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ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯 ラサリーリョ・デ・トルメスのしょうがいLa vida de Lazarillo de Tormes, y de sus fortunas y adversidades

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯
ラサリーリョ・デ・トルメスのしょうがい
La vida de Lazarillo de Tormes, y de sus fortunas y adversidades

スペインの悪者小説の最初の作品で,原題は『ラサリーリョ・デ・トルメス,その幸運と不運の生涯』。作者未詳。 1554年にアルカラ,ブルゴス,アントウェルペンで出版された版本が現存する最古のもの。「新たに増補せる第2版」とアルカラ版にあり,種々の資料から 39年以前に書かれたものと推定される。作者としては,ディエゴ・ウルタド・デ・メンドサ,セバスティアン・デ・オロスコ,フアン・デ・オルテガの名があげられているが,いずれも確証はない。物語は一人称による自伝の形式をとり,手癖のよくない粉屋の伜ラサロが,父の死後,モーロ人の馬丁と情を通じた母によって盲目の乞食に売られたのを皮切りに,吝嗇漢の坊主,気位ばかり高い貧乏従士,淫売宿の亭主などに仕えて苦労を重ねたのち,水売り,おふれ係になって落ち着き,庇護者の司祭の妾をそれと知りつつめとるまでを語る。人間性と風俗の的確な観察から生れたピカロ picaro,すなわち現実主義的な人生観の権化ともいうべきアンチ・ヒーローを中心にした,この悪者小説 novela picarescaの出現は,当時流行の牧歌小説,特に騎士道小説のような理想主義的な作品の衰退を早める役割を果し,写実的な近代小説の誕生に貢献した。 17世紀のアレマンケベド・イ・ビリエガスエスピネルらによる悪者小説の隆盛,さらにはフランス,イギリスにおけるその流布も,この匿名の小さな書物に胚種をもつ。

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百科事典マイペディアの解説

ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯【ラサリーリョデトルメスのしょうがい】

スペインのピカレスク小説。1554年出版。盲目の乞食,恐ろしく貪欲(どんよく)な司祭,一文なしのくせに気位ばかり高い従士などに仕えた下層出身の少年が,みずからの遍歴の体験を一人称で語ることにより,16世紀のスペイン社会とそこに住む人間たちの汚濁を痛烈に風刺した作品。
→関連項目アレマン悪者小説

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯
らさりーりょでとるめすのしょうがい
La vida de Lazarillo de Tormes

スペインの小説。作者不詳。現存するもっとも古い版は1554年のものだが、それよりも古い版があったと推定されている。この物語は、あまり自慢にならない両親の間に生まれたラサリーリョの成長の過程を、庇護(ひご)者にあてた手紙で語る形式をとっている。ラサリーリョはまず、たいへん悪知恵にたけた盲人の手引となり、絶えず飢えに苦しめられながら、そこから逃げ出す才覚を身につけさせられる。ついで吝嗇(りんしょく)きわまりない聖職者、体面感情ばかりが強い従士、ペテン師の免罪符売りなどに仕え、いまでは主席司祭との関係が噂(うわさ)されている女と結婚して、幸せの絶頂にいるという皮肉なことばで終わっている。簡潔なことばで他の階級の人々の生活を批判的に描いていたこの短い小説は、そこにみられる批判精神、描写力、ユーモアなどによって、ピカレスク小説の傑作となっている。[桑名一博]
『会田由訳『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』(岩波文庫)』

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