日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦争社会学」の意味・わかりやすい解説
戦争社会学
せんそうしゃかいがく
sociology of war
戦争の本質を探究する社会学。かつてオランダのS・R・シュタインメッツは、その著『戦争社会学』(1929)などのなかで、戦争を必然とみなしてこれが社会発展に及ぼす影響を論じ、ナチス戦争観に影響を与えた。しかし第二次世界大戦後、このような戦争社会学は克服され、1960年代中ごろ定着した積極的平和研究の流れのなかで、ノルウェーのJ・ガルトゥングの構造的暴力論や構造的帝国主義論など、戦争社会学への新しい胎動がみられた。ここでは、世界秩序未来計画(WOMP)に代表されるような平和研究の規範的側面の強調に対しては、あくまで実証的な戦争研究としての戦争社会学への方法論上の再強調もなされ、D・シンガーらの『戦争の相関』(1978~79)やL・F・リチャードソンの『死闘の統計学』(1960)などデータ主義に基づいて戦争原因を探究した消極的平和研究の実証的な成果も取り入れられた。70年代後半以降は、軍産複合体、第三世界への武器輸出、地球的規模の軍拡競争の複合的諸レベルなど、個別的テーマへのアプローチも進んでいる。旧来の戦争社会学で取り扱われた戦争の起源、展開、意義、機能、および動因への実証的分析は、いずれも平和教育との関連で解明される必要性が強調されている。クラウゼウィッツ型戦略論に対するA・ラパポートの批判も、部分的には戦争社会学的実証性に基づいている。
[関 寛治]
『G・ブートゥール、R・キャレーリ著、高柳先男訳『戦争の社会学』(1980・中央大学出版部)』