R&Bと略す。1940年代半ば、第二次世界大戦中から戦後にかけて発生したアメリカ黒人のボーカルを主体とするポピュラー音楽。ライオネル・ハンプトンやルイ・ジョーダンLouis Jordan(1908―1975)などジャズ系楽団のブギ・ウギのリズムを使ってジャンプする演奏が好まれ、ジャズ楽団と歌うブルース歌手や、エレキギターを用いたパワフルで新鮮なブルース歌手などが人気をよんだことから、従来の型式にとらわれない新しいブルースとして生まれたのがR&Bで、強烈なリズムとビート、活力、しゃれた都会的なセンスをもち、大衆娯楽としての魅力にあふれていた。その初期に、レイブンズ、オリオールズなど鳥の名をつけた(バード・グループとよぶ)ボーカルグループやジョー・ターナーJoseph Turner(1911―1985)、ルース・ブラウンRuth Brown(1928―2006)、レイ・チャールズ、ファッツ・ドミノFats Domino(1928―2017)らソロ歌手が活躍して白人たちからも注目された。1950年代の半ばにR&Bの白人化から生まれたのが、ロック・アンド・ロール(ロックン・ロール)であり、1960年代にはロックと称されるようになった。
[青木 啓 2017年11月17日]
『リー・ヒルデブランド著、松田洋子訳『ソウル、リズム&ブルースのスター』1・2(1996・東亜音楽社)』
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…40年代アメリカの黒人にとって,20年以上昔の同胞の音楽は,すでに共感の埒外(らちがい)にあったのだ。一般黒人大衆は,カンザス・シティを中心とする中西部の黒人ジャズ・メンがもたらしてニューヨークのハーレムに定着させた,リズム・アンド・ブルース(古典的な田舎のブルースを,より洗練させリズムを強調した現代的ブルース)に共感をおぼえていた。ジャズを志すプレーヤーは,ことごとくバップに向きを変え,古老たちの博物館的ニューオーリンズ・スタイルにはきっぱりと背を向けたのである。…
…1960年代を頂点とする,アメリカ黒人の現代的な大衆音楽。第2次世界大戦直後に興ったリズム・アンド・ブルースが,ゴスペル・ソング,ジャズ,白人のポピュラー音楽などの影響をうけ,ワシントン大行進(1963)に象徴される公民権運動の高まりにも刺激されて,黒人の感性を洗練されたサウンドで表現する音楽形態として発展した。これをそれ以前のリズム・アンド・ブルースと区別して,ソウル・ミュージックと呼ぶ。…
…ブルース自体はジャズの支持層よりもさらに底辺の黒人社会でダンス音楽として機能し続け,ブギウギを派生させるなど,民俗音楽から商業音楽へと性格を変えていった(社交ダンスでいう〈ブルース〉はスロー・フォックストロットのことであり,本来のブルースとは関係がない)。 南部農村から北部,東部,西部の工業地帯へ黒人労働力の移動に伴って,ブルースの基盤も都市ゲットーに重点を移し,1930年代からピアノ,ドラムスを導入してグループないしバンドの形で演奏されることが多くなり,第2次世界大戦のころには電気ギターを使うようになって,リズム・アンド・ブルースを生み,ロックの成立を促した。60年代以降,黒人大衆の社会生活や意識が大きく変わる中で,彼らにとってブルースのもっていた役割は小さくなりつつあるようである。…
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[アメリカのポピュラー音楽]
アメリカがポピュラー音楽の一つの中心地であることは広く認められているとおりだが,この国はかつて南部に多数の黒人奴隷を抱えていた特殊事情により,先進国型と植民地型の両方のポピュラー音楽をもつこととなる。前者は,ニューヨークの音楽業界が資本主義的生産様式に従って作り出すポピュラー・ソングとブロードウェー・ミュージカル(ミュージカル),つまりアメリカでよく使われる言葉でいえば〈メーンストリーム(主流)〉音楽であり,後者は,ローカルなセミプロ的ミュージシャンが民族的基盤から生み出したブルース,ラグタイム,ジャズ,リズム・アンド・ブルース,ロックンロールなどである。上記の2種は,白人系音楽と黒人系音楽にそれぞれ当てはまるものではない。…
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[ロックの誕生]
ロックを生み出す源となった音楽を,三つ挙げることができる。リズム・アンド・ブルース,カントリー・ミュージック,そしてポピュラー・ソングである。なかでもリズム・アンド・ブルースは決定的な影響を与えており,前述した偶数拍にアクセントをもつロックの基本的なビートも,そこにしばしば3連音符やシャッフル・ビートを導入してリズム感覚に味わいを加えているのも,叫ぶような歌い方やエレクトリック・ギターを激しくかき鳴らすことで緊張感を高めているのも,すべてリズム・アンド・ブルースから受け継いだ手法だとみてよい。…
※「リズムアンドブルース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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