日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロッシャー」の意味・わかりやすい解説
ロッシャー
ろっしゃー
Wilhelm Georg Friedrich Roscher
(1817―1894)
ドイツの経済学者、ドイツ旧歴史学派の中心的存在。ハノーバーに生まれる。ゲッティンゲン、ベルリン両大学で学び、ゲッティンゲン大学(1840)、ライプツィヒ大学(1848~89)で教壇に立ち、著作・教育の両面で精力的に活躍した。F・K・ザビニーやK・F・アイヒホルンらのドイツ歴史法学の手法を応用して経済学を歴史的方法によって体系化しようとし、その初期の著書『歴史的方法による国家経済学講義要綱』Grundriss zur Vorlesungen über die Staatswirtschaft nach geschichtlicher Methode(1843)にその試みを結実させ、同書の序文はやがて「歴史学派宣言」とみなされるようになった。国民経済は生成・発展する有機体であり、経済現象も法制・政治・文化等々の国家にかかわる全問題との関連で考察されなければならないと主張し、その観点から生産要素のあり方を基準にした発展段階説を展開した。五巻からなる主著『国民経済学体系』System der Volkswirtschaft(1854~94)をはじめ、多くの著書があり、経済学における歴史的・多面的考察の必要性を説いた功績は大きいが、他面、やや無理論的という批判から免かれてはいない。
[早坂 忠]
『山田雄三訳『歴史的方法に拠る国家経済学講義要綱』(岩波文庫)』▽『杉本栄一訳『16.17両世紀に於ける英国経済学史論』(1929・同文舘出版)』