日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライフル射撃競技」の意味・わかりやすい解説
ライフル射撃競技
らいふるしゃげききょうぎ
rifle shooting
ライフル銃を用い、射撃場rangeにおいて標的をねらい、その得点によって勝敗を競う競技。日本国内では、「ライフル射撃競技」という名称のなかにピストル射撃競技も包括されているが、ここではライフル銃を使用する競技についてのみ解説する。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
競技の歴史
火薬と銃砲の発明以来、ヨーロッパを中心として競技化が進められ、16世紀にはヨーロッパ各国で射撃クラブによる競技会が開催された。第1回世界射撃選手権大会は、1897年にフランスのリヨンで開催された。オリンピック大会では第1回アテネ大会から実施されている。日本は1952年(昭和27)ヘルシンキ大会から参加し、ライフル射撃競技では1992年(平成4)のバルセロナ大会で木場良平(こばりょうへい)(1962― )が小口径ライフル3姿勢競技で初の銅メダルを獲得した。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
競技の概要
競技は、射撃の姿勢、射撃距離、時間、発射数などでいくつかの種目に区分される。予選、本選から構成されており、本選の結果に基づき順位が決定される。なお、オリンピックで実施される5種目(50メートルライフル3姿勢男子・女子、10メートルエアライフル男子・女子・男女ミックスチーム。男女ミックスチームは2020年〈令和2〉の東京大会〈2021年開催〉から追加)のうち、10メートルエアライフル男女ミックスチーム以外の4種目では、さらに本選の上位8名によりファイナル(決勝)が実施される。そのうち10メートルエアライフル男子・女子の2種目は12発目までの合計点により第8位(最下位)が脱落。さらに2発ごとに勝ち抜きで順位が決定し、最下位の選手が脱落していき、最後は24発目の合計点により優勝者が決まる。50メートルライフル3姿勢男子・女子の各ファイナルは、本選120発の上位8名により、膝射(しっしゃ)15発、伏射15発、立射15発で競うが、40発目までの合計点により7位と8位が決定されて、最後は45発目までの合計点により優勝者が決まる。10メートルエアライフル男女ミックスチームでは、本選の上位5組10名による各チーム48発ずつの勝ち抜き方式によるファイナルが実施される。なお、ファイナルの得点は小数点第1位まで採点され(最高得点は10.9点)、より精密な射撃技術が求められるとともに、1発ごとに得点と順位が表示されることから、選手の緊張が手にとるように伝わりたいへん興味深い競技システムである。
[日本ライフル射撃協会 2022年2月18日]
競技の変遷
第1回オリンピック・アテネ大会当時のライフル射撃競技は、大口径ライフル銃を使用した競技種目であったが、20世紀に入ると小口径銃(22口径)を使用する種目に変わった。さらにロサンゼルス大会(1984)からは空気銃(エアライフル)種目が追加され、ヨーロッパ諸国のみならず多くの国々でもっとも手軽に行うことができる射撃として普及している。標的は、長く紙製であったが、バルセロナ大会(1992)から、弾の当たった位置をセンサーで感知し、得点表示を行うことができる電子標的装置が採用され、瞬時に、観客も含め得点を見ることができるようになった。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
ライフル射撃競技の種目
ライフル銃を使用し、固定された一つの標的に対して決められた数の弾を制限時間内に発射し、合計点を争う。射撃の姿勢は、片膝(かたひざ)を立てて座り、立てた膝の上で銃を構える「膝射姿勢」、伏せて銃を構える「伏射姿勢」、立って銃を構える「立射姿勢」の三つがあるが、競技種目は立射姿勢、伏射姿勢、3姿勢(膝射+伏射+立射)の3種である。さらに、使用する銃砲と弾の種類によって300メートルライフル(口径8ミリメートル以下の大口径ライフル銃弾を使用)、50メートルライフル(口径5.6ミリメートル=22口径の小口径ライフル銃弾を使用)、10メートルエアライフル(口径4.5ミリメートルの空気銃弾を使用)の三つに分けられている。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
エアライフル射撃競技
射撃距離は10メートルで、空気銃を使用する。国際競技会は立射姿勢のみで、男子・女子ともに60発により競技が実施される。国内競技会では前述の立射姿勢のほか、伏射姿勢の競技が行われている。立射姿勢の男子・女子各60発種目はオリンピック種目である。2020年の東京大会(2021年開催)からは、男女1名ずつで本選40発を発射する男女ミックスチーム種目が追加された。
[日本ライフル射撃協会 2022年2月18日]
小口径ライフル射撃競技
射撃距離は50メートルで、22口径の小口径ライフル銃を使用する。伏射姿勢、3姿勢の競技が行われている。3姿勢の男子・女子各120発(膝射40発+伏射40発+立射40発)はオリンピック種目、伏射60発競技は世界選手権種目である。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
大口径ライフル射撃競技
射撃距離は300メートルで、口径8ミリメートル以下の大口径ライフル銃を使用する。伏射姿勢、3姿勢、狩猟用ライフル銃を使用するハンティング・ライフル競技が行われている。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
ビームライフル(光線銃)射撃競技
射撃距離は10メートルで、光線銃を使用する。光線銃は銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)の制約を受けないことから、年齢性別を問わず広く使用することができる。競技は国内だけの種目であり、立射姿勢が行われている。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
前装銃射撃競技
射撃距離は50メートルと25メートルで、火縄銃ほかの前装銃を使用する。競技は、立射姿勢、膝射姿勢、伏射姿勢、古式砲術姿勢があり、それぞれ10発競技が行われている。前装銃射撃は国際的にも実施されており、とくに火縄銃を使用する立射姿勢の競技は「Tanegashima(種子島)」とよばれている。
[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]
ランニングターゲット射撃競技
ライフル銃、空気銃などを使用して移動標的を射撃する競技。50メートル競技と10メートル競技の2種目がある。
(1)50メートル競技 射撃距離50メートル、地上高1.4~1.45メートル、区間10メートルを左右に走る猪像的(ちょぞうてき)を、22口径リムファイアライフル銃を使用し射撃する。種目としては、10メートルを5秒で走行するスローラン30発と2.5秒で走行するファストラン30発の計60発の合計点で競う「50メートル30+30」と、同じくスローラン20発とファストラン20発をランダムに混ぜた計40発の合計点で競う「50メートルミックスラン」がある。ランニングターゲット50メートル競技は、1988年ソウル大会までオリンピック正式種目として実施されていたが、現在では行われていない。
(2)10メートル競技 射撃距離10メートル、地上高1.4~1.45メートル、区間2メートルを左右に走る同心円標的を、4.5ミリメートルエアライフル銃を使用し射撃する。種目としては、50メートル競技と同様、「10メートル30+30」と「10メートルミックスラン」がある。ランニングターゲット10メートル競技は、1992年バルセロナ大会から2004年アテネ大会までオリンピック正式種目として実施されていたが、現在では行われていない。なお、日本選手権大会(毎年)および、国際射撃連盟International Shooting Sport Federation(ISSF)が管轄する世界選手権大会(4年に1度)では実施されている。
[日本クレー射撃協会 2019年8月20日]
バイアスロン競技
スキーの距離競技と小口径ライフル銃を使用する射撃競技を組み合わせた冬季近代二種競技。
[小橋良夫]