。密穂型は,枝梗が短く穂が円筒形~卵形,開散穂型は枝梗が長く疎で,成熟すると各枝梗の先が開いて垂れ下がる。また成熟すると穂首が曲がって穂全体が下垂する鴨首(かもくび)と呼ばれる型がある。穎果(えいか)は白色,黄色,赤褐色,黒色などの楕円球で,長径4~5mm,短径2~3mmである。1000粒の重さは23~28g。
原産地はエチオピアを中心とする中央アフリカとされ,作物として5000年以上も前に栽培が始まったと推定されている。古代にエジプトに伝わり,前7世紀にはメソポタミアでも栽培された。前4世紀ころからインドでの栽培が始まり,4世紀以前に中国に伝わっていた。日本には中国または朝鮮半島から,平安時代かそれ以前に渡来したらしい。モロコシは変異が大きく,いくつかの系統群に分けられる。中国北東部で発達したコーリャン(高粱)は,草丈高く,密穂型が多く,品種は300を越え,日本のモロコシもこの系統群のものである。中央アフリカで発達したマイロは,穂が卵形となる密穂型で,粒が大きく,穀実用としてすぐれ,品種改良が進んでアメリカを中心として,世界での栽培量が最も多い系統群である。そのほか南アメリカのカファkafir,北アフリカのドゥラdurraなどの品種群がある。晩春~初夏に種をまき,秋に収穫する。強健な作物で病虫害は少ないが,アワノメイガやアワヨトウなどの虫害を受けることがある。現在,先進国では生産量のほとんどが飼料用で,デントコーンとともに配合飼料の主原料となっている。食用とするには,渋みがあるので強く搗精(とうせい)し,製粉してだんごや菓子などとする。また,茅台酒(マオタイチユウ)などの醸造原料にする。モロコシの変種にはサトウモロコシやホウキモロコシなどがある。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報