ロンドンデリー(英語表記)Londonderry

翻訳|Londonderry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イギリス北アイルランド北西部の旧県名。アイルランド独立に際してイギリス統治下にとどまったアルスター 6県の一つ。1973年マーラフェルトリマバディーロンドンデリーの各地区と,クックズタウンコールレーンの各地区の一部に分割された。
イギリス北アイルランド北西部の都市,および地区(district council area)。旧ロンドンデリー県に属する。1969年隣接地域と合併し,1973年の自治体再編で北アイルランドの 26地区の一つになった。北アイルランド第2の都市で,ベルファストの北西約 100kmに位置し,フォイル川に臨む。古名,また現地での呼称でもあるデリー Derryは「カシの林」を意味するアイルランド語の doireに由来する。6世紀半ば聖コロンバによって修道院が建設され,宗教集落として発展したが,のちノール人の略奪に悩まされ,ノルマン朝以降も戦略上の要地としてしばしば被害を受けた。1613年ロンドン市(シティ)に植民地の一部として与えられ,以後ロンドンデリーと呼ばれるようになった。植民者は新しい町を建設し,その町を防壁で囲んだが,1641年のアルスターの反乱やその後の戦乱ではしばしば包囲された。特に 1689年のジェームズ2世軍による大包囲は有名で,市民は 105日間の抵抗ののち市の防衛に成功した(→ロンドンデリー包囲戦)。第1次世界大戦,第2次世界大戦時には海軍基地として利用された。主産業はシャツなどの衣類製造で,ほかに食品,化学製品などの軽工業が立地する。市街は周囲約 1.6kmの防壁に囲まれた丘の上の旧市街を中心に,フォイル川を越えて対岸に及んでいる。1960年代末から 1980年代にかけて北アイルランド紛争舞台となり,市の中心部は広範囲にわたって破壊された。ロンドンデリー(デリー)地区は起伏のある低地とスペリン山地のゆるやかな斜面からなり,東はリマバディー,南はストラベーン,西はアイルランド,北はフォイル湾に面する。サケ漁が盛んなほか,ヒツジ,家禽の飼育やオオムギの栽培が行なわれる。近代化政策に伴い再開発が進み,工業団地や住宅地が建設された。地区面積 380km2。地区人口 10万6889(2004推計)。

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百科事典マイペディアの解説

英国,北アイルランド北西部のロンドンデリー地区の特別市で北アイルランド第2の都市。衣類生産に特色があり,造船,皮革醸造,食品加工などの工業もある。衣類,畜産物輸出。546年に修道院が建てられたのが起源。17世紀にロンドン市に領地として与えられたため,この名前がつけられた。1960年代以降少数派のカトリック教徒の不満が爆発して激しい武力抗争の舞台になった。10万7877人(2011)。

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世界大百科事典 第2版の解説

北アイルランド第2の都市。単にデリーDerryとも呼ばれる。フォイル川河口に位置し,人口6万2697(1981)。アイルランドの守護聖人コルンバ(アイルランド名コルムキル)が546年にこの地に修道院を建立したことをたたえて,10世紀ころからデリー・コルムキルと呼ばれていた。しかし,イギリス支配期の1613年,ジェームズ1世がロンドン商人の組合にこの地への植民を許したことから,ロンドンデリーと呼ばれるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イギリス、北アイルランド北部の都市。1633年以前はデリーDerryとよばれ、1984年ふたたび旧称に復した。ベルファストに次ぐ北アイルランド第二の港湾・工業都市で、人口10万5066(2001)。フォイル川の河口近くに位置する。農村家内工業の伝統を引く綿紡績や醸造、食品などの産業のほか、第二次世界大戦期の海軍基地設置による港湾機能拡充の結果、石油化学工業や造船業も発達した。1610年イギリスの植民会社ロンドン・カンパニーが創設され、アイルランド植民地経営の拠点とされた。プロテスタント、カトリック両派の宗教的対立が激しく、イギリス支配に対するアイルランド住民の反発が絡んで両派の衝突が社会問題となっている。城郭都市で、旧市街は城壁に囲まれる。17世紀のセント・コロンバ教会がある。

[米田 巌]

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