ラパポート(読み)らぱぽーと(英語表記)Anatol Rapoport

デジタル大辞泉 「ラパポート」の意味・読み・例文・類語

ラパポート(Anatol Rapoport)

[1911~2007]米国数学者・心理学者。ロシアに生まれ、米国に帰化国際政治学ゲームの理論適用、抑止戦略論を批判するなど平和研究先駆者となった。著「戦争・ゲーム・論争」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラパポート」の意味・わかりやすい解説

ラパポート
らぱぽーと
Anatol Rapoport
(1911―2007)

アメリカの数学者、心理学者。アメリカ平和研究の開祖としてケネス・ボールディングとともに著名。ロシア生まれ。1922年渡米し、1928年帰化。ウィーンピアニストとして活動したのち、シカゴ大学で数学の博士号を得、ミシガン大学で研究した。『戦争・ゲーム・論争』Fights, Games, and Debates(1960)、『囚人ジレンマPrisoner's Dilemma(1965、共著)のような名著もそこで生まれた。その後トロント大学で数学と心理学を講じ、ウィーンの高等研究所所長を経てトロント大学に戻った。同大学に「平和科学カレッジ」College of Science for Peaceを開設し、実証平和研究も制度上応用が可能にならない限り平和をもたらしえないと論じて、制度化を含む広範な平和理論を展開した。著書は多く、なかでも『戦略と良心』Strategy and Conscience(1964)、『N人ゲーム理論』N-Person Game Theory(1970)、『人工環境の中での紛争Conflict in Man-made Environment(1974)、『暴力起源Origins of Violence(1989)、『平和』Peace(1993)などは不朽金字塔である。ほか自伝確信と懐疑』Certainties and Doubts(2001)もある。

[関 寛治・松尾雅嗣]

『A・ラパポート著、真田淑子訳『操作主義哲学――思考と行動の統合』(1967・誠信書房)』『坂本義和・関寛治・湯浅義正訳『戦略と良心 上』(1972・岩波書店)』『A・ラパポート・A・M・チャマー著、廣松毅他訳『囚人のジレンマ――紛争と協力に関する心理学的研究』(1983・啓明社)』『A・ラパポート著、関寛治編訳『現代の戦争と平和の理論』(岩波新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ラパポート」の意味・わかりやすい解説

ラパポート
Anatol Rapoport
生没年:1911-

アメリカにおける平和研究のパイオニアの一人。ロシアに生まれ,1922年渡米し,のち帰化する。ウィーン国立音楽院でピアノ,作曲,指揮を学ぶ。その後シカゴ大学で数学の学位をとり(1941),数理生物学と数理心理学とを専攻した。ミシガン大学の精神衛生研究所時代(1955-70)に,リチャードソンLouis F.Richardson(1881-1953)の平和研究の伝統にもとづいて数学的ゲーム理論を応用した平和研究の基礎を確立した。ラパポートの著書・論文は科学的思考の及ぶ全領域にまたがっているが,平和研究に関連したものとしては《戦争・ゲーム・論争》(1960),《戦略と良心》(1964),《一般意味論Science and the Goals of Man》《囚人のジレンマ》(ともに1965),《人工環境の中の紛争》(1974)などが有名である。
執筆者:

ラパポート
David Rappaport
生没年:1911-60

アメリカの心理学者。ハンガリーのユダヤ人家庭に生まれ,大学で数学,物理学,心理学を学んだ後,1938年アメリカに移住。アメリカ精神分析協会の臨床異常心理学部門の創設にかかわり,臨床心理学の発展に貢献した。精神分析学の立場から自我心理学と社会心理学の統合を目ざした。多方面で活躍したが,おもな仕事に,精神分析理論の体系化,心理検査,特に連想検査法の研究,思考過程とその病態化の研究,分裂病(統合失調症)を対象としたロールシャハ反応の思考病理学的分析などがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android