ラーテル(読み)らーてる(英語表記)ratel

翻訳|ratel

デジタル大辞泉 「ラーテル」の意味・読み・例文・類語

ラーテル(ratel)

イタチ科の哺乳類。体長60~80センチ。体毛は黒色で、頭頂部から背面にかけては灰白色皮膚がきわめて厚く、鋭い歯や爪をもつ。アフリカインド生息ミツバチの蜜を好みミツオシエ一種とは共生関係にある。蜜穴熊。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーテル」の意味・わかりやすい解説

ラーテル
らーてる
ratel
honey badger

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科ラーテル属に含まれる動物の総称。この属MellivoraアフリカラーテルM. capensis1種とする考えと、そのうちサハラ砂漠以北からアラビア半島に分布するものだけをアフリカラーテルとし、インド北部やネパールのものはインドラーテルM. indicaという別種とする説とがある。最近では前者が有力となっている。ラーテルはその食性からミツアナグマともよばれるが、アナグマよりもずっとがっしりした体形で、体長60~80センチメートル、尾長20~30センチメートル。黒褐色の毛色をしているが、頭頂部から腰にかけて幅広い白、灰、淡黄色の帯が1本通っている。肛門腺(こうもんせん)から悪臭を放つ分泌物を出すので、スカンクの模様と同じく、この白帯は警告の役割をしている。草原や疎林にすみ、夜も昼も活動し、地中の昆虫やネズミ、いもなどを掘り起こして食べるほか、トカゲやヘビ、その他の動物の死体も食べる。悪臭がする分泌物を出すだけでなく、毛皮が堅くてヒョウなどの歯も通らないうえに、ラーテル自身の歯やつめが強大なので、ほかの動物はラーテルを避ける。またラーテルは気が荒く、ことに発情期には巣の近くに入ってきたヒツジ、ウシ、レイヨウ類も攻撃する。しかし、キツツキ目の小鳥ミツオシエとだけは、ハチの巣をめぐっての協力関係がつくられている。すなわち、ハチの幼虫や蜜蝋(みつろう)を好んで食べるミツオシエは、自身ではハチの巣を壊すことはできないため、巣をみつけるとラーテルを探して独特の声で案内し、ラーテルが壊して食べたあとでそれらを捕食することが知られている。ラーテルの野生での繁殖習性はわかっていないが、飼育下では1産2子である。

[朝日 稔]

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改訂新版 世界大百科事典 「ラーテル」の意味・わかりやすい解説

ラーテル
ratel
honey badger
Mellivora capensis

別名ミツアナグマ。好んでハチの巣を襲い,みつを食べる食肉目イタチ科の哺乳類。外観はアナグマに似て胴が太く短く,四肢が太いが,頭頂から尾の基部までの背中によく目だつ灰色ないし白色の幅広い帯が走る。他の部分は暗褐色ないし黒色。肛門腺はよく発達し,悪臭のある液を飛ばすことができる。体長60~75cm,尾長20~25cm,体重7~13kg。セネガルからスーダン,喜望峰に至るアフリカの大部分に分布する。ふつう岩の多い乾燥地帯に多くすむが,森林や湿地にも見られ,地中の穴を巣とする。ミツオシエという鳥と特異な共生関係にあり,ミツバチの巣を発見したミツオシエの鳴声に導かれて巣に到達するとラーテルはそれを壊し,みつを食べ,一方,ミツオシエは壊された巣のみつろうを食べるといわれる。ラーテルの皮膚はきわめて厚くじょうぶでミツバチの針を通さない。食物はほかに小哺乳類,トカゲ,小鳥など。妊娠期間は約6ヵ月,ふつう1産2子で,子は穴の中や岩の割れ目で育てられる。よく似た近縁種にインドラーテルM.indicaがある。
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