客などが座敷へあがるためにぬいだ履物を下足という。江戸時代から芝居小屋,料亭,寄席,遊郭,集会所,催物場などが,下足番を置いて客の履物をあずかって下足札をわたした。旅館も客の履物をあずかるが,昔の旅客はわらじ履きだったので下足札はわたさなかった。それゆえ旅館では下足とはいわない。明治末からは東京にデパートが開店したが,初期には店内に緋もうせんやじゅうたんなどを敷きつめて,客の履物をあずかってスリッパあるいは上草履に履き替えさせて下足札をわたしたこともある。1923年の関東大震災以後は履物を履いたままはいれるほうが便利なので,下足番を置くところは少なくなった。下足札は10cm×5cmぐらいの長方形の板で番号などが書いてあった。すし屋でイカの足をゲソというのは下足からきた符丁である。花柳界では下足とはいわないで,〈おみあし〉といった。
執筆者:加太 こうじ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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