リゾチーム(英語表記)lysozyme

翻訳|lysozyme

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

リゾチーム
lysozyme

ムコ多糖類を分解する酵素細菌細胞壁の主要成分ムロペプチド (ペプチドグリカン,ムレイン) の多糖類を水解し,溶菌を起させる。細菌,動物組織,卵白などに広く存在し,特に卵白からは結晶製品も得られる。 129個のアミノ酸から成り,活性中心の構造や作用機能などはよく研究されている。酸性では強い耐熱性を示すが,中性や塩基性では示さない。ヨウ素で失活し,亜硫酸で賦活される。ペニシリン発見者の A.フレミングに見出された溶菌酵素である。

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百科事典マイペディアの解説

リゾチーム

ムラミダーゼとも。細菌の細胞壁を構成するムコ多糖類を分解する溶菌酵素。1922年にA.フレミングが発見した。分子量約1万4000の塩基性タンパク質。唾液,鼻汁,涙,卵白,イチジクの乳液などに含まれる。酸や熱に比較的安定で,アルカリで不活性化する。なお,リゾチームには軽い感染防御作用があるだけで,細菌性疾患に対する治療効果はない。
→関連項目グラム陰性菌グロブリン

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栄養・生化学辞典の解説

リゾチーム

 細菌を溶解する酵素で,細胞壁のムコ多糖を加水分解する.卵白,涙,唾液などに存在.

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世界大百科事典 第2版の解説

リゾチーム【lysozyme】

ムラミダーゼmuramidaseともいう。1922年,A.フレミングによって唾液(だえき),鼻汁,涙,軟骨,卵白中に存在することが見いだされた溶菌酵素。種々の動物組織に広く分布し,ある種の植物(キャベツ,カブなど)にも存在する。溶菌作用は,細菌細胞壁を構成する糖タンパク質(ムコペプチド)中の多糖類を加水分解する能力に由来し,Micrococcus lysodeikticusに対してとくに強力な溶菌効果を示すが,この酵素には細菌性疾患に対する治療効果はない。

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大辞林 第三版の解説

リゾチーム【lysozyme】

主に細菌細胞壁に含まれる、糖タンパク質の一種を加水分解する酵素。細胞壁の化学構造の研究に利用される。動物組織・分泌液・卵白などに広く分布し、キャベツ・カブなどにもみられるが、生理的役割についてはほとんど不明。ムラミダーゼ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リゾチーム
りぞちーむ
lysozyme

細菌の細胞壁多糖類のなかでN-アセチルムラミン酸(NAMまたはMurNAc)とN-アセチルグルコサミン(NAGまたはGlcNAc)との間のβ(ベータ)1-4グリコシド結合(ムラミド結合)を加水分解する酵素で、ムラミダーゼmuramidaseあるいはムコペプチドグリコヒドロラーゼmucopeptide glycohydrolaseともいう(グリコシドは広義の配糖体と同義)。卵白、鼻粘液、唾液(だえき)、涙、乳汁、血漿(けっしょう)、尿のほか、イチジク、パパイヤ、カブなどの植物に含まれ、侵入細菌から生体を防護する役割をもつ。
 ペニシリンの発見で1945年ノーベル医学生理学賞を受賞したイギリスのフレミングが1922年に発見し命名したもので、鼻粘液や卵白などに、ある種の細菌を溶解する物質のあることを確認し、彼が単離したMicrococcus lysodeikticsという細菌がとくに急速に溶解されることから、これをリゾチームと名づけた(英語読みではライソザイム)。なお、この発見の経験がペニシリンの偶然の発見(1929)に役だったといわれる。その後、1945年にニワトリ卵白のリゾチームが結晶化され、1963年にはアミノ酸配列が決定された。アミノ酸129個からなる1本のポリペプチド鎖で、四つのジスルフィド結合で架橋されている。分子量は1万4307で、等電点は水素イオン濃度指数(pH)11.0の強塩基性のタンパク質である。立体構造は、1966年フィリップスDavid Chilton Phillips(1924―1999)らが1.5オングストローム(Å)分解能のX線解析によって酵素として初めて決定した。ポリペプチド鎖はα(アルファ)-ヘリックス(ポリペプチド鎖がとりうる安定な螺旋(らせん)構造の一つ)やβ-シート構造(タンパク質やポリペプチド鎖がとる二次構造の一種)などをとりながら、全体としてほぼ回転楕円(だえん)体の形の分子をつくりあげている。大きさは約45×30×30Åで、分子表面の中央に細長いくぼみがあり、加水分解される基質はここにはまり込んで酵素と水素結合を形成して保持され、NAMの舟型構造はゆがめられて半椅子(いす)型になる。β1-4グリコシド結合の切断は、52番目のアスパラギン酸と35番目のグルタミン酸の側鎖のカルボキシ基(カルボキシル基)2個の共同作用によって行われる。
 細菌の細胞壁のほか、キチン(NAGポリマー=重合体)やNAGオリゴマーも加水分解し、転移酵素としての活性もある。乳汁のα-ラクトアルブミンとアミノ酸配列がよく似ているため、同じ祖先遺伝子から進化してきたものと考えられている。なお、細菌に寄生するバクテリオファージT4も、リゾチームをもち、この164個のアミノ酸配列も決定されている。ニワトリのリゾチームがコードされている遺伝子は、三つのイントロン(介在配列。不要な塩基部分)が介在する四つのエキソン(タンパク質の設計図となる塩基配列)からなることが明らかになっている。[野村晃司]
『高分子学会バイオ・高分子研究会編『遺伝子組換えを駆使した蛋白質デザイン』(1987・学会出版センター) ▽小野修一郎編『タンパク質工学』(1989・丸善) ▽グウィン・マクファーレン著、北村二朗訳『奇跡の薬――ペニシリンとフレミング神話』(1990・平凡社) ▽三浦謹一郎他編『蛋白質の機能構造』(1990・丸善) ▽三浦謹一郎編『構造生物学』(1998・朝倉書店)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

リゾチーム

〘名〙 (lysozyme) 細菌の細胞壁のペプチドグリカンに作用して、細胞壁を溶解する酵素。生物界に広く分布し、哺乳動物では各種組織、唾液、涙、母乳、白血球などに分布しており、免疫機構が作動する前の生体の感染防御に働く。

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世界大百科事典内のリゾチームの言及

【酵素剤】より

…また,乳糖不耐性の乳児(小腸に固有の消化酵素であるラクターゼの遺伝的欠損によってミルク中の乳糖が消化されず,下痢を起こしやすい)に対する補充療法剤としてのβ‐ガラクトシダーゼ(ラクターゼと同様に乳糖を消化しうる酵素)もこのカテゴリーに入る酵素剤である。
[いわゆる消炎酵素剤]
 キモトリプシン,ブロメラインその他の動植物,微生物起源のタンパク質加水分解酵素類や細菌細胞壁のムコペプチドの分解酵素であるリゾチームなどは,これらを内服した場合に種々の炎症症状を改善する作用,副鼻腔や気管支における分泌物,膿汁などの粘度を下げ排出を容易にする作用などが認められるとして,これらの目的で歯科領域,耳鼻咽喉科領域などで使用されているが,理論的裏づけは不明確のまま残されている。
[その他の酵素剤]
 ヒト尿から抽出されるウロキナーゼ(血液凝固機構によって析出凝固したフィブリンすなわち繊維素を溶解する作用をもつ繊溶系の活性化酵素)は,血栓性の疾患に対して血栓の溶解を期待する治療剤として静脈内に注射される。…

※「リゾチーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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