ドイツの哲学者。リッケルト、ウィンデルバントに師事し、西南ドイツ学派に属する。1905年『法哲学』によって教授資格取得、1913年ハイデルベルク大学員外教授。
カントのコペルニクス的転回の意義を、単に存在領域のみならず、広義の対象領域である妥当領域にまで及ぼすことにより、「存在」の範疇(はんちゅう)を論ずる「哲学」に対し、範疇の範疇である「妥当」を論ずる『哲学の論理学』(1911)を構想した。ラスクはプラトン以来の二世界説を、存在領域と妥当領域を二つの独立の領域として引き離す誤った二重化として退け、対象そのもののなかに論理的形式と非論理的質料を認める二要素説を提起することによって、カント哲学の客観主義的解釈を徹底化した。また真理と虚偽を対象と意味との合致としてではなく、対象=意味のなかに実現されている形式と質料の合一状態が主観によって打ち破られて生ずる調和・不調和としてとらえ直すことによって、独自の『判断論』(1911)を展開した。
彼は新カント学派の俊英として嘱望されていたが、第一次世界大戦に従軍し、惜しくも1915年ガリツィアで戦死した。
[野家啓一 2015年4月17日]
デンマークの言語学者。比較言語学の創始者の一人。コペンハーゲン大学図書館副館長(1808)、のち同大教授(1825)を務めた。デンマークの学士院の懸賞論文として1814年に提出した『古代ノルド語の起源に関する研究』Undersøgelse om det gamle nordiske eller islandske sprogs oprindelse(1818刊行)で、のちに「グリムの法則」とよばれたゲルマン語の音韻推移の現象を初めて明らかにした。その後、南ロシア、ペルシア、インドを旅行し、言語調査を行うとともに、東洋諸語の多くの稿本を収集した。ゾロアスターの聖典の言語アベスタおよび古代ペルシア語とサンスクリット語との親縁性を確証し、またケルト語の印欧語的性格を明らかにした。ほかに、アイスランド語、アングロ・サクソン語、フリジア語などの文法書を書いた。
[松本克己 2018年8月21日]
アメリカの政治家、国務長官。ジョージア州チェロキー生まれ。オックスフォード大学などで学ぶ。1934年からカリフォルニア州ミルズ・カレッジで教鞭(きょうべん)をとったのち、第二次世界大戦時には陸軍に加わり、中国・ビルマ(現ミャンマー)・インド戦線副参謀長として活躍。戦後まもなく国務省に入り、国連担当国務次官補、国務次官代理などを経て、1950年に極東担当国務次官補に就任。1951年の対日講和条約の作成に参画。1952~1960年ロックフェラー財団理事長。1961年から1969年1月までケネディ、ジョンソン両政権の国務長官を務め、政府のベトナム戦争政策を推進、擁護した。1970年よりジョージア大学国際法教授。
[藤本 博]
『ディビッド・ハルバースタム著、浅野輔訳『ベスト&ブライテスト』全三冊(1976・サイマル出版会)』
デンマークの言語学者。コペンハーゲン大学東洋語教授(1831-32)。少年時代から約50ヵ国語を修めて諸国語の文法書を編纂。《古代北欧語あるいはアイスランド語の起源に関する研究》(1814執筆,18刊行)の中で,いわゆるゲルマン語音韻推移によって,他のインド・ヨーロッパ語とゲルマン諸語との親縁関係を証明し,19世紀の科学的な歴史・比較言語研究の先駆者となる。一般に〈グリムの法則〉として知られる理論は,グリム以前にラスクによって発見されていたが,ラスクの著作はデンマーク語によったため,北欧以外に十分広まらなかった。
執筆者:菅原 邦城
ドイツの哲学者。新カント学派の一つである西南ドイツ学派に属する。彼は,論理的形式と感性的内容の相互独立性を否定し,両者を認識対象の非独立的な要素とみることによって,対象の中に論理的形式の存在を認め,これこそが対象をして対象たらしめるものであるとする。認識主観ではなくて論理が対象を構成するとみるこうした論理的客観主義の立場をカント哲学の真意とみた。
執筆者:関 雅美
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出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…その後,ウイルス病,センチュウなどの耐病虫性台木として注目された。日本には1918年に可食性の品種ラスクが,52年台木用の品種トロイヤーが導入された。とげはカラタチに比べ小さい。…
…エスキモー語とアレウト語からなる。両者の類似はすでに18世紀後半に気づかれているが,初めて同系の証明を企てたのは,印欧比較言語学史に有名なラスクRasmus K.Rask(1787‐1832)である。原エスキモー・アレウト語から二岐的に分かれたというよりむしろ,古くはさらに別の同系の言語があったと推定され,原エスキモー語も原アレウト語もベーリング海峡近辺におそらく存在した古い方言連続体の小断片にすぎぬものかもしれない。…
…エスキモー語とアレウト語からなる。両者の類似はすでに18世紀後半に気づかれているが,初めて同系の証明を企てたのは,印欧比較言語学史に有名なラスクRasmus K.Rask(1787‐1832)である。原エスキモー・アレウト語から二岐的に分かれたというよりむしろ,古くはさらに別の同系の言語があったと推定され,原エスキモー語も原アレウト語もベーリング海峡近辺におそらく存在した古い方言連続体の小断片にすぎぬものかもしれない。…
…J.グリム(グリム兄弟の兄)と同時代のデンマークの言語学者R.K.ラスクによってすでに確認されていたインド・ヨーロッパ諸語(インド・ヨーロッパ語族)とゲルマン語(ゲルマン語派)の間の子音の規則的対応を,グリムが定式法則化したもの。グリム自身はこの規則的対応を音韻推移(ゲルマン語音韻推移)と名づけたが,グリムの名にちなんでグリムの法則とも呼ばれる。…
※「ラスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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