労働組合の組織形態の一種で,組合加入資格に制限がなく,したがって多くの産業分野,職業,企業にまたがった組織をいう。産業別組合,職業別組合あるいは企業別組合など,特定の労働者を対象とする組合の組織化が及んでいない分野に組織を伸ばしており,大量生産方式のなかで増大した低熟練の労働者や,流通部門の拡大にともなって増加した運輸,商業などの産業で多くの組合員を集めているが,高熟練でも独自の組合を組織できない少数グループの労働者も組織対象にしている。一般組合(英語でゼネラル・ユニオンgeneral union)の原型が生まれたのは,1889年にロンドンで港湾労働者のストライキが起こり,世界各国の労働者の支援を受けて,それまで未組織状態にあった労働者が勝利を収めた時点である。その後イギリスでは,1911年の国民保険法によって健康保険や失業保険が成立し,低所得労働者の生活が安定したことや,第1次大戦中に半・不熟練労働者が急増したことなど,組織化の条件が改善されたため,飛躍的に拡大した。現在,運輸一般労組Transport and General Workers' Union(1922成立)が約200万人,都市一般労組General and Municipal Workers' Union(1924成立)が約100万人の組合員を擁し,国内で,それぞれ第1位,第3位の大組合になっている。アメリカでも,トラック,タクシーの運転手を中心に,運輸・商業部門そのほか関連分野を組織しているチームスターズInternational Brotherhood of Teamsters,Chauffeurs,Warehousemen and Helpers of America(1899成立。1957年AFL-CIOから排除され現在は独立組合)が約200万人の組織を誇っている。日本では,企業別組合が普及しているため,一般組合という組織形態はあまり発達していないが,総評系の全国一般労働組合(1955成立)が約12万人,同盟系の全国一般労働組合同盟(1966成立)が約11万人を組織しており,独自の企業別組合をつくれない零細企業や事業所内の少数の労働者を個人加盟させている。産業別組合の形をとっている場合でも,組織拡大のために関連分野に組織を広げ,しだいに一般組合的な組織となっているものがあり,ゼンセン同盟や建設一般全日自労がこれに当たる。この傾向は欧米でもみられる。
→労働組合
執筆者:栗田 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
各種の産業や職業の境界を超えて、とくに不熟練労働者を中心にこれを単一の労働組合として広範に組織したもの。とくにイギリスでは、職業別労働組合(クラフト・ユニオン)の伝統が強く支配していたが、その場合の組織対象は、同一職業(職種)の熟練労働者に限られていた。その組織対象外の労働者、とりわけ鉄道以外の運輸、港湾、ガス、商業などの領域では、不熟練労働者が圧倒的に多く、しかも労働異動も多く、また産業間の組織的境界も分かちがたかった。それゆえにこの組織形態が有効性をもった。こうした一般組合は、今日でも巨大組織として存在し、労働運動で重要な役割を担っている。イギリスには運輸一般労働組合、一般・都市労働組合、商店・配給関連組合の三つの大きな一般組合があり、イギリス労働組合会議(TUC)の約30%の人員を占めている。アメリカには資本主義国で最大のティームスターズTeamsters(トラック運転手の労働組合、約200万人)という一般組合がある。
企業別組織を主とする日本では、大規模なものはなく、おもに中小企業労働者を組織する一般組合が存在する。
[早川征一郎]
…つまり労働組合は,一定の範囲の労働市場の労働者を組織して,使用者が労働組合と取引することなしには必要な労働者を獲得できない状態をつくり出し,そのうえで労働条件の交渉を行うのである。その労働市場の範囲のあり方にしたがって労働組合の形態は,職業別組合(クラフト・ユニオン),産業別組合,一般組合,あるいは日本に多い企業別組合というような,さまざまな組織形態に分かれる。この労働市場のあり方は時代により国によって異なるため,労働組合の組織形態もこれらの条件にしたがって変化している。…
※「一般組合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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