翻訳|lysozyme
ムラミダーゼmuramidaseともいう。1922年,A.フレミングによって唾液(だえき),鼻汁,涙,軟骨,卵白中に存在することが見いだされた溶菌酵素。種々の動物組織に広く分布し,ある種の植物(キャベツ,カブなど)にも存在する。溶菌作用は,細菌細胞壁を構成する糖タンパク質(ムコペプチド)中の多糖類を加水分解する能力に由来し,Micrococcus lysodeikticusに対してとくに強力な溶菌効果を示すが,この酵素には細菌性疾患に対する治療効果はない。ちなみにフレミングは,この7年後に細胞壁の合成阻害によって抗菌性を示す抗生物質ペニシリンを発見することになる。
この酵素はとくに卵白中に多量に含まれ,結晶化も容易である。分子量1万4000,等電点pH=10.5~11.0の強塩基性タンパク質でアミノ酸配列のみならず,結晶X線回折法によって立体的構造も明らかにされており,基質の構造類縁体との結合様式や加水分解反応機構などが,構造模型に基づいて詳しく研究されている。
執筆者:川喜田 正夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
EC 3.2.1.17.ムコ多糖類を構成するN-アセチル-D-グルコサミン(NAG)とN-アセチルムラミン酸(NAM)残基間とのβ-1,4-グリコシド結合の加水分解反応を触媒する酵素.この酵素作用によって,グラム腸性菌の細胞壁は溶解する.卵白,涙,鼻汁,白血球に存在し,またファージに感染した細菌中にも見いだされる.卵白リゾチームは分子量1.3×104,129個のアミノ酸からなる.[CAS 9001-63-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…また,乳糖不耐性の乳児(小腸に固有の消化酵素であるラクターゼの遺伝的欠損によってミルク中の乳糖が消化されず,下痢を起こしやすい)に対する補充療法剤としてのβ‐ガラクトシダーゼ(ラクターゼと同様に乳糖を消化しうる酵素)もこのカテゴリーに入る酵素剤である。
[いわゆる消炎酵素剤]
キモトリプシン,ブロメラインその他の動植物,微生物起源のタンパク質加水分解酵素類や細菌細胞壁のムコペプチドの分解酵素であるリゾチームなどは,これらを内服した場合に種々の炎症症状を改善する作用,副鼻腔や気管支における分泌物,膿汁などの粘度を下げ排出を容易にする作用などが認められるとして,これらの目的で歯科領域,耳鼻咽喉科領域などで使用されているが,理論的裏づけは不明確のまま残されている。
[その他の酵素剤]
ヒト尿から抽出されるウロキナーゼ(血液凝固機構によって析出凝固したフィブリンすなわち繊維素を溶解する作用をもつ繊溶系の活性化酵素)は,血栓性の疾患に対して血栓の溶解を期待する治療剤として静脈内に注射される。…
※「リゾチーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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