リュウノウジュ(英語表記)(Borneo)camphor tree
Dryobalanops aromatica Gaertn.f.

改訂新版 世界大百科事典 「リュウノウジュ」の意味・わかりやすい解説

リュウノウジュ (竜脳樹)
(Borneo)camphor tree
Dryobalanops aromatica Gaertn.f.

フタバガキ科の常緑高木で,樹高55~65m,直径1~3mに達する。樹体全体に化学構造がショウノウに近似した,芳香の高いリュウノウ(竜脳,ボルネオール)を含む。樹幹は通直の円筒状で,枝下高が高く,板根(ばんこん)がよく発達する。樹皮は褐色で,成木では大きな片状にはげ落ちる。葉は単葉で互生し,葉身は長さ約7cm,幅4.5cmの卵形~楕円形,革質,濃暗緑色で,細かい平行脈がある。花は白色の両性花で,径約2cmあり,花弁5枚,萼片5枚,おしべ約30本。果実は径約2.5cmのどんぐり状の堅果で,長さ5~10cmのへら形をしたほぼ等長の5枚の翼をもつ。マレー半島南半部,スマトラボルネオの熱帯降雨林に分布する。

 リュウノウジュ属Dryobalanopsには他に6種があるが,いずれもこの地域内に分布し,サラノキ属やフタバガキ属などの樹種とともにいわゆるフタバガキ科林の主要構成要素となっている。リュウノウの含有量はリュウノウジュに最も多いが,この属のすべての樹種に共通にみられ,たとえば幹の切口やもんだ葉にショウノウ様の芳香がある。またときにはリュウノウは樹幹内にできた空隙に純粋な蠟白色のかたまりとして存在し,古くから中国,ヨーロッパなどで種々の医薬として珍重されてきた。ただしその後安価なショウノウの生産によって,リュウノウの価値は低くなり,積極的な採取は行われなくなった。この属の木材は,心材が赤褐色~橙褐色,気乾比重0.6~0.8で,工場や作業場の床板合板,トラック等の荷台建築部材等に広く用いられる。東南アジアから日本へ輸入されている南洋材のなかの主要木材の一つであり,インドネシアマレーシア通称であるカポールkapurの名で知られている。
外材
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リュウノウジュ」の意味・わかりやすい解説

リュウノウジュ
りゅうのうじゅ / 竜脳樹
[学] Dryobalanops aromatica Gaertn.

フタバガキ科(APG分類:フタバガキ科)の常緑高木。マレー半島、スマトラ、ボルネオに自生し、樹高50メートルを超す大木になるものがある。葉は長さ約10センチメートル、卵円形で先がとがり、肉厚で、枝に互生する。花は枝の先に円錐(えんすい)花序をなしてつき、白色で5弁、芳香がある。果実はほぼ球形で直径約3センチメートル、全体が萼筒(がくとう)で覆われ、萼筒の先は長さ7センチメートルほどの2枚の翼状になっている。

 材の周辺部は灰色または淡黄色、心材部は濃赤色で、堅く、家具材や室内装飾用材、船材、枕木(まくらぎ)などにマホガニー材の代用とされる。心材部には竜脳Borneo camphorが含まれ、ときには白い結晶として存在する。竜脳は古くから香料、薬料とされ、主成分はボルネオールである。樹皮に穴をあけたり、材を蒸留してとる竜脳油は、テルペン類を多く含み、眼薬や歯痛薬に用いられる。竜脳は中国には8世紀に伝わり、日本には18世紀までには伝来していた。

[星川清親 2020年11月13日]

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