商取引の支払手段として一般に使用されている手形(小切手を含む。以下同)は現金に代わる一種の有価証券であるが,取立てのため呈示された手形が支払場所に指定された支払銀行から預金不足などを理由に支払を拒絶されたものを,不渡り手形あるいは単に不渡りという。手形決済の仕組みは,最終手形所持人が取引銀行にその取立てを委任し,取引銀行は手形交換所を通してこれを呈示して支払を受け,取立人の預金口座に入金することで完了するが,支払人の当座預金残高が不足していると手形の引落しはできず,不渡りの付箋が貼付されて手形交換所および取引銀行を経由して取立依頼人(最終手形所持人)に返却される。不渡りに対する制裁は1971年10月,東京手形交換所規則の改正に伴い,全国的に現行の制度に改められた。これによると,不渡りは手形交換所の全加盟金融機関に報告され,6ヵ月以内に2回目の不渡りを出した企業は取引停止処分の制裁を受け,2年間はその地区の手形交換所に加盟している金融機関に当座預金口座を開設できなくなる。不渡りを出し取引停止処分を受けた企業は,信用を著しく失墜するだけでなく,手形による商取引が継続できなくなるため,これが事実上の倒産につながり,経済社会の円滑な信用取引を妨げる要因になっている。
不渡り発生の増減は経済動向を反映しており,景気の下向期に増加し,上昇期には減少する傾向がある。とくに金融引締め期は企業の手形に依存するウェイトが高まる一方,銀行融資を受けにくくなるので,いきおい不渡りは増勢に向かう。季節的にも年度末,年末に不渡りが増えるのは手形交換高の増加と関係があることを示している。全国銀行協会連合会(全銀協)は,法務大臣が認可した全国181ヵ所(1996年末現在)の手形交換所の手形交換高,不渡り手形実数,取引停止処分数の統計を各月作成し,景気判断の指標として公表している。
執筆者:福田 不多也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…企業が経営に行き詰まり,正常な営業活動の継続ができなくなった〈企業の破局〉状態をいう。具体的には,(1)決済資金の裏づけがないため不渡り(その手形,小切手を不渡手形という)を出した法人または個人企業が6ヵ月以内に2回目の不渡手形を出して銀行取引停止処分を受けることにより表面化することが多い。そのほか,(2)会社更生法の適用を申請したり破産申請をしたとき,(3)商法381条による会社整理,和議法による整理状態になったとき,(4)債権者会議を開催し内整理(これは法律によるものではない)を行ったとき,を倒産というが,倒産という言葉は法律用語でも学問用語でもない。…
※「不渡り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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