一炊の夢(読み)いっすいのゆめ

  • いっすい
  • の 夢(ゆめ)
  • 一炊
  • 一炊(いっすい)の夢(ゆめ)

精選版 日本国語大辞典の解説

(唐の盧生が、身を立てるために楚国へ向かう途中、趙の都邯鄲(かんたん)で道士呂翁から枕を借りて眠り、夢に栄枯盛衰を体験するが、目覚めてみるとたきかけの粟飯(あわめし)がまだたき上がってもいないほどわずかの時間にすぎなかったという、沈既済の「枕中記」の故事から) 人生の栄華のはかないたとえ。黄粱(こうりょう)の夢。盧生の夢。邯鄲の夢枕。〔文明本節用集(室町中)〕
※大観本謡曲・鉢木(1545頃)「げにや盧生が見し栄花の夢は五十年、その邯鄲の仮枕、一炊の夢の覚めしも、粟飯炊く程ぞかし」
[語誌]「一炊夢(いっスイノユメ) 日本俗推量炊為睡、癖案也」〔下学集〕、「一炊夢(いっスイノユメ) 世俗炊字作睡非也」〔天正本節用集〕などとあるように、しばしば「一睡の夢」と誤用されることがあったらしい。近世には、「皆是一睡(イッスイ)の夢(ユメ)の楽なることを示し」〔談義本・根無草‐後〕のような誤認表記が多く見られる。

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ことわざを知る辞典の解説

人生の栄華のはかないことのたとえ。

[使用例] 英国の民主運動のチャチスト運動が一炊とのみ消えて[賀川豊彦*自由組合論|1921]

[解説] 中国唐のせいが、身を立てるために楚国へ向かう途中、趙の都かんたんで道士呂翁から枕を借りて眠り、夢に栄枯盛衰を体験するが、目覚めてみるとたきかけのあわめしがまだたき上がってもいないほどわずかの時間にすぎなかったという、しんせいの「枕中記」の故事によることば。

[類句] こうりょうの夢/盧生の夢邯鄲夢の

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故事成語を知る辞典の解説

飯が炊きあがるほどの短い間に見る夢。転じて、人生の栄華がはかないことのたとえ。

[使用例] とかく合いかねるは人の身のつばめ、今まで見ていたせいの夢も一炊の間に覚め果てて[二葉亭四迷*浮雲|1887~89]

[使用例] 車夫を業とし、東京まで二日半にて走りつき、得たる賃銭を紅楼にいってきして豪遊せしも、すでに一炊の夢に帰しぬ[大町桂月*常磐の山水|1907]

[由来] 八世紀、唐王朝の時代の伝奇小説、しんさいの「枕中記」から生まれたことば。かんたんという町へ向かう道筋にある茶店に立ち寄った、せいというしがない若者。茶店の主人がこうりょうあわ)の飯を炊いているそばで、「出世したいなあ」と話していると、居合わせた道士が、「ならばこれで寝てみなさい」と、枕を貸してくれました。それから数か月後、盧生はめでたく名家の娘と結婚し、役人として大出世。左遷の憂き目を経験しながらも、最終的には宰相にまで上り詰めます。そして、あらゆる栄華を体験してついに命が尽きたと思ったその瞬間、大あくびをして目が覚めました。すべては夢。見ると、先ほどの黄粱は、まだ炊き上がってもいなかったのでした。盧生は人生のはかなさをさとって、その場を立ち去ったということです。

[解説] ❶いわゆる「夢落ち」の元祖のような作品。豪華な夢から覚めてみると現実は何も変わらず、ご飯が炊きあがってさえいないというラストは、庶民的な生活感にあふれていて、とても印象的です。❷現在では、人生でいい時期はけっして長続きせず、すぐに過ぎ去ってしまう、という意味合いで用いられます。

〔異形〕黄粱の夢盧生の夢/黄粱一炊の夢/邯鄲一炊の夢/邯鄲の枕邯鄲の夢枕。

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