改訂新版 世界大百科事典 「ヤダケ」の意味・わかりやすい解説
ヤダケ (矢(箭)竹)
Pseudosasa japonica(Sieb.et Zucc.) Makino
イネ科の大型のササ。シノダケ(篠竹)の名もある。稈(かん)はまっすぐで,主として上方から1節に1本の枝が出る。細長い葉が垂れ下がり,美しい。名のように昔から弓の矢に用いられる。関東以南に広く自生し,大きいものは直径2cm,高さ5m,茎の節は低く,節間は長い。小穂は10個ぐらい,おしべは3本。稈は弓の矢のほか釣り竿にも用いられ,観賞用に栽植もされる。全国各地で栽培され,中国,台湾の一部にもある。ラッキョウヤダケ(薤矢竹)cv. Tsutsumianaは稈も地下茎も節間が交互にふくれて,ラッキョウをつらねたようである。ヤクシマヤダケ(屋久島矢竹)P.owatarii Makinoはヤクシマダケともいい,九州の屋久島に産する。葉のエキスにバンフォリンbanfolineという制癌成分があるとして注目されたことがある。丈は低く,葉にも竹の皮にも肩毛がない。
スズダケSasamorpha borealis (Hack.) Nakaiは,稈がまっすぐに立ち上方から節ごとに1枝が出,葉鞘(ようしよう)は紫色を帯びる。高さ2m以下で,ヤダケの小型のようにみえる。稈は工芸品つくりに,生きたものは土止めに適する。分布は全国にわたり,韓国にもある。ススタケ(煤竹)はこのスズダケとは関係なく人工的につくられたもので,マダケ,モウソウチクなどをカヤぶきの家の屋根のなかで長年のあいだ煤煙でくすぶらせたもので,細工物に利用され,高価である。なお薬剤を塗り加工したものもある。
執筆者:上田 弘一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報