ラクルテル(読み)らくるてる(英語表記)Jacques de Lacretelle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラクルテル」の意味・わかりやすい解説

ラクルテル
Lacretelle, Jean Charles Dominique de

[生]1766.9.3. メッツ
[没]1855.3.26. マコン
フランスの歴史家,ジャーナリスト。パリ高等法院の弁護士を経て,革命期間中はフイヤン・クラブに属し,『ジュールナル・デ・デバ』の編集に参加。王党派に対する共感をカムフラージュするため一時軍隊に入ったが,「テルミドール九日」 (1794.7.27.) 以後パリに戻った。第一帝政期の 1809年パリ大学の史学教授となり,王政復古に尽力。 1811年アカデミー・フランセーズ会員。主著『フランス革命史』 Précis d'histoire de la Révolution (5巻,1801~06) ,『18世紀フランス史』 Histoire de France pendant le XVIIIe siècle (6巻,1808) ,『宗教戦争時代のフランス史』 Histoire de France pendant les guerres de Religion (1814~16) 。

ラクルテル
Lacretelle, Jacques de

[生]1888.7.14. コルマタン
[没]1985.1.2. パリ
フランスの小説家。外交官の父とともに少年時代を外国で過ごし,父の死後パリで中等教育を受け,のちイギリスのケンブリッジ大学に学ぶ。少年の異性を恐れる心理を描いた自伝的小説『ジャン・エルムランの不安な生活』La Vie inquiète de Jean Hermelin(1920),ユダヤ系青年の苦悩に満ちた成長を扱った『反逆児:シルベルマン』Silbermann(1922)を書き,的確で節度ある心理描写に優れた才能を示した。ある家族の 3世代にわたる歴史とその零落を描いた 4部作『レ・オー=ポン』Les Hauts-Ponts(1932~35)のほか,エル・グレコゴヤなどを論じた『スペインからの手紙』Les Lettres espagnoles(1927)がある。1936年アカデミー・フランセーズ会員。(→心理小説

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラクルテル」の意味・わかりやすい解説

ラクルテル
らくるてる
Jacques de Lacretelle
(1888―1985)

フランスの小説家。ソーヌ・エ・ロアール県に生まれる。ケンブリッジ大学に学ぶ。内気な青年の心理を手記形式で描く『ジャン・エルムランの不安な生活』(1920)、ついで『シルベルマン』Silbermann(1922。フェミナ賞受賞)で地位を得る。優秀なユダヤ人生徒シルベルマンに対する迫害と、彼の反抗を描くこの小説は、ユダヤ人問題を扱って名高いが、また、友人の目でこれを描くという視点を通じて社会における差別また同化の機構をとらえて成功した。抑制の効いた心理分析と、巧みな小説構成を武器としてラクルテルはペシミスティックな人間観察を多くの作品にまとめた。『ラ・ボニファス』(1925)、『結婚学』(1929)、『シルベルマンの帰還』(1930)や、人手にわたった土地に執着する女主人公を通して地方の没落名家の運命を見つめる四部作『レ・オー・ポン』Les Hauts Ponts(1932~35)など。また多くの回想を含む『生者とその影』Les Vivants et leur ombre(1977)が晩年の作としてある。アカデミー会員。

[小林 茂]

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百科事典マイペディア 「ラクルテル」の意味・わかりやすい解説

ラクルテル

フランスの作家。文学的伝統のある家柄に生まれ,処女作《ジャン・エルムランの不安な生活》(1920年)をはじめ,古典的な厳格な構成をもった心理小説を書いた。代表作《シルベルマン(反逆児)》(1922年)のほか《ラ・ボニファス》《オー・ポン家の人々》4巻等。

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